ろいったー百物語

#ろいったー百物語 rowitter企画内のログ カウントの仕方により話数がずれるのはご愛敬としてご容赦を。 まとめ者の独断と偏見によりタグなしのものも最後のほうにまとめています。 続きを読む
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--- 9話目 -

カンシュ(ラクシュ) @rw3_kansch

コンロンを時計回りにぐるりと歩いてはならぬ。コンロンを時計回りに歩くと鍵穴が開いてしまう。「一階」に通じる扉が「異界」へ、「三階」へ通じる扉は「惨界」へ。二階はどうなるのかと?「似界」、ぬしと同じ顔をした何かが入れ替わり、夜ごと人々の血を啜って回るそうじゃて。 #ろいったー百物語

2014-02-14 12:09:08
カンシュ(ラクシュ) @rw3_kansch

ならば、用があるときはどうすればよいのかとな?用があるときは半周ごとに中央の像へ立ち寄り、話しかければよい。「まるを切ったらまんなか割れた、まんなか割れたら鬼子が漏れた」…意味はわからぬが、誰もがやっていることじゃ。ぬしもコンロンにきたら必ずやるのじゃぞ。 #ろいったー百物語

2014-02-14 12:09:27
カンシュ(ラクシュ) @rw3_kansch

・・・・・・これ、100個あつまったらどうなるんだろ・・・(震え声)(Wizpediaで調べたらしい)まさか、そんな、100話終わったらMVPBOSSが出るとか、あるわけないじゃんねぇ・・・?

2014-02-14 12:11:01

--- 10話目 -

@Sen_row

昔仲の良い一組の男女が居た。 やがて二人は夫婦となり、海を渡った土地に居を構え、時折喧嘩をしながらも睦まじく暮らしていた。 ところで妻は季節の行事に拘る性分で、 丁度ばれんたいんのこの時期にも毎年欠かさず夫へ手作りのちょこれいとを送っていた。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:19:26
@Sen_row

しかしある日妻は風邪を拗らせ、床に臥せってしまう。 やがて肺の病を発症し、夫は冒険者を辞めて妻の傍に居る事を誓った。 数年後、妻は満足に出歩けない体になっていたが、それでも毎年バレンタインの時期になると 必ず炊事場に立ち、手作りのちょこれいとを夫へ送る。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:20:09
@Sen_row

体を病魔に蝕まれ、己の足で支えるのもやっと。 拵えるちょこれいとも、最初は顔の大きさ程だったものが体力の衰えと共に年々数を減らしてゆき、 とうとう最期の年には、作っている最中で倒れてしまった。 残ったたった一粒のちょこれいとに、せめて彩りをと桜の花を一輪添えて。#ろいったー百物語

2014-02-14 18:20:52
@Sen_row

そうしてそのひと月後、妻は亡くなった。 一年が経とうとしていたある日。 妻の部屋を整理している時に、夫は一冊の本を見つける。 随分と年季の入ったよれよれのそれは、手作り菓子の本だった。 開くとちょこれいとの頁が捲って読み返された痕跡ある。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:21:26
@Sen_row

赤い筆記具であちこちに線が引かれ、所々に粉砂糖や水滴が飛び散って 説明文を読むのがやっとと言う様相のそれ。 丁度ばれんたいんの日が近く、夫はふとした気まぐれで 妻の遺した本を見ながら手作りのちょこれいとを作ってみることにした。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:22:02
@Sen_row

ところが元々不器用な夫は、ちょこれいとを溶かすだけでも一苦労。 湯煎に湯が混じってしまったり、取り出すのが早かったり。 型から出す時に割ってしまったり。 要領が悪いとは言え、健康体である夫ですらこの体たらくなのだから 立つのがやっとな妻の苦労は如何程か。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:23:07
@Sen_row

結局残ったのは一口大の小さなちょこれいとが一粒。 最期に受け取ったものと同じような形のそれを、 妻の眠る墓へ、桜の花を一輪添えて置いた。 それから毎年、夫は欠かさず妻の墓前に一粒のちょこれいとと桜の花を贈る。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:23:37
@Sen_row

何故なら贈った翌日…猫か鳥か。 何が……否。 一体誰が持っていってしまうのかは解らないけれど 不思議な事に次の日には必ず、ちょこれいとだけが忽然と消えているから。 海を渡った小さな国の、小さな夫婦のお話。 #ろいったー百物語

