大罪戦闘企画

第六公演《孤守唄》
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【魔王】 @Tokimine_Seo

刃を確認するように、スイッチを一度切って、入れ直して、また切る。ショッキングピンクの瞳が、じ、と鋭く見つめる。 再び、地を蹴って近づく。スイッチは入れずに、ただ横から叩きつけるように、振りぬく。

2013-11-16 23:51:47
華夏の勇者 @battle_atom

「……」 人間に見えるか、だなんて。 どこからどうみたって人間じゃないか。 僕の大嫌いな、××きな、美味しい美味しい、人間の姿をしているじゃないか。 不思議な色の瞳に見つめられて、ますますぐちゃぐちゃになる。 僕のあたまの中が、すべてが、ぐちゃぐちゃに。

2013-11-17 00:18:35
華夏の勇者 @battle_atom

きっと、歩み寄って来る人間があまりに久々だったから、混乱、してるんだ。 こんな姿になってしまってから、誰も僕に近寄らなかったから。 あれは餌、あれは餌、あれは餌、 再び振りぬかれた金属の塊。 身を低くしてそれを避けると、人間君に体重を押し付ける様に、身をぶつけようと地面を蹴った。

2013-11-17 00:19:14
【魔王】 @Tokimine_Seo

重い一撃は軽々と避けられ、そのまま突っ込んでくる体重に、軽い俺はいとも簡単に突き飛ばされる。背中を派手に打って、げほげほと咳き込む。 けれど、濃桃色の瞳は、強く光を宿して。再び、チェーンソーを、振る。叩きつける。

2013-11-17 00:33:45
華夏の勇者 @battle_atom

あまりにもやせてて軽い体は、簡単にふっとんでいった。 細すぎるその体は、やっぱり嫌いだ。この子自身も。 再び振りかざされたその武器は、『腕』で受け止めた。 そう、腕。 勿論、その刃と触れ合う部分には『口』をつくって。

2013-11-17 01:04:52
華夏の勇者 @battle_atom

その『口』から生える牙で、強く強くそれを咥えた。 ――『口』をどこにでも作れる。 僕の、変なところ。 普通じゃないところ。 この姿になってから、突然出来る様になった。 詳しいことは僕もよくわかんないけど、こうやって痛い思いせずに相手を抑えられるのは、いいことかもしれない。

2013-11-17 01:07:09
華夏の勇者 @battle_atom

離さない様に強く、しっかりとそれを食いしばったまま、腕を大きく横に振るう。 上手くいけば、それを持ったままのあの子も横に吹っ飛んでくれるかな。 そうなればいいと、その子の肩のすぐ横にも一つ、『口』をつくった。 がりがりなこの子はきっと、そんな美味しくはないんだろうけど。

2013-11-17 01:08:06
【魔王】 @Tokimine_Seo

振りかぶったチェーンソーが、腕の半ばまで突き刺さった、と思ったのに。そこにあったのは、『口』。頑丈な牙で、チェーンソーの刃がしっかりと咥えこまれている。押しても引いても、動かず。 口に刃を咥えられたまま腕を振られ、チェーンソーを掴んだままの身体は浮いてしまう。

2013-11-17 01:40:42
【魔王】 @Tokimine_Seo

これはまずい。振り回された先には、またひとつ『口』がある。こだわりなくチェーンソーを離してその場からの離脱をはかろうとするも、『口』から完全に逃れることはできなくて。 脇腹にある内臓と筋肉を、ひと噛みぶん持っていかれてしまう。

2013-11-17 01:40:47
【魔王】 @Tokimine_Seo

「ッぁ……!」 激痛に、声にならない悲鳴がもれる。半ば叩きつけられるように地面に転がって、だくだくと血の流れる傷口を、反射的に片手で押さえる。 ふーっ、と獣にも似た吐息と共に、未だ、濃桃は睨みつけていて。

2013-11-17 01:40:57
華夏の勇者 @battle_atom

じゅわりと口の中に、血の味と、柔い肉の感触が広がる。 きっと、上手く人間君の肉を削ぐことが出来たんだろう。 能力でだした『口』と、僕の実際の口は、味とか、少しだけリンクしているから。 「……あぅ、」 血、血の味。 たまらない。美味しい。きもちいい。美味しい。美味しい。

2013-11-17 02:03:08
華夏の勇者 @battle_atom

さっき食べてた『ご飯』に比べると、やっぱりちょっと筋張ってはいるけど、思ってたより悪い味じゃなかった。 ぞくぞくと背中を駆け抜けていくのは、至福感?満足感?とにかく心地いい。 ああ、餌だ。やっぱりこの人は餌なんだ。 …だって、こんなに美味しそうなんだもん。

