猫神博士の人間豹シリーズ（ツイッター小説）

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物は黒いベールで顔を隠していた。「見ないで!」と彼女は言った。「見ると大変なことになる」そう言われると余計見たくなり、人間豹はベールを上げた。それから後の記憶がない。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物は水色のレインコートを着た女だった。うつむいた彼女の顔を上げると、瞳から大粒のか涙が溢れ、頬を伝って舗道を濡らした。それを合図にしたようにポツリポツリと降りはじめた雨は、やがて街を包み込むように蕭蕭と降り続ける。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物は喪服の美女だった。「いいの？」と彼女は薄笑いを浮かべて言った。「あたしと関わった男はみんなあの世へ行ってしまったわ」一瞬躊躇した隙に、女は闇に溶けるように姿を消した。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物はメガネの似合う美人だった。メガネ美人はメガネが顔の一部である。その事は充分解っていながらも、誘惑にあらがいきれず、人間豹が彼女のメガネを外した。するとそこに、顔そのものが無かった。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物は欲望をもてあました熟女だった。「もっと、もっとよ」とせがんで来る女を徹底的に責めまくり、底なしの快楽に沈めた頃には、すでに精根尽き果て、空も白みはじめていた。だけど彼の餓えは充たされない。「もっとロマンを!」 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物は欲望をもてあました熟女だった。「もっと、もっとよ」とせがんで来る女に辟易した人間豹は、捨て台詞を残してその場を去って行った。「俺が欲しいのはロマンなんだよ」 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物はウエディングドレスを纏い微笑をたたえ、繁華街を通り抜けて公園へとやって来た。道行く人々は粛々と道を開けた。月の光を浴びて佇むその姿はただならぬ美しさだ。人間豹はしばし思案の末、見て見ないふりをすることにした。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物は地味な身なりの図書館司書だった。スーツを脱がせブラウスを引き裂きスカートを毟りとった女の姿を見て動きを止めた。彼女は黒いスリップを着ていた。その美しい姿に「たのむ、このまま眺めていてもいいだろう？」と頭を下げていた。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物は髪の長い女だった。顔を見ようと髪をかき分けたが、どこまでも黒い髪がつづくばかりだ。顔はパスして身体を貪ろうとしたが、ついに本体にたどり着くことはなく、長い髪の束だけが手元に残った。 #twnovel

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人間豹は飢えていた。今宵の獲物はＳＭクラブの女王様だった。「鞭と縄どっちがいい？それとも両方やってやろうか？」答えるより早く縛られてしまった人間豹は、さんざん鞭でしばかれた末、夜明けまで放置ブレイ。でもそんなに悪い気はしなかった。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物は妙に色の白い女だった。抱きしめるとヒヤリと冷たい。「しまった！」気がついた時にはすでに遅かった。「雪女だ！」唇を奪われ、彼女の吐息を吸い込んだ人間豹は、瞬時に凍りついた。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。｢ねえジョニー」声をかけられて振り返ると見知らぬ女が立っていた。｢待っていたのよ」｢俺はジョニーじゃないよ」否定しても合点してくれない。仕方ないので月明かりの下で自慢の牙を見せてやると｢嘘つき！」いきなり頬をひっぱたき、女は去って行った。 #twnovel

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#twnovel 人間豹は飢えていた。今宵の獲物は妙に影の薄い女だった。｢あんた生きてねえな」山勘で言うと｢やっぱりわかっちゃった？」恥ずかしげに頬を染めた女は、白眼をむき、口から血をしたたらせながら消えていった。

八本正幸 @nekogamihakase

#twnovel 人間豹は飢えていた。今宵の獲物は歌姫と称えられたこともある､場末のシャンソン歌手だった。｢一曲歌わしてよ、殺される前にさ」彼女の歌声はララバイのように心に染み、深い安らぎ身を浸した人間豹は、いつしか眠りへと落ちてゆく。

八本正幸 @nekogamihakase

#twnovel 人間豹は飢えていた。黄昏の街角で出会ったのは、血に飢えた女吸血鬼だった。｢吸わせてよ一口でいいから」しかし血を吸った吸血鬼は胸をかきむしって苦しんだ。｢解ったろ俺も人外なのさ」それから二人は夜明けまで呑みあかした。

八本正幸 @nekogamihakase

#twnovel 人間豹は飢えていた。今宵の獲物はメイド服の似合うコスプレ美少女だった。意気投合して飲み歩き歌いまくり踊りまくり語りつくした夜明け前、やっとサパータイムと思った矢先、彼女の口許にうっすらとヒゲが生えるいるのを見つけた。見なきゃ良かったと後悔して、そのまま別れた。

八本正幸 @nekogamihakase

#twnovel 人間豹は飢えていた。真夜中の巷を徘徊していると、月の光に照らされた公園の広場で踊っているバレリーナを見つけた。「お嬢さん僕と踊っていただけませんか？」しかし機械仕掛けのバレリーナは、ただ黙って微笑みながら、一心不乱に踊りつづけている。

八本正幸 @nekogamihakase

#twnovel 人間豹は飢えていた。今宵の獲物は年増の街娼。むこうから声をかけてきた。美しい女だった。だが近くで見るとその顔は白塗りのお化けだった。吐き気がしてその場を立ち去ったが、翌日その女が何者かに殺されたことを知った時、オレが殺してやればよかったな、とかすかに思った。

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物はセーラー服の少女だ。だけど夜の巷に彼の求める少女はいない。疲れはて、あきらめかけた夜明け前、見つけた少女は、色褪せたボスターの中だった。 #twnovel