銀ねずの和歌タイム

平成25年10月11日に始まりました。
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銀ねず @ginn_nezz

【1】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首、秋。新勅撰入集。初句「衣うつ」は、いわゆる「擣衣(とうい)」で、衣服を叩いて皺を伸ばすこと。季節関係なく行うでしょうに、とりわけ秋の歌によくでてきます。

2017-01-21 08:32:36
銀ねず @ginn_nezz

【2】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka なぜ秋なのかというと、平安貴族の間で大流行した『白氏文集』の詩句に、こんなのがあるからです→「誰家思婦擣帛/月苦風凄砧杵悲/八月九月正長夜」。衣を打つのは女性で、秋の夜。

2017-01-21 08:33:29
銀ねず @ginn_nezz

【3】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka つまり「擣衣」とは、男性の訪れを待つ女性が奏でる悲しい響きであって、そうでなければ和歌の題材にはならないのです。百人一首「ふるさとさむく衣打つなり」も待つ女を思わせるのですね。

2017-01-21 08:34:03
銀ねず @ginn_nezz

【4】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka そして俊成卿の歌では「擣衣」の響きが月を追いかけるように夜空にのぼってゆきます。衣を打つのが女性なら当然月は男性ということでしょうが、この月にも仕掛けがあります。

2017-01-21 08:34:42
銀ねず @ginn_nezz

【5】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka というのは、万葉集では月夜に女性が男性の訪れを待ったり、逆に男性が月夜に女性を想ったりする歌が多く、月と恋人の組み合わせは古典和歌では常識といってよいです。

2017-01-21 08:35:14
銀ねず @ginn_nezz

【6】衣うつひびきは月のなになれやさえゆくままに澄みのぼるらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 月が出たからには恋人がやって来てくれるはず。その想いを「擣衣」に込めて、早く来てと伝えているのです。この歌はそんな女性に意地悪な男性が贈る体(てい)で詠んだ歌じゃないかな。(了)

2017-01-21 08:36:19
銀ねず @ginn_nezz

【1】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首・秋。千載集入集。俊成卿自讚歌。まずは「むかし男ありけり」で有名な『伊勢物語』123段を。「深草にすみける女を、やうやう飽きがたにや思ひけむ、かかる歌をよみけり。」

2015-10-04 19:48:14
銀ねず @ginn_nezz

【2】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka 「【年をへて住みこし里をいでていなばいとど深草野とやなりなむ】女、かへし、【野とならば鶉となりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむ】とよめりけるにめでて、」

2015-10-04 19:48:31
銀ねず @ginn_nezz

【3】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka 「行かむと思ふ心なくなりにけり」。深草も鶉(うずら)も出て来て、この歌のきっかけはすべてこの段にあります。俊成卿の鶉はこの女が化身して鳴いていて、さながら俊成卿は業平です。

2015-10-04 19:48:43
銀ねず @ginn_nezz

【4】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka 鳥は鳴(泣)いたり飛んだり(魂や心が飛んでゆく)するので人間の化身とされてます。また「うずら」は「憂(う)」が隠れてるので特に涙を誘います。ちゃんとついてきてね。

2015-10-04 19:48:56
銀ねず @ginn_nezz

【5】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka 元の伊勢物語には「飽きがたにや」とありましたが、俊成卿の深草には「秋(飽き)風」が吹いていますよ。鶉と秋と、憂と飽きと。ばっちり決まってて舌を巻くほかありませぬ。

2015-10-04 19:49:07
銀ねず @ginn_nezz

【6】夕されば野べの秋風身にしみて鶉なくなり深草の里/藤原俊成 #waka #jtanka わたしはもちろん大好きな歌ですが、こういう元ネタのある歌は嫌いな人もいるかもしれませんね。ただ作者がたどった道を知れるという意味では貴重だと思います。(了)

2015-10-04 19:49:27
銀ねず @ginn_nezz

【1】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首・秋。新古今集入集。「みしぶ」は水垢、「引板(ひた)はへて」は鳴子、稲を狙う鳥を驚かす仕掛を施すこと。上の句に田植えと稲刈りが詠まれてます。

