飛翔

綺羅(@kiraboshi219)さんによる薄桜鬼の創作小説第9弾です。 4月14日、解説文更新しました。 第1弾「黒と白~斎藤一~」http://togetter.com/li/587101 続きを読む
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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

勝手に住み着いてしまった彼らだけど、 剣の腕はみんな確かで、 打ち合う時の楽しさや、抑制しなくてもいい解放感が、たまらなく心地よくて、僕は毎日誰かを誘って、自分を試した。

2014-02-21 19:06:08
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

剣の才を伸ばして身を立てれば、一人の男としてやっていけるんだという気持ちは、 僕が沖田家__姉さんであったり、近藤さんに依存している現われでもあった。

2014-02-21 19:06:31
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

結局のところ、僕はいつも誰かの存在を意識して生きていた。

2014-02-21 19:06:45
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

見返してやりたいと思っていたのかもしれない。

2014-02-21 19:06:56
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

根っこにある薄暗い気持ちを晴らすことができないまま、 勝っていいのか、手加減せねばならないのか、 先生や近藤さんの目を窺いながら剣を振るうことに、 こころが疲れ始めていた頃、 試衛館にまた一人、道場破りがやって来た。

2014-02-21 19:07:34
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

斎藤一。 __当時は山口一と名乗っていた彼が。

2014-02-21 19:07:49

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🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

木刀の試合なのに、まるで真剣勝負のような一本だった。 一くんが居合いの構えを見せた時、道場が少しどよめいた。 「左利きの剣客だと……?」

2014-02-22 18:10:36
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

初めて出会った異端の剣客。 でも僕は、一くんから立ち上る怒りにも似た雰囲気が気になった。 それが何なのかを、木刀を合わせてみるとすぐに感じることになる。

2014-02-22 18:10:52
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一くんもまた、貪欲に、執拗に、強さを求め、 己を試し、勝者となることで掴み取りたいものがあったんだ。

2014-02-22 18:11:20
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

それを繰り返して、強い自分を納得させるために、 より強い者を討つことに囚われている。

2014-02-22 18:12:19
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕に初太刀をかわされて、一くんは不適な笑みを浮かべた。 不気味ささえ感じる口元、でもその中には、僕への期待が見てとれた。

2014-02-22 18:12:34
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕の体の左側を斬り上げられる感覚はぞくぞくした。

2014-02-22 18:12:48
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一撃で仕留めようとする一くんの剣は、隙を生む大技を繰り出してくる。 腕を伸ばしきったあとも、踏み込んだ左足も、 そうと見届けた瞬間には別の場所にある。 平助より俊敏かもしれない。

2014-02-22 18:13:09
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

互いに、大技をやめて小手先の勝負に切り替わると、 練習の打ち合いを実戦にしたような、激しいぶつけ合いになった。 こんな回数を、全力で打ち合ったことなんてない。

2014-02-22 18:13:30
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕はとても昂揚していた。 普段は周りが見えなくなることなんてないのに、僕は一くんしか見てなくて、 すごく楽しく、また殺意さえ覚えながら打ち合っていたのに、

2014-02-22 18:13:51
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕は土方さんに抱きとめられ、 一くんは左之さんに取り押さえられた。

2014-02-22 18:14:04
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「いい加減にしろ!殺し合いのつもりか!!」

2014-02-22 18:14:37
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

我に返った僕と一くんを、土方さんが怒鳴りつけ、 僕達はそろって拳骨を喰らった。

2014-02-22 18:14:52
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

「あ、土方さん、他所の子を殴ったぞ」 平助がぼそっと呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。

2014-02-22 18:15:06
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一くんは左利きの剣客であることに、負い目を感じていたらしい。 でもそれは道場のしきたりに則ったことであって、 土方さんみたいに型を無視してとにかく勝つことに拘って喧嘩をしてきた人には、 「実戦では面白い」とか「左も右も関係ねえ」になってしまう。

2014-02-22 18:15:39
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

一くんは仏様に救われたみたいな顔をして、 それ以来ちょくちょく試衛館に出入りするようになった。

2014-02-22 18:15:53
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

すっごく無口で、無表情で、何を考えているかわからないんだけど、 木刀をあわせる時の一くんは表情豊かだし、 何より手加減は無用、と本気で打ち合う相手ができたことが嬉しかった。

2014-02-22 18:16:27
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

僕は山南さんと打ち合うのを好んでいた。 山南さんの剣は、強さの中に美しい動線があって、流れがつながっている。 流れを乱す斬り込み方を体得したくて、僕は何度も山南さんに挑んだ。

2014-02-22 18:16:42
🐿 綺 羅 🦭 @thrianta_satin

負けた相手にはいつか勝たなければならない。 僕は強い人に打ち負かされるのを恥だとは思わない。 むしろわくわくする。 そういうところは、近藤さんを見習っているんだ。

2014-02-22 18:17:27
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