暗礁艦隊その5

その5完結。次はその6になります
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CF型マシニーカhir @hir_CF

提督は腹をくくった。 「極めて危険です」 「ではどうなさる?」 「敵泊地を撃滅します。全戦力の投入が必要です」 「ふむ。例えば疎開に出せる余裕はない…と?」 「ご存知の通り、当鎮守府は最小の戦力しかありませんので」 「分かりました。出来るだけ町民の理解を得ましょう」 #暗礁艦隊

2014-06-19 07:05:28
CF型マシニーカhir @hir_CF

町長は細かいことは聞いてこなかった。一々説明しないで済むのはありがたい。提督は逆に切り出した。 「至急調達したいものがあります」 固形燃料や木炭、可能なら石炭など、一部の艦むすの燃料や、テント、寝袋、その他諸々の物資の提供を頼むと会談は終わった。 #暗礁艦隊

2014-06-19 12:19:56
CF型マシニーカhir @hir_CF

「何も言ってこなかったわね」 普段の町長の長話を聞き慣れている山城には意外だった 「地獄の二年間を経験して生き残ってるからな、あの人らは。非常時の時間の貴重さはよく分かってるよ」 全てが片付いた後が怖いが、と続く 「何にせよ忙しくなるな。そうだ。今思いついたんだが」 #暗礁艦隊

2014-06-19 12:24:41
CF型マシニーカhir @hir_CF

「何?」 「奴ら、燃料はどうしてると思う?それだけじゃない、物資全般だ」 提督の問い。 「え?運び込んでるんじゃないの?輸送ワ級とかで」 「なら通称破壊で干上がらせられるんだが」 「他に何か…あー!」 先程の会話を山城は思い出す。 「炭?」 「ああ」 #暗礁艦隊

2014-06-19 12:29:27
CF型マシニーカhir @hir_CF

深海棲艦は何でも食う。人、機械、重油、… それらはエネルギーだったり身体の構成物質だったりと様々だが。 「艦むすが炭で何とかなるなら、奴らにも可能かもしれん」 「地上に炭焼き小屋があるかもってことか?」 隼鷹も会話に首を突っ込む。 「可能性はある。調べる価値もな」 #暗礁艦隊

2014-06-19 12:37:09
CF型マシニーカhir @hir_CF

じゃー 肉の焼ける音。夕焼け。楽しげな気配。 「おお!焼けてきたな」 ごつい男だ。アロハシャツにハーフパンツ。ここ、南の楽園でバーベキューを焼いているより古代の戦場で両手剣を手に暴れ回る方が似合うだろう。 #暗礁艦隊/ZERO

2014-06-19 21:11:49
CF型マシニーカhir @hir_CF

「それ。具体的にはどーすんの?」 隼鷹の問いに提督は、 「山中でうちの艦隊が襲われたのは、奴らのベースがあるからだろう。お前達の出番だ」 「お!ようやく仕事かい!」 ここ数日の戦闘では空母は出番がなかったが、ようやく活躍できそうだ。 「ああ。上から偵察してもらう」 #暗礁艦隊

2014-06-20 18:15:16
CF型マシニーカhir @hir_CF

「敵の基地が確認できれば、山城。お前達戦艦に砲撃してもらう」 「分かったわ。榛名と大和を連れてやればいいのね?」 「ああ。大和は無理だ、昨夜の戦闘で消費した弾薬がすぐに補充できん」 「あー」 貧乏なのは暗礁艦隊の伝統だ。こればかりはどうしようもない。 #暗礁艦隊

2014-06-20 18:25:48
CF型マシニーカhir @hir_CF

「そうですか。残念です」 牛乳パックそっくりの『おいしい重油』をストローで啜りながら大和は発言した。 次の作戦に自分が参加できないと知って残念なのだろう。 「しばらく補給は最小限しかしてやれない。目覚めて早々、ひもじい思いをさせて申し訳なく思う」 「いえ」 #暗礁艦隊

2014-06-20 19:59:58
CF型マシニーカhir @hir_CF

「で?メンバーは結局こうなったわけか」 天龍は仲間を見渡した 「夜戦バカ、龍田、オレ、浜風、霞、8…浜風、お前大丈夫なのか?」 「ええ。ご心配おかけしました」 何気に浜風は本編全エピソード皆勤賞である。負傷も多い 「そっか。尻の穴は大事にしろよ?」 「セクハラ!?」 #暗礁艦隊