2015-10-01 16:28:54
銀ねず @ginn_nezz

【2】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka でも俊成卿はれっきとした貴族ですから、なんで農夫になったかのような歌を詠むんでしょう? これは当時の万葉ブームを反映したものだと思うんです。

2015-10-01 16:29:10
銀ねず @ginn_nezz

【3】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka衣手に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延へまもれる苦し/万葉・作者未詳】、袖が水垢だらけになって田植えしたのに、今また鳴子を仕掛けるのが辛いと。

2015-10-01 16:29:21
銀ねず @ginn_nezz

【4】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka たしかに重労働だし、そりゃ辛いでしょうが、あの俊成卿がその辛さを取り上げて「又袖ぬらす秋」と詠み、あの新古今に採られるのはおかしい。ということは、何かが隠れてるはず。

2015-10-01 16:29:32
銀ねず @ginn_nezz

【5】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka 私はその隠された何かを、恋だと断言しておきます。万葉歌にも現代人が分からないだけで俊成卿が本歌取りするに充分な、恋が詠まれているんだと思うんです。

2015-10-01 16:29:55
銀ねず @ginn_nezz

【6】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka 貴族が袖を濡らすとき。牡鹿の鳴き声(牝鹿に会えない悲しさ)を聞いても袖濡らす人たちが、農夫の重労働で泣くもんですか。たぶん、田んぼじたいが女性そのものなんじゃないか。

2015-10-01 16:30:05
銀ねず @ginn_nezz

【7】みしぶつきうゑし山田に引板はへて又袖ぬらす秋は来にけり/藤原俊成 #waka #jtanka 苦労してやっと手に入れた女性がどんどん美しく色づき、よその鳥(男)についばまれないように守る、その嫉妬、辛さ。たぶんそういうことなんじゃないかな。(了)

2015-10-01 16:30:15
銀ねず @ginn_nezz

【1】八重葎さしこもりにし蓬生にいかでか秋の分けてきつらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首、秋。千載和歌集入集。これも源氏『蓬生(よもぎふ)』に立秋を突っ込んだ野心作。源氏の中でもとりわけ不美人として描かれる末摘花は、源氏の来訪を待ち続けました。

2015-06-09 08:07:17
銀ねず @ginn_nezz

【2】八重葎さしこもりにし蓬生にいかでか秋の分けてきつらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 源氏『蓬生』の書き出しは「藻塩垂れつつわびたまひし頃ほひ、都にも、さまざまに思し嘆く人多かりしを」。前回見た『須磨の浦人』を待つ女性がこの歌にはいます。

2015-06-09 08:07:48
銀ねず @ginn_nezz

【3】八重葎さしこもりにし蓬生にいかでか秋の分けてきつらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 「八重葎(やへむぐら)」は幾重にも繁る草、「さしこもりにし蓬生」は閉ざされた蓬の園。荒れ果てた侘び住まい(の庭)。そんなところへ「いかでか(どうやって)」秋が来たのか。

2015-06-09 08:08:05
銀ねず @ginn_nezz

【4】八重葎さしこもりにし蓬生にいかでか秋の分けてきつらむ/藤原俊成 #waka #jtanka 源氏以外の来訪者を拒んで閉ざしていたのに、秋はやって来てしまったという。源氏にも末摘花にもなれてしまう俊成卿は名優というほかなし。たまらん。(了)

2015-06-09 08:08:20
銀ねず @ginn_nezz

【1】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首、夏。千載和歌集入集。俊成卿の名歌のひとつ。何より源氏の『須磨』を思い起こさせるし、新古今に入っててもおかしくないくらいの華麗さ。

2015-06-04 09:05:02
銀ねず @ginn_nezz

【2】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka 古今集に【わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答へよ/在原行平】があって、そこに梅雨という季節を突っ込み、さらには「煙が湿る」とまで言う想像力。

2015-06-04 09:05:15
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