化学屋昔話
- hashimoto_tokyo
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「ダルマ酸が転んだ」で、下駄履きで濃硫酸のダルマ瓶を運んでて、つっ転んで瓶をブチ割り、硫酸かぶった話を思い出した。下駄履きで実験って、いつの話だろう。
2014-01-24 05:55:29そういや、最近男の下駄履きって、ちっとも見ないなぁ。マンションだと、カランコロンが騒音として苦情がくるかもしれんなぁ。
2014-01-24 05:58:58昭和40年代ぐらいまでは、濃硫酸って、並ガラスの20Lぐらいの瓶(今のガロン瓶をでかくしたようなの)に入って売られてて、ツルで編んだかごで保護して流通してたようで。それを下駄履きで実験室で運んでたらつっかけて、すっ転がって瓶を割り、白衣にばしゃっと濃硫酸をかけたという話。
2014-01-24 06:08:48(承前)あわてて白衣を脱ぎ、シンクに入って頭から水をかけて濃硫酸を流してたら、横目で、脱ぎ捨てた白衣がみるみる黒くなって煙を出し、自発的にグシャグシャと丸まりながら炭化した、というの。
2014-01-24 06:11:17今は、試薬もきっちり乾燥しているのが流通しているけど、前はガスも試薬も水分抜きが不十分で、ずいぶん濃硫酸での水抜きを多用した。アセチレンもボンベから出したヤツは水で洗った後に濃硫酸で乾燥させて。塩化水素もそうだった。んで、ガスものは配管が詰まるとよく濃硫酸が噴き出した。
2014-01-24 06:25:06今は、オレフリ(炭化水素溶媒中の不飽和不純物を、濃硫酸と共に振って抜く方法)なんて、よほど気を付けて分光をやる人じゃないとしないかもしれないなぁ。いい時代になったものだ。汎用有機溶媒は、(お金さえ出せば)脱水したものが簡単に買える。
2014-01-24 06:28:08以前は、実験がうまく行かなくて、湿気の仕業っぽいと「溶媒の乾燥が不十分。もう一回きっちり溶媒乾燥させて仕込め」という話になったのだけれども、今は乾燥溶媒を買っているところが多くて、「気を付けろ」という漠然とした指示しかできなくなってしまった。
2014-01-24 06:31:21もっと乾燥させろと指示しても、学生さんがやり方がわからないから。市販脱水溶媒より乾燥させるとなると、相当に手間がかかるし、アルカリ金属のハンドリングや脱気、移送や蒸留の技術がいる。下手な人がやると、売ってる溶媒より汚くしてしまうだろう。
2014-01-24 06:33:41もちろん、コテコテの不安定化学種を扱っている研究グループは、さすがに自分のところで溶媒を作らないと仕事にならないだろうけど。でも、一般的な合成から見たら、それはかなり特殊な部類に入るかもしれない。
2014-01-24 06:37:35もちろん、試薬の純度が上がるのは歓迎したい。でも、以前はそうでもなかったから、それを純化させるのに技術の鍛錬を必要とし、それを練習として先の研究が進めていけたよ、という話。 うわっ・・・私のおじさん度、高すぎ・・・?
2014-01-24 06:40:38しかし、そういうのってその上の世代から見るとまだ甘いから、オレでも「最近の若い者は」と言われることが多い。なんだ結局同じじゃないか。
2014-01-24 06:42:01レンガを買ってきてハンマーでぶん殴って粉にし、フルイでふるって酸で洗って、ガスクロのパックドカラムの支持担体にしたとか、平気で話が出てきたもんなぁ。そういう世代から見ると非常にアマちゃんに感じるらしい。
2014-01-24 06:43:59「自分で作れる化合物は、たとえ試薬で売っていても作って精製して使え」という思想がかつてあった。いろいろ話を訊いてみたり、本を読んでたりすると、どうもそれは東北帝大の真島利行大先生の流れかららしい。試薬棚にある市販試薬を使おうとしたら、「お前には実験する資格がない」と言われたとか。
2014-01-24 06:47:39さすがに今はない。非効率すぎるし、どんどん科学は先に進んでいるので、それでは先端の研究までたどりつけなくなってしまう。ただ、本質は理解できる。原料が作れず、溶媒も調製できない実験者が、そこから先を積めるはずがない、と。
2014-01-24 06:49:39ただ、真島大先生の東北帝大の頃って、まずフラスコを実験者が吹いてガラス細工で作るところからスタートするのよ・・・。さすがにそれは・・・。大学教授みずからガラス細工ってどうなの。
2014-01-24 06:52:38きっと次は、山から石英とホウ酸、海から食塩を取ってきて、ガラス生地を作るところまで行くのかもしれない。精神論入っている。この種の話は、実験精神論に流れやすいので注意を要する。
2014-01-24 06:55:09日本で最初に女性で学位を取った黒田チカの研究も、研究テーマのテーマダウン時には、研究の核心のところをすでに真島利行教授が実験を終わらせてた、というよね。今の大学教授、それも国立旧帝大の先生は、天然物の単離実験をやりたくても、周りがその時間を与えてくれないだろう。
2014-01-24 07:03:12ただ、真島利行大教授はわりと安全面に関してはホンポーだったのか、部屋の実験者が無性にクシャミがでるので何かと思ったら、部屋の隅でアコニチン(トリカブト毒)を減圧で引っ張ってろ過してて、その排ガスが部屋に飛び散ってた、という話も。
2014-01-24 07:06:58山猫だぶさん @fluor_doublet の「化学屋昔話」http://t.co/f3eJlGFpSl をこっそりトゥギャりました。
2014-01-24 07:44:32