守るべきもの -桜×藤堂平助-
雪村がろくに剣も使えない弱い者だから守ろうと思うのか、 敵から背中で隠そうとするのはなぜなのか、 自分でもわからない。 わからないから、藤堂は毎日もやもやしている。
2014-04-28 22:17:54❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*✿˚˟.‧*❀˚˟.‧*
思い立ったことは行動に移す、 気になるものは自分の目で確かめる。 好奇心旺盛で、いつも何かに胸を高鳴らしてしまう自分を、 藤堂は嫌いではない。
2014-05-07 18:43:49そうやって選んで来た道の途中で感じたいくつもの感情を、 目を背けることなく受け入れる。 過程で悩みに悩んだとしても、最後は笑顔になれる、それが藤堂平助だ。
2014-05-07 18:44:24雪村を花見に誘おうとこころに決めると、後は声をかけるだけ。 目的地や日時はそれから決める。 案件は確実に一件ずつこなして先に進めていく。 藤堂は、実は慎重なところも持ち併せている。
2014-05-07 18:44:48大抵、雪村は掃除をしているか、勝手場にいる。 そう思い込んでいる藤堂は、 近頃雪村が幹部に可愛がられ、誰かの部屋で茶を飲んでいたり、 雑談しているのを見ると、なぜか胸の奥がちくりとする。
2014-05-07 18:45:33その場に割り込んで、その腕を掴んで相手と引き離したいとさえ思うこともある。 雪村の笑顔が向けられている相手に感じる嫉妬は自覚できないのに、 雪村を笑顔にするのは自分の役割のようなものだと思っている。
2014-05-07 18:45:53事実、雪村は藤堂のことだけを名前で呼ぶのだ。 それは自分が申し出たことだけれども、 受け入れられたのだから、他の者とは別格だという思いがある。
2014-05-07 18:46:22「今日はなかなか見つかんねえな」 藤堂は先ほどから雪村がいそうなところをうろうろしているが、今日に限ってその姿が見当たらない。
2014-05-07 18:46:46「……仕方ねえ、誰かに聞いてみるか」 なぜ雪村を探しているのかその理由を聞かれたくなかった。 だから一人で見つけて、声をかけようと思っていたのに、 肝心の雪村がいないとは。
2014-05-07 18:47:08「んあ?千鶴ちゃん?見てねえなあ」 自室を開け放ってごろごろしていた永倉は、 藤堂を見るとむくりと体を起こした。 良い暇つぶしの相手を得たと言わんばかりの表情で、 真っ白い歯を見せてにやりとする。
2014-05-07 18:48:29「なあなあ、今夜あたり、島原にでも出かけねえか? たまにはねえちゃんと酒を飲むってのもいい気晴らしに……」 「ごめん、先に用事すませてからな」
2014-05-07 18:48:52「あっ、こら待て平助、まだ話は終わっちゃいねえ」 永倉の必要以上に大きな声を背中で受け止めつつ、足早に移動する。
2014-05-07 18:49:13「平助ぇぇぇぇぇ」 廊下に半分身を出して叫んでいる永倉を無視し、 次に向かったのは、池の側で猫と戯れていた沖田のところだった。 さっきはいなかった斎藤も一緒だ。 今の藤堂には手間が省けてちょうどよい。
2014-05-07 18:49:44沖田が堂々と餌付けしているのだが、沖田はそれを否定する。 諫めるために説教をしに来る斎藤は、 猫に顔を覚えられて、今や体を擦り寄せられる関係になっている。
2014-05-07 18:50:09「また猫に餌やってんの?土方さんに怒られるぞ」 声をかけながら近付くと、沖田と斎藤が揃って顔を上げた。 しゃがみ込んでいた沖田が立ち上がると、 手持無沙汰になった猫の方が斎藤の足元に絡みついていく。
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