【3】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka お香は「たきしめる」ものですが、藻を『焚き』煙が『湿る』と離しておく。今は須磨に流寓していても、都でのお香を焚くような生活を思い出したりするんでしょうよ。
2015-06-04 09:05:32【4】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka 「五月雨(さみだれ)」には『みだれ』が隠れているし、製塩のために藻を焚くにも『おもひ』の「火」が燃えて乱れて「しほたれまさる」。塩水(涙)で袖が具しょぐしょ。
2015-06-04 09:05:55【5】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka さらに結句「浦人(うらびと)」。「うら」は『心(うら)』でもあり、『恨み(うらみ)』にも通ずるしで、この歌の主人公はいろんな思いをないまぜにして泣いているんです。
2015-06-04 09:06:10【6】五月雨はたく藻の煙うちしめりしほたれまさる須磨の浦人/藤原俊成 #waka #jtanka ところで冒頭に「新古今に入っててもおかしくない」と書きましたが、そう思うのは、新古今自体がこの歌の延長で成立してるってことじゃないかしら。(了)
2015-06-04 09:07:38【1】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 久安百首『夏』。郭公(ほととぎす)は、夏の重要な題材。春は桜がいつ咲くのか待ちますが、夏は郭公がいつ鳴くか待ちます。→【郭公鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる/徳大寺実定】
2015-05-08 17:34:13【2】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 有明の月を見るまで夜通し待つくらいなので、その鳴き声は貴重品。何度も聞くなんて贅沢もいいところ。その贅沢を我が身から離れた心にさせてみるという、何ともファンタジーな歌。
2015-05-08 17:34:28【3】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 郭公は鳴いたあとどこかへ飛んでゆく。その飛んでゆく方向へ心を「添へて遣る」。郭公とともに飛んで行った我が心は、行く先々でいくたびその鳴き声を聴くことだろう、っていう。
2015-05-08 17:34:41【4】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 王朝人にとって鳥は鳴いたり(泣いたり)急に訪れたりするので人が化身したものだったりします。恋人であったり、伝説の人物だったり、とにかく鳥の歌は人心(もちろん恋も)がそこにあります。
2015-05-08 17:34:52【5】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 特に郭公はその鳴き声を待つものなので、誰が詠もうと「待つ女」の立場がそこに見え隠れします。俊成卿はそこにもうひと工夫して追いかけさせてますね。この工夫はどこから思いつくのか。
2015-05-08 17:35:07【6】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka その出どころ、まず和泉式部【物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞみる】。それと以前解説した大弐三位【はるかなるもろこしまでもゆくものは秋の寝覚めの心なりけり】。
2015-05-08 17:35:36【7】郭公鳴きゆくかたにそへてやる心いくたび声を聞くらむ/藤原俊成 #waka 心を飛ばすためには思いが強くないといけないので、そこには恋があるはずです。俊成卿はこういうとき名女形になりますよ。…五条三位ッ!(了)
2015-05-08 17:35:48【1】ながめする緑の空もかきくもりつれづれまさる春雨ぞふる/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首、春。表面的には春の長雨に降られて物思いに耽ってる歌。注意すべきは二句「緑の空も」の『も』。何度も書きますが歌に「も」があったら要注意。
2015-03-01 18:37:47【2】ながめする緑の空もかきくもりつれづれまさる春雨ぞふる/藤原俊成 #waka #jtanka 初句「ながめ」に眺望の「ながめ」、物思いに耽る「ながめ」、さらに長雨の「ながめ」が掛けられていますが、「空『も』」ということは「空も(我も)ながめする」です。
2015-03-01 18:37:58【3】ながめする緑の空もかきくもりつれづれまさる春雨ぞふる/藤原俊成 #waka #jtanka さらに三句「かきくもり」の「かき」には「書き」も掛けられてます。何を書くのか? …恋人に贈る歌です。雨の物憂さに加えて恋人への想いも「つれづれまさる」んです。
2015-03-01 18:38:09【4】ながめする緑の空もかきくもりつれづれまさる春雨ぞふる/藤原俊成 #waka #jtanka その結果の春雨が涙の暗示というのは容易に想像できると思います。表面上は春歌でも、この歌は立派な恋歌だと思います。そしてこの歌のベースになっているのは…
2015-03-01 18:38:19【5】ながめする緑の空もかきくもりつれづれまさる春雨ぞふる/藤原俊成 #waka #jtanka 【つれづれとふれば涙の雨なるを春のものとや人は見るらん/和泉式部】。まぁーおっそろしく手の込んだ歌ですな。いいもん見せてもらった! (了)
2015-03-01 18:38:29【1】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首『春』。久安百首は、堀河百首の百題と違って春なら二十首自由に詠んでよいことになっていたようで、各歌人の構成力と嗜好が前面に出ています。
2015-02-26 15:31:16【2】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka この歌は三首めで梅。ちなみに二首めは若菜。春日山→御垣が原(吉野)の若菜摘みとおめでたい趣向が続いての梅。この梅は「幽玄」の雰囲気がよく出てると思う。
2015-02-26 15:31:27【3】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka では「幽玄」とは。風巻景次郎が語るところでは、そもそも詩とは本人にしか分からないことを表現するもので、詩の言葉に現れない部分を読者に伝えるものであると。
2015-02-26 15:31:39【4】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka 俊成卿のこの歌は、咲き始めた梅を見て我が身を春の色に染めてゆく始めである、という。昔の人が全員そう思っていたというより俊成卿だけがそう感じたのだと思う。
2015-02-26 15:31:52【5】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka 読者が新鋭歌人なら「うわ、そう来やがったか」と思うだろうし、学者に近い歌人なら「万葉集にそんな読み方はない!」と憤っただろうし、この歌は新しかった。
2015-02-26 15:32:04【6】梅が枝にまづさく花ぞ春の色を身にしめそむる始めなりける/藤原俊成 #waka #jtanka 共同体の詩の共有から、個人の詩の表現へ。俊成卿の久安百首は、その一歩でもあるのです。(了)
2015-02-26 15:32:14【1】春きぬと空にしるきは春日山峰の朝日の気色なりけり/藤原俊成 #waka #jtanka 久安百首、春。記念すべき久安百首巻頭の歌。久安百首は崇徳院が有力歌人たちに下命したもので、俊成卿はこれに加えられることで重大な一歩となりました。時に俊成卿37さい。
2015-02-22 20:28:10【2】春きぬと空にしるきは春日山峰の朝日の気色なりけり/藤原俊成 #waka #jtanka 以前、歌に「春日(かすが)」が出てきたら春日大社だと思ってくださいと書きましたが、この百首を春日山の立春から始めた俊成卿の喜びがすごい。春日大社は藤原氏の氏神ですし。
2015-02-22 20:28:21【3】春きぬと空にしるきは春日山峰の朝日の気色なりけり/藤原俊成 #waka #jtanka この歌はいわゆる「ものは歌」(~ものは~なりけり)の変形ですが、工夫があるように思います。「空に【しるき(著しい)】」とある以上、主体は春日山に居るような気がする。
2015-02-22 20:28:34