超高齢者肺炎診療の方向性は?~寺本先生による誤嚥性肺炎講演会&第13回呼吸器感染症フォーラム~

超高齢者肺炎に関連した2つの講演会のレビューです.
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 今回は2つの講演会のレビューになっています.いずれも超高齢者肺炎がテーマですが,見て分かる通り,超高齢者肺炎の予後を決めるのは抗菌薬の種類でも耐性菌でもありません.広域抗菌薬が超高齢者肺炎の予後を改善する根拠はなく,超高齢者肺炎を感染症から離れた視点から見る必要があります.

 寺本先生は口腔ケア,嚥下リハビリテーションなどの重要性について講演.呼吸器感染症フォーラムでは,抗菌薬が超高齢者肺炎の予後を改善するのか?さらには抗菌薬による救命がQOLにどのような影響を与えるのか?というかなり踏み込んだ内容で議論されています.高齢化社会の中で肺炎診療は大きな変換点を迎えつつあります.

私のブログからの補足
『医療介護関連肺炎診療ガイドライン(NHCAPガイドライン)の背景と問題点』
http://drmagician.exblog.jp/17833254/

『抗菌薬以外の誤嚥性肺炎治療』
http://drmagician.exblog.jp/17952287/

『NHCAPにおける抗菌薬』
http://drmagician.exblog.jp/18251971/

『2012年肺炎関連文献集(2)~NHCAP,HAP,VAP~』
http://drmagician.exblog.jp/19548832/

⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】10月17日『高齢者の肺炎予防戦略~プライマリーケア医にできること~』寺本信嗣先生(筑波大学附属病院ひたちなか社会連携教育研究センター教授).スポンサーバイアスはMSD株式会社.

2013-10-19 11:28:16
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】肺炎罹患率は増加していないが,死亡数は増加しており,その原因は高齢者の増加にある.Willium Osler「肺炎は老人の友」寺本先生「脳梗塞は誤嚥性肺炎の母」.市中肺炎の59.5%が,院内肺炎の86.8%が誤嚥性肺炎(JAGS 2008;56:577-9)

2013-10-19 11:33:31
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】嚥下造影検査(VF)はあくまでも嚥下機能評価法であり,誤嚥性肺炎のリスク評価法ではない.また,VFで異常を認めなくても誤嚥は生じる(Age Ageing 2006;35:47-53).VFは座位の検査であり,夜間の不顕性誤嚥リスクは評価不可能である

2013-10-19 11:37:58
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】誤嚥性肺炎は7-21日間かけて不顕性誤嚥からゆっくりと肺炎まで育つ.だから本人も周囲も分からない.でも炎症も低酸素もゆっくりと進行し,痰や咳はそれほど多くないが,元気がなくなり食欲も低下していく.いつ発症したのかが明確に分かるケースは少ない

2013-10-19 11:47:48
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】ではどうやって誤嚥性肺炎に気づくか?「元気がない」「食欲がない」「うわごと」「失禁」などは重要なキーワードとなる.誤嚥性肺炎は重症ではないが難治性.不顕性誤嚥を証明した研究→AJRCCM 1994;150:251

2013-10-19 11:51:09
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】NHCAPにおいても最も多い菌は肺炎球菌である.誤嚥性肺炎では抗菌薬はSBT/ABPCで80%は治癒する.治癒しなかった20%は抗菌薬の問題ではなく背景疾患の問題.NHCAP診療ガイドラインではA~D群まで推奨抗菌薬があるが,実際はA群・B群の抗菌薬でほとんど治る

2013-10-19 11:55:42
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】誤嚥性肺炎は(純粋な意味での)感染症とは言い難い.誤嚥性肺炎は肺炎と誤嚥・嚥下機能障害の合併であり,抗菌薬+αが必要である.その+αが,食事摂取方法,嚥下リハビリ,口腔ケア,ACE阻害薬などの嚥下機能改善薬である.

2013-10-19 11:59:13
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】嚥下リハは誤嚥の菌量を減らすが菌の質は改善しない.口腔ケアは誤嚥の菌の質を改善するが,誤嚥の菌量は減らせない.よって嚥下リハと口腔ケアは相補的な関係にあり,両方とも必須である

2013-10-19 12:02:28
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】胃ろうを造設しても肺炎は予防できないことが数多くの報告ででてきており,コクランレビューメタ解析においても胃ろうの肺炎予防効果は否定されている→CDSR 2010;11:CD008096.胃ろう患者にガスモチンを使用すると肺炎は減少→JAGS 2007;55:142

2013-10-19 12:06:35
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】病原体が気道上皮細胞に侵入することは容易ではない.ただし,気道上皮細胞表面の水分がなくなると病原体が侵入できる(J Clin Invest 1999;103:441-5/2002;109:571-7).よって脱水も肺炎リスクであり,脱水状態はすみやかに改善すべき.