2014-02-14 18:24:37
@Sen_row

今年も現し世の俺から幽世の君へ、十個目の愛を贈る。 (手折った桜の花びらに口付けると、御影石の上へチョコレイト一粒と桜花を一輪添えた) #rowit_dqa http://t.co/mUh8tAPVIc

2014-02-14 18:24:57

--- 11話目 -

イグナ @Ignatz_rwt3

どこにでもある、よくある話でもしようか。 一人の平凡な少女が、出自のいい貴族の男に惚れた。その男は代々続く所謂ところの聖騎士の家系。男は修行と称して冒険者となり、騎士への道を歩んだ。……追いかけるように、少女は大聖堂へと冒険者証を提出した。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:21:19
イグナ @Ignatz_rwt3

少女は男の助けになりたかったんだろうな。 もともと真面目な少女は敬虔で優秀な聖職者となり、同じくして強く賢しい聖騎士となった男と、まるで図ったかのように同じタイミングで、プロンテラ城からの命を受けて同じ戦地へと赴くことになった。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:23:30
イグナ @Ignatz_rwt3

同じ部隊に配属されたんだ、世間話程度はする仲になる。 少女は想いを秘めたまま、頑固な聖騎士が時折洩らす愚痴めいた話を穏やかに聞くようになった。話下手だった彼女は、ただ頷くことしかできなかった。が、それが良かったんだろうな。聖騎士様は彼女にだけ、色んな話をした。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:27:23
イグナ @Ignatz_rwt3

しかしこれもまたよくある話でな。 向かった戦地で、彼女と彼が配属された部隊は負けた。もっと言うなら、死者を何人も出すほどの負け戦。聖騎士サマは二度と最前線に行けぬ体に。少女は癒しを紡げぬ怪我を負った。しかし二人の間には絆が生まれていた。何と聞くのは野暮だろう。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:31:38
イグナ @Ignatz_rwt3

だが、家柄や家系の柵からは逃れられん。 駆け落ちを選べる力は騎士には残っておらず、家の命令で嫁を娶ることになる。前線に立てぬ身体になったが、血筋は守らにゃならん。騎士は政略結婚を選んだ。但し、ひとつだけ条件を出した。……癒しの力を失った彼女を傍に置くことだ。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:35:20
イグナ @Ignatz_rwt3

運が良かったんだか悪かったんだか、騎士の結婚相手の女も随分とそこらはドライだったようだ。お互い"儀式的"な婚姻を結ぶことでその話は上手くいった。ように見えた。……だがな。メイドだろうが何だろうが、未婚の妙齢の女性を傍に置くというのは随分と醜聞が悪い。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:37:39
イグナ @Ignatz_rwt3

聖騎士のために聖職者の道を選んだ少女は、聖騎士のために聖職者を返上し、そして聖騎士のために知り合いの男に頼んで偽装結婚をした。そうして醜聞の材料を免れた彼女は、晴れて聖騎士様の家にメイドとして雇われた。……が、そこでハッピーエンドとはいかないのが世の常だ。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:40:30
イグナ @Ignatz_rwt3

聖騎士は血筋のために子を作れと言われた。 戦えぬのならば、戦える子を残せ、と命じられたわけだ。家系に、血筋に、そして家の仕事に誇りを持っていた男がその命に逆らえるはずがなかった。目出度く子は生まれた。さて、ならば愛情はどこへ向く?……現実は常に厳しいものだ。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:42:38
イグナ @Ignatz_rwt3

聖騎士は全てを愛そうとした。 だが全て愛するってな、無理な話だ。分配された愛と、只管に傾けられたひとつだけの愛。天秤が傾く方向は決まってる。無理に無理を重ねた条件つきの幸せは、長くは続かなかった。……彼女はそこを去ることを決めた。壊す前に、壊れる前に。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:45:43
イグナ @Ignatz_rwt3

だが、何も知らない世間の風ってやつは、時に鋭い諸刃の剣となる。 ありもせぬものを疑われ、ありもせぬ悪し様な風聞を流され、そして身勝手な悪口と、或いは暴力に晒され。彼女は限界だったんだろうな。ならばせめて、と。最初に誓いを捧げた神に、彼女は己自身を捧げた。 #ろいったー百物語

2014-02-14 19:50:17
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