『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#6

ゴリラスレイヤーの続編。パート7 ゴリラスレイヤー:http://togetter.com/li/623804
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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

これまでのあらすじ:ピラー79階。ヒュージゴリラ、ゴリラクエイクとゴリラスレイヤーとの戦いは壮絶な自爆によって幕を閉じた。ゴリラスレイヤーの安否や如何に!?

2014-02-22 22:12:04
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#6

2014-02-22 22:12:44
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

度重なるゴリラ同士の戦闘によって、フルーツ・ピラーの構造は実際限界に達しようとしていた。地下での戦いで基礎が傷付き、頂上部での自爆によって火災が発生。79階は既に炎に包まれ、地獄の入り口めいた様相を呈していた。其処に命ある者は最早無い。 1

2014-02-22 22:14:33
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

……いや、蠢く物体が一つ。瓦礫から起き上がるそれは、ゆっくりと身体を起こし、右腕を引き摺りながらナックルウォーク姿勢を取った。その全身は血に濡れ、元の白銀の毛は微かに覗くのみ。その背中からは今も血が流れ出ていた。 2

2014-02-22 22:15:27
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それはゴリラでは無かった。ゴリラよりも巨大な姿をしていた。ゴリラに似た何かは、悲しげな咆哮を上げる。彼は何を悲しむのか。彼が何者なのか。……それを知るためには、今暫く時を巻き戻さねばなるまい。 3

2014-02-22 22:16:17
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ヒュージゴリラの自爆直後。ゴリラスレイヤーの意識は、生い茂った密林の中に居た。熱帯雨林。今となっては微かに残るのみとなった、ゴリラの故郷。様々な生き物の声。草木の揺れる音。そうした音がゴリラスレイヤーの聴覚を満たす。 5

2014-02-22 22:18:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……ゴリラスレイヤー」その眼前の木の上から声がする。ゴリラスレイヤーが見上げた先には、赤黒の老類人猿の姿が在った。ナラクピテクスである。「……いや、今はこう呼ぶべきか。ゴリキド・ケンジ」それは、ゴリラスレイヤーが人であった頃の名だ。 6

2014-02-22 22:21:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリラスレイヤーはその言葉に、思わず己の身体を見た。毛が生えていない。ゴリラスレイヤーは一糸纏わぬ人の姿をしていた。嘗て人であった頃の姿だ。「これは何だ、ナラクピテクス」「ここはワシの……別荘のようなものよ」 7

2014-02-22 22:23:26
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「つまり、まやかしか」ナラクピテクスはゴリラソウルだ。それが実体化しているという事は、此処は実空間ではない。「少し話をせんか。……このままでは、オヌシの肉体は死んでしまう」そうだ。ゴリラスレイヤーは、ヒュージゴリラの自爆に巻き込まれ…… 8

2014-02-22 22:29:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「今、『向こう』ではどうなっている」「まだ1秒と経っとらん。此処は時の流れが向こうに比べ遅い。その前に、色々と話をせんとならん事がある」「それは何だ」ゴリラスレイヤー……いや、ゴリキドは先を促した。 9

2014-02-22 22:31:30
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「既に気付いていると思うが、ワシは厳密にはゴリラではない。ゴリラを殺すために、ゴリラの姿を取っていたに過ぎん」頷くゴリキド。それは既に知っていた。ナラクピテクスは、様々なヒトの近縁種の集合体である事を。 10

2014-02-22 22:32:26
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「そして、今は人を殺す」「そうだ。ならば、ゴリラに拘る必要は無い。オヌシがドラミングを無視した様に」ナラクピテクスはゴリラ憑依者をヒトとして殺す。……つまりは、「私がゴリラ憑依者をどう見るか、ということか」 11

2014-02-22 22:37:58
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「それよ」ゴリラ憑依者は人なのか、ゴリラなのか。そして、それは己と同族であるか否か。だが、ゴリラスレイヤーの答えは決まっている。「人で無かろうと、ゴリラで無かろうと、私はゴリラ憑依者を殺す。それだけだ」 12

2014-02-22 22:44:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それが何であろうと、関係は無い。ゴリラ憑依者は敵だ。己と同族であろうと、そうで無かろうと。ゴリラスレイヤーは復讐者だ。地上から、ゴリラの名を冠する最後の一人が滅ぶまで戦いを止めぬ、血塗れの殺ゴリラ装置なのだ。 13

2014-02-22 22:48:06
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ウホッ……関係無い、と?」「この身は既にナラクピテクスへと売り渡した。復讐が終われば、好きにして構わん。……だが、それまでは」だがそこで、ナラクピテクスは言葉を遮った。「良い。オヌシの覚悟を聞ければ満足だ。それに……」 14

2014-02-23 02:10:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ナラクピテクスは続ける。「オヌシには、恩もある……ヒトモドキを殺せた恩がな」「ナラク、ニンジャとは何なのだ」ゴリキドは尋ねた。ナラクピテクスの様子は、あのニンジャという存在を目にした時だけ違っていた。 15

2014-02-23 02:11:28
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

まるで、怨敵を……ゴリキドがゴリラを殺す時の様に、憎悪に燃えていた。「種としての生命の営みであれば、ワシは敗者の憎悪を啜るだけだ。だが、奴らは違う。奴らに生命の営みは無い。言うなれば、宿主を枯らす寄生虫よ」 16

2014-02-23 02:12:09
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ゴリラを殺す事とニンジャを殺す事は違う……と?」「ゴリラスレイヤーがゴリラを殺すことに……つまりは、ワシがゴリラを殺すことに意味がある。滅びる者に手を下す。死神よ」「死神?」復讐者ではなく? 17

2014-02-23 02:12:49
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ワシの感情と役割は別よ。刈り取られた憎悪は、次を生きる者の糧となる……」「それは一体……」そう口にした時、ゴリキドは周囲の景色が蜃気楼の様に揺らめいているのを感じだ。 18

2014-02-23 02:13:01
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「もう時間が無い。そうさのう……ゴリラに拘らずとも良いならば、これを久々につこうてみるか」ナラクピテクスの声も遠のく。……『ゴリラスレイヤーが、ゴリラを殺す事に意味がある』その言葉が、妙に心にしこりを残した。 19

2014-02-23 02:13:32
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

こうして、ゴリラスレイヤーの意識は現実の肉体へと帰還した。揺るがぬ殺意と共に。 20

2014-02-23 02:13:40
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

時は現在へと戻る。ゴリラスレイヤーの現在の姿は、ギガントピテクス。嘗て存在した、ヒト上科最大の生物である。その巨体はゴリラの二倍近い。ゴリラよりもヒトから遠い、とうの昔にパンダによって滅びた別の可能性だ。それが、ナラクピテクスの力によって現代へと蘇ったのだ。 22

2014-02-23 02:14:24
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