2013-10-19 12:11:53
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

肺炎球菌ワクチンを65歳以上にうつのはいいが,施設で寝たきりの老人にはたしてどこまで必要かというとなんとも言い難い.寺本先生が解説した通り,医療介護関連肺炎のデータでは確かに肺炎球菌は最も多い.しかし,あくまでも検出同定できた菌の中で最多ということに過ぎない.

2013-10-19 12:16:49
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

承前)寝たきり高齢者に限定すれば肺炎球菌検出率は非常に少ない(自験例).となると寝たきり高齢者に肺炎球菌ワクチンを打つ理由は,肺炎球菌が多いからではなく,肺炎球菌がとりわけ重症化しやすい危険な菌だからということになるんじゃないかと.

2013-10-19 12:19:17
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

承前)あと,講演では心不全の話がなかった.医療介護関連肺炎における誤嚥性肺炎は肺炎+心不全+嚥下機能低下+低栄養の四病態が合併した症候群だと個人的に思ってる.卵が先かニワトリが先かのごとく,誤嚥性肺炎と心不全はいずれからも誘導されるcross talkの関係にある

2013-10-19 12:24:07
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

承前)疫学で見ても,本邦の死因別死亡数推移のグラフを見ると,肺炎と心不全は対称性がある.肺炎死が増加すると心不全死が減少し,心不全死が増加すると肺炎死が減少する.両方を合併した状態で死因がどちらになるかは主治医の死亡診断書の書き方しだい.誤嚥性肺炎と心不全はセット

2013-10-19 12:28:36
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

承前)誤嚥性肺炎と心不全を合併した患者を呼吸器内科と循環器内科のどちらが見るのかでもめる話は日本全国でよく見られるが,呼吸器内科医は心不全治療も知っておくべきだし,循環器内科医も抗菌薬や嚥下リハ・口腔ケアを知っておくべき.この超高齢化社会で片方だけってのはナンセンスな話

2013-10-19 12:31:50
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】第13回呼吸器感染症フォーラム.東京,品川プリンスホテルプリンスホール,2013 Oct.19.『耐性菌肺炎を再考する』.Pfizer株式会社後援.当番世話人・総合座長:朝野和典先生(大阪大学医学部附属病院感染制御部教授)

2013-10-20 11:42:35
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【講演会Rev】今回のフォーラムは朝野先生がデザインした,これまでになかった内容で,メーカー色はゼロ.耐性菌を培養で検出したがその菌は起炎菌か?耐性菌検出肺炎は抗菌薬で予後が改善するか?de-escalation療法をスタンダードとするのは本当にいいのか?高齢者肺炎の救命とは?

2013-10-20 11:46:39
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】セッションⅠ:「肺炎の原因菌決定法の進歩」舘田一博先生(東邦大学医学部微生物・感染症講座教授).肺炎の原因菌決定法の進歩に関して,現在進行形の新しい診断法から,まだ実際に臨床応用できるかは未知数であるが,新しい発想の近未来の感染症診断法について解説.

2013-10-20 11:50:30
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】理想の細菌検査とは?(抗菌薬が投与されるまでに)30分以内で診断できる,菌株・感受性・相同性が分かる,重症度・局所菌量と相関する,原因菌と汚染菌の区別ができる,コストパフォーマンスがよい,などである.

2013-10-20 11:54:02
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】最近,病原体抗原を迅速に検出できる免疫クロマトグラフィー法が臨床応用されており,肺炎球菌,レジオネラ,インフルエンザ迅速キットがある.2013年に入ってマイコプラズマでも応用され,P1抗原を標的としたプライムチェック(感度91.7%,特異度92.7%)が発売された

2013-10-20 11:59:06
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】さらにすべての細菌が有するリボゾームL7/L12蛋白を標的とする新しい免疫クロマトグラフィー法の開発が進んでいる.現在マイコプラズマにおいてリボテストが2013年に発売,感度57.1-75.0%,特異度92.2-100%と報告されている.

2013-10-20 12:04:10
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】L7/L12蛋白を標的にした免疫クロマトグラフィー法の特徴(JCM 2013;51:70)は,感染部位の菌量に相関した抗原検出ができ,コロニゼーションのみでは陰性となるため,原因菌か汚染菌かの鑑別もできる.また,レジオネラでは血清型によらず1型以外もすべて検出可能

2013-10-20 12:07:16
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】遺伝子検査では,現在本邦で広く臨床応用されている短時間で可能なLAMP法の他に,複数病原体を同時検出できるMultiplex PCR法(Seegene社)や,1時間で1000CFUで検出可能なGene Xpert(Cepheid社)などがある.

2013-10-20 12:11:17
⅃ЯAƎ⊿せかんどらいふすたあと @DrMagicianEARL

【講演会Rev】特にGene Xpertは優秀で,MRSAを感度100%,特異度99.3%で検出できるなど,多数報告がある(NEJM 2010;363:1005/Ln 2011/LnID 2013など).WHOは発展途上国で結核診断にGene Xpertを推奨している.

2013-10-20 12:15:24
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