地獄鎮守府の日常 #18~20

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白金桜花 @YamanekoOuka

「はい、裸で帰るのは恥ずかしいでしょ?」 「借りが一つできてしもうたな?」 黒潮が雷に対し、ニヤリと笑った。 そして陽炎の方も開放する。内臓を引き抜かれ腕を切られ、まともに動けない彼女に私の赤いコートを着せる。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:20:48
白金桜花 @YamanekoOuka

「……ありがとう、恥ずかしいところ、見せちゃったわね」 陽炎が、顔を赤らめながら言葉を出す。 「最悪だ、不知火には見られたくない」 私は冗談交じりに呟くと、くすりと陽炎が笑った。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:21:31
白金桜花 @YamanekoOuka

不知火は叢雲と違い嫉妬深い、そこが可愛いのだが、今回のような事が彼女に知られたら淡々と問い詰められるだろう。 とりあえず弁明の発言を考え、彼女に責任が及ばない言葉を選び、真っ先に叢雲に頼る事を決心する。 ダメな男だが、ダメな男なりの処世術である。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:23:25
白金桜花 @YamanekoOuka

そして私はお姫様のように彼女を抱きかかえ、私達は倉庫を後にした。 帰ってきたときボロボロになった2名を見て叢雲に驚かれ、弁明虚しく3人で彼女に怒られたのは言うまでもない。 艦娘に説教される提督と考えると、自分が情けなくなるが叢雲が頼りになるだけだ、多分、きっと。 #自鎮

2014-04-20 21:40:18
白金桜花 @YamanekoOuka

そして翌日、私、陽炎、黒潮、雷の四人は豚汁を食べる。 結局豚肉は手に入らなかった、だが、この味に安心感を覚える。 「過ぎたモンに手ぇ出すと、碌な眼に遭わんもんやなぁ」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:24:16
白金桜花 @YamanekoOuka

「うんうん、きっと天罰よ!天罰がまた私達に神様が与えちゃったのよ!きっと」 陽炎が力説する、彼女は独自の宗教観を持つ、平たく言えば狂っている。 キリスト教かと思ったらマニ車を愛好し、マニ車を部屋に居ると延々回してるぐらいだ。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:24:59
白金桜花 @YamanekoOuka

「ごちそうさま、豚肉って正直食べた事あるけど、合成肉と変わらない味なのよね」 雷が豚汁を平らげた跡、残酷な事実を私達に告げる。 彼女は物知りだ、何年前から生きてるかもわからない、その言葉が、真実性を補完する。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:25:49
白金桜花 @YamanekoOuka

「そうなん?」 「うん、ついでに言うとね、司令官なら知ってるかもしれないけど。人肉って、豚に似た味なんだって」 雷が微笑むと、陽炎がトラウマをフラッシュバックしたのか口元を抑え、そのまま食堂のトイレまで駆け込むように向かっていった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:27:02
白金桜花 @YamanekoOuka

「繊細やなぁ」 あきれた様子で黒潮が言う。 彼女は陽炎がどうしてこの鎮守府に来たのか、何も知らない。 「まぁ、いろいろあったんだよ、あの子はさ」 「ん、どゆこと?」 「知らぬが仏さ」 興味を持つ黒潮だが、私も彼女の素性を面白半分に語るほど悪趣味ではなかった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 23:27:59

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白金桜花 @YamanekoOuka

任務をこなし、達成を報告すると大淀と言われる艦娘が鎮守府に出向き、荷物を置いて帰る。 その荷物の入った段ボール箱の中に入った、一つの小さな箱を取り出し、演習で勝利した叢雲の帰りを待つ。 「ただいま」 そうして待つと、叢雲が執務室に入ってくる。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:35:12
白金桜花 @YamanekoOuka

彼女とも、かなり長い付き合いだ。 「お帰り」 そう言いながら、私は箱を叢雲に差し出す。 箱にはリミッター解除に関する合意書類及び機材一式、と書かれている。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:36:36
白金桜花 @YamanekoOuka

通称はケッコンカッコカリ、提督と艦娘が対になる指輪を付け、精神的同調を行う事で提督の脳の演算リソースを艦娘が、またその逆に提督が艦娘の演算リソースを使う行動を取る事が出来るようになる。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:38:04
白金桜花 @YamanekoOuka

