「人の不幸は蜜の味」

140字で紡ぐSSシリーズ 無事に完走いたしました 最後までお付き合いくださりありがとうございました
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鈴木楪 @crazy_cat8062

人の不幸は蜜の味。極上の味だという。だから、初めて私が不幸にした人の不幸を舐めてみたら、思ったよりも苦かった #一文 そうか、私に悪事はできないのか。この家をでなくちゃいけないのか。家訓を守れないなら、早く去ってしまわなければならない。今度は私が餌食になりかねないのだから。

2014-05-12 10:42:12
鈴木楪 @crazy_cat8062

周りは口々に、あたしは不幸だと言った。金持ちの家に生まれて、学校にも行ったのに安定した職には就かなかったから。うるさいなあ。幸せって誰が決めるの?自分で決めるもんでしょ #一文 返り血を浴びてしまった。口に入ったものを吐き出す。これが、あたしの幸せ。姉さんの所に、早く戻ろう

2014-05-12 10:57:53
鈴木楪 @crazy_cat8062

いつだって、叶わなかった。技術も、体力も、実践も、何もかも。自分にはないものを持っている癖に、その全てを投げ出して姿を消した。どうして、何て理由はわかってる。彼女はこの家に居られないからだ。だから、俺はただ我武者羅に頑張った。認められたくて。#締め 影さえも追えないというのにね

2014-05-12 11:36:01
鈴木楪 @crazy_cat8062

嫌な顔一つせず、暗闇に溶け込んで隠蔽作業を手伝ってくれた姉さんは、全てが終わったあとに呟いた。「海中に沈んだ色が綺麗ね」 #一文 月明かりも星明かりも、ましてや照明もないのにそう思える貴方の視力は、異常だ。異質で、あたしが欲しかったもの。その瞳があれば、あたし一人でもやれたのだ。

2014-05-14 01:20:06
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第四話] 呟いた彼女は、海底に沈んでいくものを見ながら、微笑んでいました。 少女は決して彼女を嫌いになれません。それほどに彼女の腕は素晴らしく、憎む気持ちより同業として尊敬することしかできないからです。

2014-05-14 01:24:06
鈴木楪 @crazy_cat8062

今回の仕事は上手くやれた。彼よりもできた。だけど、それでもきっと彼は認めてくれない。彼女は偉大すぎる。僕なんかが敵うはずがない。彼女なら、もっとうまくやるだろう。僕は自己嫌悪に陥りながら、ただ君の名を呟くだけしかできない。 #twnovel 呼んでも彼女が来るわけでもないのにね。

2014-05-14 13:55:56
鈴木楪 @crazy_cat8062

私が私でいられることが、一番の幸せだと思う。自分の欲望に忠実に。だから今、こうして妹と二人で暮らしている。別に誰に何を言われようと構わないけど、巫山戯た正義を振りかざす偽善者だけは許せない。だから、ごめんね? #twnovel 私は私の正義を貫く。それのどこがいけないの?

2014-05-15 02:55:03
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第六話 正義の定義] 正義は二つもいりません。振りかざすのならば消しましょう。 私の世界はとても狭いのです。近づいて来なければ、無事だったのにね。

2014-05-15 02:58:39
鈴木楪 @crazy_cat8062

姉は家訓に添えないから家を出た。けれど、それと彼女の才能は全くの別物。歴代の家系の中で、彼女の腕は疑うことなくトップに君臨している。一度だけ垣間見た、彼女の仕事ぶりはそれだけであたしの自信を喪失させた。 #twnovel そして、彼女が無意識に浮かべた表情に、身震いした。

2014-05-15 07:34:13
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第七話 緩く弧を描く] 今まで見た中で一番綺麗に微笑んでいました。 その笑顔があまりにも不釣り合いで、それと同時に彼女も一族の人間なのだと思い知らされました。

2014-05-15 07:37:26
鈴木楪 @crazy_cat8062

一緒に暮らし始めて、1ヶ月が経った。なんて馬鹿な妹だろう。こんな一族の恥曝しみたいな姉のところにいたって、一文の得にもならないのに。 ……ああ、一つだけあったね。それが目当てか。#twnovel 私の中に踏み込んでくれば、教えてあげようじゃない。長子にのみ許された、あの技を。

2014-05-15 11:53:19
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第八話 その線を越えて] もう私は一族ではないのだから、誰に教えようと勝手です。 お前が先か、それともあいつが先か、奴が先か。 それは神のみぞ知る。

