2010年10月20日

野川忍・明大大学院教授(@theophil21)が語る「就業規則とは何か」

会社で働く上では絶対に守らなければならないと皆思っている就業規則。しかし、法的にはそれは相対的なものでしかないと言うことを野川忍・明大大学院教授(@theophil21)が解説。
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theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(1) 雇用は契約であって、幹部候補として入社したエリート正社員も、一日限りのアルバイトも全く同じように、使用者との「契約」によって雇用関係が成立し、展開していくという原則がある。ところが、日本の労働条件は、使用者が作成する「就業規則」に記載されていて合意はない。

2010-10-20 09:58:34
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(2) もし本当に雇用が契約なら、賃金の額や支払い方、労働時間、従事すべき業務や勤務場所などの労働条件について労働者と使用者が一つ一つ合意するプロセスがあるはずなのに、それらはすべて就業規則に記載されていて、一方的に労働者に「適用」されるだけである。

2010-10-20 10:00:13
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(3) なぜこんなことになっているのか。使用者が一方的に作成した就業規則が、本来「合意によって」形成されるべき労働条件を決めてしまい、労働者は就業規則の規制下に置かれてしまっているのはなぜか。「合意によって労働条件が決まる」という労契法の原則はどうなるのか。

2010-10-20 10:03:14
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(4) そもそも就業規則とは、使用者が労働条件を勝手に決めて労働者に適用するために認められているのではない。労基法は、全く逆の役割をになわせるために就業規則というツールを導入した。その役割とは、「職場の労働基準法を各使用者に作らせる」ということである。

2010-10-20 10:05:28
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(5) 労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に対して、労働時間や賃金、退職、安全衛生、職業訓練、表彰や制裁などについて記載した書面を作成し、労働基準監督署に届け出ることを義務付けている。この義務を果たさない使用者には刑罰も用意されている。

2010-10-20 10:07:41
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(6) この書面が就業規則であり、就業規則を作成・届け出させる理由は、「就業規則に記載されている内容を下回るような扱いはしない」ことを使用者に義務づけるためである。労基法93条とそれを受け継いだ労契法12条は、そのことを明記している。

2010-10-20 10:10:12
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(7) 労契法12条は、就業規則に記載された内容を下回る労働条件は、たとえ合意しても無効となると定めている。そして労働基準監督署は、就業規則を下回るような扱いがなされていないか使用者を監督する。これが「就業規則は職場の労働基準法である」ということの意味である。

2010-10-20 10:11:31
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(8) ところが、いつの間にか就業規則には、労働者が守らなければならない「義務」が記載されるようになり、法的根拠もないのに「労働者は就業規則に記載された義務を守らねばならない」という慣行ができあがってしまった。就業規則の使い方が本来と異なる方向に向いてしまった。

2010-10-20 10:15:05
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(9) しかし、集団主義的な就労形態が定着した日本の企業では、「就業規則によって統一的に労働条件を定め、職場の労働者に画一的に適用する」という方法がなじんだため、労働者も特に疑問を持つことなく、就業規則を学校の「校則」のようにとらえてこれに従ってきたのである。

2010-10-20 10:16:50
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(10) ところがまれに労働者の中には、「それはおかしい。就業規則は使用者が一方的に作成していて、自分はそれに同意など与えていないのだから、自分には適用されない」と主張する者が出てきて、訴訟も提起されるようになる。そこで裁判所は、実態と法原理との乖離に直面した。

2010-10-20 10:18:56
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(11) そこで最高裁は、「就業規則は職場のルールとして実際に尊重されている」という実態と、「労働条件はあくまで合意による」という原則を折り合わせるため、「就業規則の中身が労働者に周知されていて、中身が裁判所の目から見て合理的なら拘束力を認める」との判断を示した。

2010-10-20 10:21:32
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(12) この判断内容が2007年制定の労働契約法(労契法)7条に反映されている。つまり、就業規則は、労働者が採用されるときに周知されていて、中身が法の目からみて「合理的である」と認められる場合に限り、同意しない労働者も守る義務が生じる、ということである。

2010-10-20 10:23:21
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(13) したがって、就業規則の内容を下回らない限り、就業規則とは異なる内容を使用者と労働者で個別に合意すればそちらが優先する(労契法7条但し書き)。就業規則とは、そういう個別合意がなく、周知されていて、中身が十分に合理的な場合に「例外的に」拘束力を持つのである。

2010-10-20 10:25:11
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(14) 就業規則は法律上この程度のものなので、もちろん労働協約には劣後するし(労働協約で合意すれば就業規則の内容は排除できる)、常に守らねばならないような大それたモノではない。周知されていないか、中身が合理的でなければ、ただちに拘束力を失うのである。

2010-10-20 10:27:18
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(15) だから、「会社に入って就業規則があった場合、それが周知されていて、中身の合理性に疑問がない限りにおいて守ることとなる」というのが正しい。そして、いつでも労働協約や個別合意で就業規則と異なる合意ができるのだ。

2010-10-20 10:30:04
theophil21 @theophil21

就業規則とは何か(16) 以上、日本では絶対的なものと誤解されている就業規則が、実際にはいかに相対的な地位しかないものかを解説しました。

2010-10-20 10:31:29
kk yshr @kkyshr

野川先生のtweet、法律は素人で感覚的な感想ですが「就業規則は合理性に疑問がない限りにおいて守る」は言い過ぎではないでしょうか。

2010-10-20 11:50:27
kk yshr @kkyshr

野川先生がおっしゃるとおり、合理的とは法の目から見て合理的、の意味であり、労働者個々人が「そんなの不合理だ!」と主張するだけでは足りない訳です。そこに誤解を生む気がします。

2010-10-20 11:50:43
kk yshr @kkyshr

また、仮に合理的であって周知されており、労働協約や労働契約を下回らない場合は、それが労働条件となり「労使」を拘束すると思います。「就業規則を下回るような扱いはしないことを使用者に義務づけるためのもの」という片務的な見方をしてよいのかもしっくりしません。

2010-10-20 11:51:32
kk yshr @kkyshr

もちろん、就業規則絶対、という社会通念? 企業の暴論?に一石を投じる意味では必見のtweetです。

2010-10-20 11:54:14
kk yshr @kkyshr

私のような一般人の感覚でそんなの不当だよ! と叫ぶ気持ちと、法律的に不当行為であることは結構違うということです。また、法律的にといっても、公序良俗のように、そもそも相対的な基準でしかないことも。

2010-10-20 11:58:53
kk yshr @kkyshr

それを以て、就業規則は相対的だから、というと、先生の真意が果たしてきちんと伝わるのか、不安になったりもしてしまうのです。

2010-10-20 12:00:21
theophil21 @theophil21

労働契約法の6条と7条、それにできれば就業規則に関する叙述を含めたテキストを読んでください。拙著では、「新訂 労働法」(2010、商事法務)にかなり詳しく解説しています。RT @kkyshr

2010-10-20 12:17:33
theophil21 @theophil21

(1)労働者と使用者とが対等でないのは、前者が本質的に「生身の個人」で、後者がほぼ常に「組織」であることに主たる理由があります。もし、会社というものを作ることが禁止され、経済活動は常に個人でしか行えない、ということになれば、雇う側もいつも個人ですから労使は対等でしょう。

2010-10-20 13:06:06
theophil21 @theophil21

(2) どの国でも、法制度の上では、労働者がその権利や自由を確保するための最優先の手段は労働組合なのですが、その理由は、雇う側が「企業」、「会社」という組織であるならば雇われる側も労働組合という組織となって初めて「実質的対等」が可能となるからです。

2010-10-20 13:08:22
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