指輪は提督は一つあれば、複数の艦娘にこの機材を付け同調する事が可能であり、指輪を渡す行動から、結婚のようなものとしてケッコンカッコカリと言われている。 そのため艦娘への愛を示す為、専用の式を行うというビジネスモデルも発生している状況だ。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:39:43
白金桜花 @YamanekoOuka

叢雲はその箱を受け取り、眺める。 「ケッコン、ね……」 叢雲が箱を取り出し、指輪の入った小箱を取り出す。 「別にアンタの事、別に嫌いじゃないし命令なら構わないけど……」 「私のことは異性としては興味外かい?」 そういう意味でないのは解るが、少しからかう。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:41:50
白金桜花 @YamanekoOuka

「別にそういう意味じゃないわよ。ただ、質問いい?」 そう、叢雲が私に問い掛ける。 ふと、部屋の空気が変わった気がした。 その雰囲気は何時もの彼女と違い、雷に似た、冷ややかで無機質な雰囲気を纏わせていた。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:43:08
白金桜花 @YamanekoOuka

「ああ」 そう私が返すと、叢雲は指輪を取り出す。 「この指輪はリミッターを解除するための同調機、通常の接続は私の感覚情報が貴方に受信されるだけだけど、これはさらに深く繋がるためのもの。でも、それだけの代物よ」 帰ってきた言葉は、叢雲らしくない、無機質な言葉。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:44:22
白金桜花 @YamanekoOuka

彼女は執務机に両手を付け、正面から私に顔を近づける。 「それだけの代物、だから愛が無くても付けられる、愛しあってなくても、利害の一致でつけられる、これをただの武器としての『かたち』として見れば」 叢雲は厳しい現実を私に突き付ける。 まるで、雷のように。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:46:10
白金桜花 @YamanekoOuka

「『わたし』は自分自身も含め艦娘を道具だと思ってる、これは前も語ったわよね?ただの『あなた』の都合のいい道具、好きなように抱き、好きなように戦わせ、好きなように浪費すべき都合のいい『モノ』よ」 急に、叢雲の口調が、普段の彼女と違うものに変質した感じがした。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:48:21
白金桜花 @YamanekoOuka

モノ扱いするべき、確かに彼女はそう言った時もあった、だが、結局の所、私にとって彼女らを完全に道具扱いに徹する事はできず、兵士扱いをするという中途半端な扱いに終わった。 モノとして扱う時もあれば、人として扱うこともある、その程度の扱い。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:50:12
白金桜花 @YamanekoOuka

「でも、だからこそ、わたしはこの指輪を、ただの性能向上の道具として見るという考えは大嫌い、反吐が出るわ。ヒトがモノへの愛の証として与えるという『都合のいい使い方』を否定するような奴は、目の前でそんな事を言ったら生きてる事を悔やむぐらいの苦痛を与えるわ」 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:52:00
白金桜花 @YamanekoOuka

叢雲が机の上に座り、私の方を向き憎悪を込めて語る、その語りは、まるで雷そのものだ。 これが彼女の本性なのだろうか、世界に対し憎悪を持つ、一人の少女、それが彼女なのか。 だが、先ほどの言葉を否定する彼女に、安堵感を私は覚えてた。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:53:47
白金桜花 @YamanekoOuka

「……これがわたしの本性よ、モノに希望を持つモノ、ヒトによりよいライフスタイルを提供するモノ、そんなわたしに、わたしが要求するモノを渡せるのかしら?」 つまりは、自分の面倒くさい面を見てもなお、指輪を渡せるか、そう彼女は問いかけている。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:54:55
白金桜花 @YamanekoOuka

だとすれば、答は一つだ。 「当たり前さ、ここまで来て、君を拒絶はしない。都合のいいモノとして、使い続けてみせるさ」 私は言い切った。 面倒くさい面を見せる、溜め込んだものを見せる、なら、私もそれに答えなければいけない。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 21:57:34
白金桜花 @YamanekoOuka

単純に言えば、この指輪を愛の証明として使えと言ったのだ。 凛々しい、どこか少年的な顔立ちの彼女だが、時たまに見せる女らしさが、非情に可愛らしい。 #地獄鎮守府の日常

2014-04-08 22:00:40
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