2014-05-15 11:55:24
鈴木楪 @crazy_cat8062

あの人が倒れた。原因は、あれだ。今倒れたら、一族に最悪の事態が訪れることを知ってか知らずか、その人は平然とした顔で突然姿を現した。「久しぶり、父さん」 #twnovel 彼女が家を出ざるを得なかったことは知ってる。それが最良の一手だったことも。でも、それでも。恨まずにはいられない

2014-05-15 16:50:41
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第九話 あんたのせいだ。 ] 世の中にはどう仕様もないことがあることを、俺はよく知っている。 それでも誰かがどうにかしてくれるんじゃないかと、心のどこかで期待しているなんて、まるで餓鬼みたいだ。

2014-05-15 16:53:20
鈴木楪 @crazy_cat8062

「すまない……」彼がまるで懺悔をするかのように、そう言った。信じられなかった。そんな声を聞いたのは、初めてだったから。「しょうがないよ。約束は、破るためにあるんだからね」そういった彼女の顔から何かが消えた #twnovel 約束なんて知らない。彼女が何故帰ってきたのかも知らない

2014-05-16 17:58:51
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第十話 朽ちてゆく約束と君] 次の日から何事もなかったかのように戻ってきた彼女の姿に、彼は涙を流しながらも安堵していました。 それに引き換えて、彼女はあの日消した何かとともにどんどんと何かが消え去っていっているようでした。 それがなんなのか、僕にはわかりません。

2014-05-16 18:02:37
鈴木楪 @crazy_cat8062

目を覚ますと姉がいなかった。伝言板には姉の字で、実家の二文字。急いで実家に行くと、そこには車椅子の父がいて、兄さんも従兄弟もいて、その中心で姉さんが笑っている、一般家庭の幸福が広がっていた。 #twnovel この家に縁のない光景に、足が竦む。脳天に銃口がある方が、よっぽどいい。

2014-05-18 22:15:12
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第十一話 夢か現(うつつ)か幻か] 父さんがあんな風に優しい顔で笑っているのを見たことがありませんでした。 家族がこんな風に一家団欒を楽しむことはありませんでした。 姉さんがこういう風に殺気を振りまいているのが怖くてたまりませんでした。

2014-05-18 22:20:55
鈴木楪 @crazy_cat8062

家族団欒を生まれて初めて体験して、皆が寝静まった頃にそっと父の寝室を訪れる。私の気配を察知して、彼は起き上がった。入口から動かず、様子を見守る。「……本当に、すまない」彼は始めて、雫を零した #twnovel 大丈夫、私がいるのは貴方がいたから。だから私は、貴方と大切なものの為に

2014-05-19 09:32:11
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第十二話 涙と約束] 小さく嗚咽を漏らす記憶よりも小さな体は私が守らなければなりません 彼の大切な、私の兄弟たちも守らなければなりません そのために私は、家を出たのですから

2014-05-19 09:34:39
鈴木楪 @crazy_cat8062

ここ最近、決まった時間に物音がする。そして必ず、彼女が片付けている音もする。どこからか攻撃を受けているのだろう。だけど、それを彼女が僕らに知らせることはない#twnovel 僕らが彼女にとって足手まといなのは分かっている。けれど、それでも何が起きているのかは、知りたと思うんだ

2014-06-12 19:35:32
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第十三話 血に染められる] 彼女は来る日も来る日も血を浴び続けています。来るべき日の為に、それは仕方のないことなのです。 気付かれていることに気付いていて知らせないのは、彼女なりの優しさだということに、まだ彼らは気付きません。

2014-06-12 19:38:24
鈴木楪 @crazy_cat8062

一日、また一日と、奴らは近づいてくる。一歩一歩踏みしめるかのように。けれど奴らは目の前しか見えていない。足元の落とし穴には気がつかない #twnovel さあ来い、私の日常を狂わせた奴らよ。私直々に報復してやろうじゃないか。ズタズタにぶっ壊してやる。自分たちが何をしたのか思い知れ

2014-06-13 14:49:13
鈴木楪 @crazy_cat8062

[第十四話 迫り来る足音] 触れてはいけない所に触れたやつらに復讐をする。 彼らはまだ、気付いていないのです。 目の前の敵が、猫の皮を被ったライオンだということに。

2014-06-13 14:51:54
鈴木楪 @crazy_cat8062

目の前に現れた人達に、あたしは見覚えがない。連れ去られる理由も分からない。なんで、なぜ、どうして? #twnovel 油断していたから、のひと言で済ませてしまえば簡単だけど、身に覚えがないのも事実なの。あたしは何もやってないのに。そう、姉さんが何もさせてはくれなかったんだから。

2014-06-14 23:08:34