- kuroko_1011
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父殺しっていうと結構物理だったり父の支配を克服する(村上春樹『海辺のカフカ』とか)ってものですけど、母殺しっていうと大体は母の望み通りに行かないことでの消極的殺害に留まることが多いような気がします。
2014-04-18 13:38:31あー。父殺しはホント物理的に殺す感じがする。勝敗分かりやすい 母殺しというよりは母の『支配から逃れる』みたいなイメージ。確かに消極的だ
2014-04-18 13:44:10『母』として殺すのなら、やはり母という意識は自分の中で十月十日育んだという一体感にあると思うので「子供は母とは違う人間である」ということを確信させた時点である意味殺せると思う。あくまで母という意識の話ですけど。
2014-04-18 13:48:35昼間話してたと思われる父殺し、母殺しの話題で、有島武郎『小さき者へ』から考える「母と父とは」ということで٩( 'ω' )و
2014-04-18 19:26:08ここで有島武郎の簡単な評価について。ブルジョワジーの家にうまれ、白樺派に属するエリートで、大正天皇の御学友。ヒューマニストとして評価をされています。その評価の1つとなったのが2人の子の母が亡くなった際に発表された『小さき者へ』です。簡単に内容を箇条書きしますね。
2014-04-18 19:29:02有島武郎『小さき者へ』の構成要素。 「父」としての愛・「夫」としての愛。 「私」の決意の表明。 妻への感謝、鎮魂歌。 「子」への激励と愛。 「私」の自戒と死への恐怖。 主にとりあげられるのは「子への激励」と「妻への鎮魂歌」の箇所です。
2014-04-18 19:31:18これは手記として評価されており、小説として扱わないコトもありますが、僕は小説として考えています。一人称形式の語り手が「作品中で読者として設定されている数年語の子供」と「数年後の自分自身へ」語りかけるものだからです。その中に僕らは含まれず、箱庭として完結しているといっていい。
2014-04-18 19:33:35有島武郎は「死を比較」します。プロレタリアート(無産階級)であるU氏の死と、ブルジョワジー(有産階級)である妻・子の母の死と。あくまで死は本人の問題ではありますが、ここで敢えて有島武郎は、死の相対化をすることで死の価値は等価であるか問いかけます。
2014-04-18 19:36:10ここではあくまで「子供の母が亡くなったことについて他者の死を引き合いに出して『死』を相対化するのか、について考えてほしいです。 僕が言いたいのは、率直に言えば「この語り手は本当にヒューマニストなのだろうか?ヒューマニストとは何を以て言うのか」ということです。
2014-04-18 19:38:11さてここでまだ『小さき者へ』を読んだことない人へなのですが、ここまで喋っておいてなんですが、初読は是非、先入観無しで読んでいただきたいです。詩のように高らかに感傷的に、文の端からこぼれてくる情愛が感じられることでしょう。韻文と呼びたいほどの美しい文章です。
2014-04-18 19:40:35しかし、その文章は「あまりにナルシシズムにすぎる」「作られたかのような不自然に深すぎる愛情」との冷静な指摘があります。あくまで語り手が想定している読者はまだ幼い子供たちですから、情に訴えかけることが必要だった、のかもしれません。自戒か、愛か、陶酔か、懺悔か。
2014-04-18 19:42:35母を喪うということは、まだ幼い子供にとっては大きなことですが、前述したとおり、語り手は「死を有産階級と無産階級の間で相対化」しました。そのうえで、こうも言っています。「倦きはてる程夥しくある事柄の一つ」「ありふれた悲劇」「死が総てを救った」そして「十分に人世は淋しい」と。
2014-04-18 19:44:45そして、子供のことをこうも評しています。「血を味わった獣」。本当にヒューマニストなんでしょうか? と、もう一度、子供を想って描いた文章にこんなフレーズがでてくるだろうか、と読み返して考えていただきたいです。
2014-04-18 19:46:36親の死を乗り越えていってほしい、といって屍となり子の踏み台になるのが親の愛というのならば、随分に狭く、子供に対して残酷なのではないでしょうか。
2014-04-18 19:47:30有島武郎を読む際、特に『小さき者へ』を読む場合の注意として、このようなフレーズがあります。「メッセージとテクストは別物である」。
2014-04-18 19:49:22メッセージとは、作者の意図として明らかに作品のテーマとして込められている想い。 テクストとは、作者が残した文字の羅列。先日話したように作者とは乖離して、自ら意思をもって正解を提示しないもの。
2014-04-18 19:50:22ついでに。作家とは、現実世界にいる、もしくは存在した人自身を指します。作者とは、その作品の生みの親としての概念を指します。その二つを混同しないようにしましょう。
2014-04-18 19:51:27作家としての有島武郎は、ヒューマニストとして評価され、プロレタリアート運動に傾倒し、最期は情人であった女性と心中をしています。当時の作家の心中死はよくあること、とはいえますが……作家の生き方は作品に影響をおよぼさないはず、なんですが。僕は少しひっかかります。
2014-04-18 19:53:02有島武郎の『小さき者へ』は親と子との間の愛情について書かれたもの、という認識が強いです。ですがそれ以上にプロレタリアートとブルジョワジーの間の問題も浮き彫りにしている、血なまぐさいものにも読み取れます。
2014-04-18 19:54:11短いものですから、是非、読んでみてください。そして、感想を、素直なものを聞かせてほしいです。僕は分析的に読む癖がついているので、素直な感想が是非ほしいです。論文に使わせてください。
2014-04-18 19:55:07と、いうわけで「母殺し」「父殺し」に関連して有島武郎の『小さき者へ』の紹介でした。いずれひぐらし考察大会とかやりたいですね(唐突
2014-04-18 19:55:56個人的にオススメの文庫です。