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食品とは…
Flying Zebra @f_zebra
今月のアトモス(原子力学会誌)に掲載されている、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子氏による「食品と放射線のリスクを考える」はとてもためになる。残念ながら公開されていないようなので、長くなるが内容を紹介したい。
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食品とは、これまでの経験から食べても直ちに有害な影響が出ないことが分かっているだけの「未知の化学物質のかたまり」である。食品添加物や残留農薬とは違い、食品そのものは安全性が確認された上で食べているわけではない。
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普段から食用として食べているものの中には大量に摂取すれば有毒な物質が一定量含まれている。普通は大して問題にならないが、天然物は安全という間違った認識により適切なリスク管理を怠ったための食中毒事件は決して少なくはない。
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有害物質の中で「量が少ないから大丈夫」とは言い切れないものに、「遺伝毒性発がん物質」がある。代表的なものの一つが放射性物質だが、他にもカビ毒のアフラトキシンや植物アルカロイドの一種のアリストロキア酸などが知られている。
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これ以下なら安全、という閾値を決めることができないため、ALARA原則で管理すべきとされてきた。ところが遺伝毒性発がん物質は次々と発見され、ALARA原則だけでは現実的な対応の指針とならなくなった。決定的だったのは、2002年に明らかとなったアクリルアミドの問題だ。
  • ALARAの原則
     国際的に汚染物質の基準値作成の基本となっている、食品中の汚染物質を“無理なく到達可能な範囲でできるだけ低くすべき(ALARA: As Low As Reasonably Achievable)”であるという考え方です。コーデックス委員会で食品中の基準値等のリスク管理措置を検討する際には、この考え方に基づき消費者の健康が確保されていることを条件に、生産や取引の不必要な中断を避けるために食品中の汚染物質の通常の濃度範囲よりもやや高いレベルを考慮します。もちろん、適切な生産技術や手段により可能な範囲で汚染しないように生産、製造することが前提となっています。
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アクリルアミドは工業用でよく知られた化合物だが、デンプンとアミノ酸を含む食品を加熱すると生じることが明らかとなり、日常的に相当量を食品から摂っていることが分かったのだ。食生活のかなりの部分に含まれ、「できる限り摂らない」という対応は不可能だし、健全な食生活にとって不適切だ。
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食品の安全性確保のために、世界的に食品安全リスク分析というツールが用いられるようになってきた。科学者(日本では食品安全委員会)が「リスク評価」を行い、厚労省や農水省などの行政はその評価結果を受けて基準値を決めたりモニタリングをしたりの「リスク管理」を行う。
Flying Zebra @f_zebra
そして最も重要な鍵となるのが、全体を貫く「リスクコミュニケーション」だ。単なる一方的な「説明」ではなく、消費者を含む関係者が意見を交わして最適解を見付けようとすることがリスクコミュニケーションである。
Flying Zebra @f_zebra
遺伝毒性発がん物質については、放射性物質と同様にLNTモデルに基づく係数からヒトの生涯発がんリスクを計算することが行われてきた。化学物質の環境基準などでは、生涯発がんリスク10^-4から10^-6の間を実質安全量(VSD)として管理目標に使っている。
  • NOAEL:No Observed Adverse Effect Level 最大無毒性量
     複数の用量群を用いた反復投与毒性試験,生殖・発生毒性試験などの動物実験において,毒性学的なすべての有害な影響が認められなかった最高の暴露量のこと
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専門家のリスク評価としてはそれで問題ないのだが、一般の人を相手に生涯発がんリスク10^-5などと説明すると、「10万人に1人はがんになってもいい」と解釈されてしまう。これは正しい解釈ではないし、少なくともリスクを避ける上では間違った結論を導いてしまいかねない。
ツイートまとめ かけ算するな→いや私はかけ算する 低線量におけるがんのリスク係数を人口に単純にかけ算してはいけないという議論はすでに他のまとめなどにもありますが、「どうしてもかけ算したい!」という方とコミュニケーションを取ってみました 注.ここで言うかけ算とはいわゆるカップリング創作のことではありません 8903 pv 169 11 users 1
暴露マージン(MoE:Margin of Exposure)とは…
Flying Zebra @f_zebra
そこでリスクコミュニケーションにとってより良い方法として採用されるようになったのが曝露マージン(MOE:Margin of Exposure)である。これは、動物実験での無影響量(NOAEL)などの指標となる用量を、実際に人々が曝露されている量で割ったものだ。
  • MOE:Margin of Safety 暴露マージン
     用量-反応評価の結果から導き出した無毒性量などの閾値やそれに相当する用量(NOAELやBMDLが用いられます。)と摂取量の大きさの違いを数的に示す指標で、両者の比として求められます。食品を通して非意図的に摂取する遺伝毒性発がん物質の場合には、リスク管理の優先付けを行う手段として用いられています。例えば、アクリルアミドの平均摂取量(0.001 mg/kg体重/日)と発がんに対するBMDL(0.3 mg/kg体重/日)の暴露幅は、MOE=BMDL(0.3)÷摂取量(0.001)=300 と算出されます。
Flying Zebra @f_zebra
MOEの数値は安全率に相当し、有害影響が出ないであろうギリギリの用量に対して、実際の曝露量がどれだけ余裕があるかの指標となる。数値が大きいほど安全側に余裕があり、MOEが1を下回ると有害影響が出る可能性を否定できないということになる。
Flying Zebra @f_zebra
MOEは単独では何人中何人ががんになるといった計算はできず、他の物質のMOEと比較して初めてどちらが大きいか判断できる。つまりリスク管理の優先順位を示すための指標であり、多くの物質についてどれが優先的に対処すべきかを判断する一助となるものだ。
Flying Zebra @f_zebra
曝露量が個人ごとに違う場合にも、個人の曝露量をもとにその人のリスク管理の優先順位付けが行える。消費者一人一人が自分にとって最も優先順位の高いリスクを考えるきっかけにもなるだろう。そして、遺伝毒性発がん物質といってもそのリスクの大きさには大きな差があることも理解できる。
Flying Zebra @f_zebra
リスクへの対処は、トレードオフも含めて常に限られた資源をどう配分するのが最良なのか、全体を考える必要があるのだ。  以上、原子力学会誌10月号に掲載された畝山智香子氏による解説、「食品と放射線のリスクを考える」の紹介でした。
関連・まとめ
  • いつもお世話になっている、@icchou20 さんが更に詳しく解説しております。
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コメント

Masayoshi Nakamura @masayang 2013年10月3日
紹介されていたPDFを読んだら、もう恐ろしくて焼き鳥も食べられなくなりました(50歳・リスクコミュニケーション障害
Flying Zebra @f_zebra 2013年10月3日
残留農薬とか放射性物質などの僅かなリスクと定量的に比較すると、無機ヒ素などの天然にあって避けようのない化学毒性のリスクの大きさにはびっくりしますが、実は「食の安全」を考えるとき、化学毒性すらも主要な問題ではありません。先進国であっても、最も大きいのはウイルスを含む微生物関係です。
minkanjinmno @minkanjinmno 2013年10月6日
生涯10^-5オーダーのリスクを気にする前に、年間(生涯ではなく)10万人あたりの死者数が20人を超える自殺のほうに力を注ぐ方が合理的だと思いますがねえ。
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