学名になっているアイヌ語【オオバヤナギに関する補遺】

非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

①【オオバヤナギに関する補遺】 昨日学名になっているアイヌ語としてオオバヤナギ属　Toisusu　を紹介したが、それに関連する報告を「ヤナギに関する一考察」として本田優子が北海道アイヌ民族研究センターから出していた。

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② 一読をお勧めする。確かに地方で普通の人が用いる動植物の名前と学術的な名には、それがよく知られるものであればある程大きな差がある。学名は充分な研究、分類の末ある特定な種に付けられる。その名はその種固有のものであるが、研究の進展によって別々と考えられたものが一つになったり、

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③ 一つと思われていたものが細分化されたりで過去から未来まで不変のものではない。まして日常研究者以外が習慣的に使っている名称など嫌になる程ばらばらであって、図鑑や辞書など作る場合など仕方がないから標準名を定めているに過ぎない。

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④ 例えば「ポプラ」はヤマナラシ属の木の総称的に使われる他、日本でよく街路樹などとして植えられているヨーロッパポプラ、イタリアポプラ、アメリカポプラなどを特に指しても使われる。またこの中で自分の生活する範囲でよく目にするものをそれぞれ「ポプラ」とし、他のものを

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⑤ 「ポプラの一種」、「ポプラの仲間」、「ポプラみたいなやつ」、「かわったポプラ」などなどと呼んだりする。わしにとってはイメージ的に「イタリアポプラ」が「ポプラ」で、他はそこから少し違うものという事になる。

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⑥ それと同様、toysusu　だろうが　cipsusu　だろうが、今は辞書を調べてそれぞれ「カラフトオオバヤナギ」だの「マルバノバッコヤナギ」だのとして安心しているが、実はあてにはならないという事だ。

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⑦ 方言以前に学者でもない人間が言う　toysusu　だのオオバヤナギはかなりいい加減で、それを学術的な分類でとらえきれないという事だろう。そういう当たり前の事もついつい人は忘れてしまう。toysusu　はカラフトオオバナヤギと念をおしたわしが正にその良い例だ。

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⑧ とはいえ、そういう実態を知り誤解を生じる危険性を承知した上でも、辞書的にあるものを他のものと区別するためのラベルとして区分、標準化を図らねばならない。この作業も実は古典語としての愛和辞典の記述と現代語としての愛和および和愛の記述では異なる。

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⑨ 古典語としての記述はその語の意味の広さをできるだけ詳しく述べる必要性があるのに対し、現代語ではあえてそれを無視し各語に標準的な意味を与える事になるのだから。そうしても現実の生活では標準の意味を越えた使い方がされる事には変わりない。

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⑩ 知里辞典の誤りに対する誤解として、彼が単にアイヌ古語辞典の編纂執筆をしたのではなく同時に現代語としてのアイヌ語確立も意図していた事がある。そういう視野から見てはじめて誤りとされたものが実は国語としてのアイヌ語の青写真であると気付く事になるだろう。

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⑪ そういう意味で和人が知里辞典をああだこうだ批判するのは尤もな事だが、アイヌが鬼の首をとったように和人と同じ様に内容を批判するとすれば愚かすぎる。これは彼が無謬だったと言っているのではなく、その意図を図れないない事が愚かだと言っているのだ。

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⑫ 逆に言えば彼の著述には政治的な意図も込められているので、事実はそれをさし引いたところにあるという事だ。わしの言っている事をにわかに信じられぬと思うが、彼の著作集をよく読めばいい。姉のアイヌ神謡集序文の後半部分と同じ事を彼が書いている。

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⑬ また彼の友人は生前彼がアイヌ独立論を書いていたと証言している。彼が何故ヘブライ語に興味を示していたかなど、和人社会で決して注目されることのない知里真志保の一面がある事も、少なくともアイヌは忘れてはならない。