「藤田英典教授最終講義 『教育と自由・共生・正義の制度的基盤 〜教育社会学研究者としての歩み〜』」

【注意】一聴講生による私的なまとめです。要約に際して表現を変えているところが多々あります。文責は私にあり、(試みてはいますが)必ずしも正確な発言の引用ではありません。ご関心のある方は藤田英典氏の著作を参照ください。
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@edouard_edouard

「藤田英典教授最終講義 『教育と自由・共生・正義の制度的基盤 〜教育社会学研究者としての歩み〜』」

2010-02-17 17:24:18
@edouard_edouard

ハーバード大学の教養学部改革の資料に記載されている文言。"To liberate the mind" for academic learning and a responsible mind.

2010-02-17 17:33:35
@edouard_edouard

研究者生活のなかで抱いてきた問題関心は、「社会格差・不平等と機会構造」「学校教育の制度・組織・文化」「教育の公共性と共生社会」「教育政策・教育改革」であり、通底するテーマとしては「自由・共生・正義の制度的基盤」があげられる。

2010-02-17 17:36:09
@edouard_edouard

「教育の公共性と共生社会」について、具体的には、①自由・人権・自己実現と共生&教育の公共性、②市民性教育と教養教育の課題、③ソーシャル・キャピタル/信頼と教育・コミュニティの再生。理論的な背景としては、新制度学派・正義論、社会史・思想史研究、脱構築主義・構築主義があげられる。

2010-02-17 17:39:01
@edouard_edouard

1984年、臨教審における自由化論を契機として「教育政策・教育改革」に対する関心を強くする。具体的には、①学校五日制と学力形成・ケア機能、②学校選択制と序列・格差・競争、③基本法改正・成果主義の危険性、④メディア・政策が煽る「教育不信/信頼の低下」があげられる。

2010-02-17 17:41:17
@edouard_edouard

学校五日制については一貫して政策批判を展開。学校においてしかケアされない、あるいは学習機会を得ない児童、生徒の教育環境の低下が明らか。低学力層のこどもたちへの顕著な影響が指摘される。また「ゆとり」概念の誤用、悪用による問題の隠蔽への批判を展開。

2010-02-17 17:44:57
@edouard_edouard

多様な領域・テーマを扱い著書・論文等として公表してきたが、大半は総括・出版を先送りしたままになっている。最近は、スタンフォード時代の関心であった「教育の公共性と共生社会」と、これまでの研究の総括を行いたいと考えている。

2010-02-17 17:46:57
@edouard_edouard

「学校改革」議論において認識が欠如している学校教育システムの制度的特性として、①知識の社会的マネジメント、能力・人員の社会的マネジメント、③人材の社会的選抜・配分と社会的地位・報酬・生活機会の差異化、④学校教育の公共性(公益性)と私事性(利益性)cont.

2010-02-17 17:52:15
@edouard_edouard

⑤教育投資の二面性:公的投資(公共政策)・私的投資(家族の教育戦略)、⑥初等・中等教育(特に小・中学校):共通基礎教育・準備教育(「中核的内容」多様化の限界)

2010-02-17 17:53:45
@edouard_edouard

例えば、<知識の社会的マネジメント:「知識の選別・正当化と差異的配分(正統文化の伝達・再生産)」>が「制度的特性」である、とはつまり、構造的制度的にそうした特質が学校教育システムに本質的に備わっている、ということを意味する。それがシステムの特質であることを無視した議論の無効さ。

2010-02-17 17:56:30
@edouard_edouard

是正されるべきは学歴がもつ差異化の機能ではなく、学歴を歪んだ形で評価する仕方。高等教育の差異化の機能自体への批判は、高等教育の制度的特性の理解を欠いている。

2010-02-17 18:01:29
@edouard_edouard

1980年代以降の政策転換について。①60年代〜70年代:教育機会の拡充・平等化と受験競争の弊害の是正(入試改革・学歴主義批判)、②1984年〜:臨時教育審議会:「教育の個性化」(=自由化):新自由主義・新保守主義、cont.