2013-11-17 02:03:48
【魔王】 @Tokimine_Seo

傷口を強く、強く押さえて、微かに震えた吐息を零す。痛くて熱くて冷たい、よくわからない感覚で頭がかき混ぜられる。 持っていかれてしまったチェーンソーは、もったいないけれど仕方なく消して。改めて、槍を呼び出す。きちんとした槍ではなく、先のとがった鉄パイプに近いもの。

2013-11-17 13:32:18
【魔王】 @Tokimine_Seo

槍を杖のように支えにして、なんとか立ち上がる。 思考から「考える」という選択肢はこそげ落ち、生きて、喰らうために、どうすればいいか。本能のままに、槍を突き刺さんと、動きは鈍けれど振りかぶる。

2013-11-17 13:32:22
華夏の勇者 @battle_atom

餌と分かれば、なんの躊躇いもいらない。 餌だって気づけたんだから、『区別』出来たんだから、もう何も怖くないんだ。 あとは、狩って、食べるだけ。 餌とそうでないものの区別はすごくあやふやで、遠い昔にとうさまに教えてもらった、『家族』以外は餌だと言う言葉の意味すら、よくわからなくて。

2013-11-17 14:54:46
華夏の勇者 @battle_atom

美味しそう、食べたいと思うものが餌で、そうでないものが違うんだって、『家族』だっていうなら、僕の『家族』はこの世に一人もいないんじゃないかとすら思う。 大好きだった最初の家族が死んじゃって、僕ひとりになって、始めは寂しくてしょうがなかったけど、今はもうそれでもいいかなって。

2013-11-17 16:49:22
華夏の勇者 @battle_atom

僕一人が化け物で、その他が全部僕の餌だっていうなら、こんな簡単な事はないのに。 それでも、今みたいにこうして、迷ってしまうのは、どうしてなんだろう。 餌だって解ってるのに、こわいって、思ってしまうのは… 「…あ、…」

2013-11-17 16:50:04
華夏の勇者 @battle_atom

左腕を細長い何かが掠める、抉るようなそれによって、僕の左腕からはとくとく血が溢れた。 痛い。痛いけど、何とかしなきゃ。 がしりとそのパイプを掴んで、手繰り寄せる様に体を前に進めた。 不思議な色の瞳、その瞳をじっと見つめて、顔をついっと近づける。 「…ねえ、聞きたいこと、あるの」

2013-11-17 16:50:42
【魔王】 @Tokimine_Seo

ぜえ、はあ、げほ、と絶え絶えに吐き捨てた唾に鮮やかな血が混ざっていた。 突き出して、腕を掠めた刃を掴まれた。また振り回されてはたまらないと引こうとした時に、向こうから近づいてきた。 じっと、瞳を見つめられて、紡がれた言葉は。 「……話す気になったのかよ」

2013-11-17 17:28:36
【魔王】 @Tokimine_Seo

最初から俺は話そうとしてただろ、と乱れる息で掠れた声のまま、ほんの少し拗ねたような響きで答える。 「なんだよ、聞きたい事って」 息は荒く。このままでは、時間はあまりない。

2013-11-17 17:28:44
華夏の勇者 @battle_atom

答えた人間君の息は荒い。 「さいしょから、話す?でも、きみ、僕をころしにきたんでしょ?」 ああそっか、お腹、僕がちょっと齧っちゃったから。 血を止めてあげなきゃ、お話しづらいかな、って思ったから、彼のお腹、その傷を覆うように、『口』を作ってあげた。

2013-11-17 17:49:18
華夏の勇者 @battle_atom

「それなら、大丈夫?ぶ?」 これで、『口』がある間は血は流れない。筈。 僕、頭悪いから、間違ってるかもしれないけど。その時は、ごめんなさいしよう。 その瞳はやっぱりまだ怖いけど、でも、どうせなら、食べてしまう前に聞きたい事があるんだ。

2013-11-17 17:50:35
華夏の勇者 @battle_atom

うんしょ、とごみをどかして、ガラクタばかりの空間に、なんとか二人座れるだけのスペースを作った。 人間は、話し合いするとき、座って話すから、そのまねっこ。 座って、自分の前のスペースをぽんぽんと叩いた。

2013-11-17 17:51:27
【魔王】 @Tokimine_Seo

押さえた傷口に先程の『口』が現れて、また食う気かと一瞬身を固くしたものの、その口が失血を止めていることに気づいた。詰めた息を少しだけ吐く。 いつでも殺せる、という意思表示だったのかもしれないが、拙い言葉の中にそういった気配はなく。 ぽんぽん、と叩かれたスペースに遠慮なく座った。

2013-11-17 18:51:39
【魔王】 @Tokimine_Seo

「とりあえず、大丈夫」 もちろん、失血を多少抑えられるだけであって、長くは保たないとは思うが。 「なんで殺しに来たと思ったんだ?――俺は俺で、喰うもの探しに来ただけだったんだけど」 そこで何か美味そうなものを喰ってる奴がいたから、話しかけてみた。初めはそれだけだった。

2013-11-17 18:51:50