【ニンジャスレイヤー二次創作】 帰ってきた女 #3
くそったれ、おれは何がなんだかわからないまま地べたにはいつくばった。デッガーたちは転がったおれを遠慮なくいためつけた。いやっていうほどどやしつけられた頭はがんがんするし、踏んづけられたわき腹は骨がおれたのか息をするだけでずきずきと痛む。 81
2014-02-27 23:44:4510分もするとおれはもう道端にすてられたルンペンの死体とかわらないありさまになった。まだまだ生きちゃあいるが、あと半時間もすればこの世とサヨナラできそうな具あいだった。こんなしょうべん臭い路地裏で、血まみれになってしぬ。 82
2014-02-27 23:50:01「おおくそ、死んでしまう。死んでしまうぞ」 おれは這いつくばっていも虫みたいにばたばた動きながらうめいた。 「しぬ?ニンジャがしぬだって?」 ケンドー型装甲服のひとりがわらった。 「モータルに殺されるニンジャなんて聞いたことないぞ、やっぱりお前はただのサイコ野郎だ」 84
2014-03-03 23:53:45「サイコ野郎でうそつきだ、うそばかりで自分もだましちまったんだ」 「なんだって、おれがおれをだましてる?」 「そうだよ、そもそもお前はデッガーなんかじゃない」 おれはわけがわからなくなった。おれがデッガーじゃないだって? 85
2014-03-04 23:39:39デッガーとして捜査したおぼえだってあるんだ、アンコでぼやけた頭だがたしかにその記憶はあるんだ。さいごには家族をめちゃくちゃにしてしまった、それは確かだ。けれどもおれがデッガーじゃなかっただなんて、そんなことあるもんか! 86
2014-03-05 21:06:39「そんなことあるもんか、おれはデッガーだったんだ。そこにいるおれのヨメにきいてくれ」 「ヨメだって?」 デッガー達はぞっとしない、というような顔をした。 「こいつにヨメがいたなんてだれか知ってたか?」 だれかが言った、それにだれかが答えた。 87
2014-03-07 01:22:17「アンコの毒であたまのなかがベトベトになったんだろうさ、あたまのなかでベトベトになった記憶がひっつきあってめちゃくちゃになったんだ」 おれの頭のうえでデッガーたちが口々に好きかってなことをしゃべりはじめた。その、どれもこれもが俺のしらないおれについてしゃべっている。 88
2014-03-07 01:30:47もうやめてくれ、とおれは思った。あたまがへんになりそうだ! するとデッガーのひとりが言った。 「なあ、ちょっとためさせくれよ、あんたが本当にデッガーだったかどうか」 おれはかおを上げた。するとそこには嫌な笑いをはりつけたデッガーが見えた。 89
2014-03-09 00:12:51「あんたが本当にデッガーだったっていうんなら何課だったのかいってみろよ」 嫌な笑いをはぎとってやりたくて、おれは何課だったのか思いだそうとした。けれど、いくらあたまの中の記憶のつまった戸棚をひっくり返しても、なにもでてきやしなかった。 90
2014-03-09 00:53:04おれのあたまの中にあったのは、ただデッガーだったという記憶だけで、あとは朝までのんだくれたあとの酔っぱらいの財布とおんなじにすっからかんだった。 なんだか空恐ろしい気がしてぶるぶるふるえた。なんだっておれはこのことに気付いてなかったんだ? 91
2014-03-10 22:06:13でも、きっと違うんだ。きっと毎晩ばん胃袋にながしこんだウィスキーと、のう細胞にまで染み込んだアンコが悪さをしてるんだ。 「ちがうんだ、ちがうんだ、さけとアンコのせいなんだ」 おれは頭をかかえてつぶやいた。 92
2014-03-16 22:40:59「だったらあの人がだれだか知ってるだろう」 デッガーのひとりが、おれのヨメを指さした。ひとをばかにしてやがる、いくらおれがヤク中のサイコ野郎だってわかる。 「おれのヨメだよ」 93
2014-03-19 23:26:27するとどっとデッガーどもが笑いだした。 「あの人がお前のヨメだって!やっぱり頭がいかれてやがる!」 「オハギはやめろよ、おはぎはやめろよ!こいつみたいになる!」 おれは「なにがおかしいってんだ!」と叫んだ。 すると、デッガーのひとりがおれに唾を吐きかけて言った。 94
2014-03-20 22:49:30「あの人が、ほんとうにお前のヨメだっていうなら、なまえはなんていうんだい?」 今度こそおれの中から答えはでてこなかった。いままで間違いないと確信して歩いていたみちが、ふときづくと何もないのっぱらをあるいていたのに気づいた気分だった。 95
2014-03-26 00:10:18しかもそののっぱらは、びゅうびゅうと風が吹きすさぶだけで、はてはどこにもなかった。おれが、いつかたどり着くのだとひっしで目指していたはてみたいなものは、もうどこにもないのだった。 96
2014-03-26 00:12:48「タネあかしが必要だな」 だれかが無慈悲につぶやいた。「現実からにげて、自分じしんをごまかして、だましてるんだ」「だれかがそれを教えてやらなきゃならない」「でないと死んだやつがうかばれない」「それよりもおれの怒りがおさまらない」 98
2014-03-27 00:12:42「お前はそもそもデッガーじゃない」「ただのごろんぼうのカラテモンスターだ」「3年前にカラテ虐殺事件がおきた」「捜査がいっこうにすすまないことに業をにやした捜査本部は、なにかのてがかりにならないかと、おまえをやとったんだ」 100
2014-04-03 22:49:05「だが、おまえこそがカラテ虐殺事件の犯人だったんだ」「協力者のふりをしてあらたなえものをさがしていただけだった」「最後のえものはデッガーだった」「妻も子もあるデッガーだった」 101
2014-04-05 14:53:01「妻と子?」 おれはいやな予感がした。はなしの流れからすると、このはなしはおれにとって、とてもつごうの悪いはなしになりそうな気がする。おれのうしろから、何かいやなものがひたひたと迫ってくる予感がした。 102
2014-04-05 19:43:51「いいか、よく聞けよ。気をつよくもって、しっかり聞けよ」ああ、なぜだかおれを痛めつけてるはずのデッガーがきみょうに優しくいった。 「おれが思うに、これからがおまえにとって一番ききたくないとこなんだ。でもだいじなとこだ」103
2014-04-06 01:06:52「ニッコーテンプルのボンテージドモンキーってわけにはいかないからな、しっかり聞いてもらわにゃならん」 ああ、やめてくれて。その通りだ。そこから先はおれの全部をばらばにしてしまうことなんだ。 104
2014-04-06 01:11:17「最後のエモノをなぜデッガーにしたか、おまえがそのデッガーの妻に惚れたかららしい。そしてデッガーの妻を自分の妻だと思い込んだんだ。なんでそんな事になったのかおれにきくなよ?サイコ野郎の妄想の原因なんて考えるのもごめんだからな。 105
2014-04-12 23:15:14