2010-02-17 18:05:35
@edouard_edouard

③1992年〜:学校週五日制(完全五日制2002年):公的ケアの縮小=私的責任の拡大、cont.

2010-02-17 18:07:36
@edouard_edouard

④1994年〜:公立中高一貫校(中等教育学校の法制化1998年):重要な選択時期の早期化(→小学校卒業時点で今後の教育機会についての重要な決断を迫られる→決断の主体は保護者→家庭間格差、家族の教育戦略が子どもの教育機会を制限する要因としての働きを強める結果に→社会格差の強化に)

2010-02-17 18:08:36
@edouard_edouard

⑤1997年〜:「通学区域制度の弾力的運用」通知:学校選択制(法制化2003年)ペアレントクラシー、⑥2001年〜:小泉政権による規制改革・民営化政策の推進:市場原理主義(構造改革特区・民間委託)、cont.

2010-02-17 18:11:41
@edouard_edouard

⑦2002年〜:習熟度別指導の奨励(新指導要領)・学校評価(自己評価)の義務化:成果主義。習熟度別指導の早期化が、本当に効率的なのか、についてはきちんとした研究か必要。習熟度別指導の廃止は北欧において顕著。

2010-02-17 18:15:09
@edouard_edouard

⑧2007年〜:全国一斉学力テスト:テスト学力・進学実績の競い合い→教育の私事化(私益追求の拡大)とモラル・ハザード→教育の総合性・適切性の歪みと公共性の危機。

2010-02-17 18:16:40
@edouard_edouard

学校教育の「画一性」批判というのは、現場を無視した議論であることが多い。ある枠組みにおいて「画一性」として取り上げられる要素の多くが、実は取り除くことの原理的に不可能な学校教育の制度的特性であり、それに「現代日本の教育問題」の原因を押し付ける議論は不当。

2010-02-17 18:20:01
@edouard_edouard

(...これはすごい。藤田英典「序論」、藤田英典・大桃敏行編『学校改革』(『リーディングス日本の教育と社会』11巻)日本図書センター、2010年、3-37項)

2010-02-17 18:22:16
@edouard_edouard

「学校」という商品の特殊性、教育の市場化と任意的閉鎖性について押さえておくべき特性。①選択・入学時には未完の商品:機会費用の大きい商品(一つの学校にしか入れない)、②素材としての児童・生徒:入学者が左右する商品(「学校」という商品の価値はその購入者・利用者によって決定される)

2010-02-17 18:28:35
@edouard_edouard

③閉鎖的な集合財:教職員と児童生徒(保護者・地域住民)の恊働により造り上げる共同体(学びの共同体)、④選択制の下では、市場的価値(選択行動による評価)が実質的価値(恊働作業としての教育)を序列化する、⑤選択行動は、地元の学校を見捨て貶める象徴的メッセージを発する、

2010-02-17 18:30:54
@edouard_edouard

⑥学校選択制は学校を序列化・差別化し、任意的閉鎖性による排除メカニズムの作動を招く、⑦「消極的自由」支持論の二重の問題性:他者の積極的自由の制限、前提する強い自律的個人/能力差(自己決定の主体として小学生を立てることは現実には不可能→親の教育戦略の有無、質の影響力増大)。

2010-02-17 18:33:40
@edouard_edouard

世代的にも個人的にも吉本隆明、特に『マチウ書試論』『共同幻想論』からは大きな影響を受けた。

2010-02-17 18:37:17
@edouard_edouard

(....「教育学研究者としての歩み」に、「未完の修論「教育社会の権力構造」(吉本、デュルケム、マルクス、ウェーバー、フロム、ロック/ルソー、バーリン、エツィオーニ)」とあり、大変興味深いので質問してみた。今は質疑応答。)

2010-02-17 18:40:28
@edouard_edouard

藤田英典氏、教育社会学研究者としての歩み。早大政経学部経済学科(小松雅雄ゼミ)→東京大学大学院教育社会学研究室(清水義宏・松原治郎)→スタンフォード大学大学院国際開発教育(J. Meyer 他)→名古屋大学教育学部助教授(潮木守一・天野郁夫・水野欽司・村上隆)→cont.

2010-02-17 18:44:20