2014-06-21 09:54:39
CF型マシニーカhir @hir_CF

今回の作戦は天龍達地上からの地底湖偵察部隊、潜水艦による海中偵察部隊、隼鷹による航空偵察の同時平行である。これ以上攻撃されたら耐えられるだけの体力が鎮守府にないためでもある。 「地底湖をE2、地表は引き続きE1と呼称する。では健闘を祈る」 提督の指示。艦隊が出撃 #暗礁艦隊

2014-06-21 23:25:28
CF型マシニーカhir @hir_CF

「暗いな」 山腹にぽっかりと開いた洞窟を覗き込んで天龍。 月のない夜に10km先が見える艦むすと言えども、完全な暗闇では流石にどうしようもない。 「条件は深海棲艦も同じはずよぉ?」 強大でありながら深海棲艦は意外とローテクである。暗視装置などは持っていないだろう。 #暗礁艦隊

2014-06-21 23:37:55
CF型マシニーカhir @hir_CF

「そのための電探だろ」 倉庫から何とか人数分引っ張り出してきた電探が今回の肝だ。 通常ならばレンズや反射鏡代わりに用いる艦娘の恒常空間歪曲場を利用、電波の波長を短くして洞窟内の観測に使う。精度は上がるが観測距離は大幅に短くなる。もっとも、場所が狭いため問題ではない。 #暗礁艦隊

2014-06-21 23:47:20
CF型マシニーカhir @hir_CF

何?倉庫は前回破壊された?隼鷹達が待避させたブツである。 「電探の調整は済んだか?」 「OK。川内さんには抜かりはないよ!」 「昨日の今日で元気だなおい」 川内のテンションに天龍は呆れ顔。 「私も問題ありません」 こちらは何故か10フィート棒を手にした浜風だ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 00:00:27
CF型マシニーカhir @hir_CF

「うふふふふ。まるでダンジョン攻略ね~」 「笑い事じゃねーぞ、龍田」 なにしろそのダンジョンに潜るのは自分たちだ。 「提督はダンジョン攻略得意って言ってたわ~」 「そういや自称魔法使いだったなあ、あいつ」 自称ではなく他称である。 #暗礁艦隊

2014-06-22 00:08:26
CF型マシニーカhir @hir_CF

「じゃあ出発だ」 先頭は10フィート棒を構えた浜風。次いで龍田、川内、伊8、霞、天龍の順にぞろぞろ洞窟へと入っていく。 「見えてるか?」 全員から肯定の返事。支障はないらしい。 「しかしこんな洞窟があったなんて」 「先に見つけてりゃ、俺たちの基地に出来てたのにな」 #暗礁艦隊

2014-06-22 14:44:27
CF型マシニーカhir @hir_CF

洞窟内部は想像以上に広い。その気になれば二人並んで歩けるだろうし、龍田の 槍でも振り回せそうだ。 そうして数十分。 「止まって」 霞の言葉に停止する一同。 音響の観測に霞は集中する。 「近い。二百」 皆、壁際へと張りついた。電探をオフに。息を潜める。 「五十」 #暗礁艦隊

2014-06-22 15:00:26
CF型マシニーカhir @hir_CF

全員がソナーに集中する。 電探は既にオフ。原型艦同様の赤外線装置は敵味方識別用で精度は悪いがないよりはマシだ。作動。 やがて現れたのは深海棲艦の駆逐艦か。気付かれた様子はない。 一瞬だけ赤外線照射。 槍が、刀が深海棲艦を刺し貫く。 全ては無音で進行。 #暗礁艦隊

2014-06-22 15:11:37
CF型マシニーカhir @hir_CF

「大丈夫か?」「平気です」「これどうするの~?」 暗闇でひそひそ声が交わされる。 やがて駆逐艦の死体は隅に押しやられ、移動が再開される。 分厚い岩盤と入り組んだ道は電波を阻む。無音で始末したのでまだ敵にばれるまでの余裕はあるはずだ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 20:38:50
CF型マシニーカhir @hir_CF

─上空 十二機の飛行機がプロペラを回し、悠々と空を舞っていた。 小さい。比較対照がないので分かりづらいが、ラジコンの方がまだ大きいだろう。彩雲。先日までは唯一の空母娘用偵察機だった機体である。 暗礁艦隊所属のこれらの機は、先日部隊が襲撃を受けた地域の上空を飛び回った。 #暗礁艦隊

2014-06-22 20:59:01
CF型マシニーカhir @hir_CF

迎撃は今のところない。 だが成果もない。このまま何も見つけられずに終わるか─ その時。 彩雲の一機が翼を撃ち抜かれた。 ふらふらとよろめきながら彩雲は逃げていく。 地上から砲火が上がる。迎撃であった。 直後。地表が爆発した。彼方より幾つもの砲弾が落ちてきたのだ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 21:06:20
CF型マシニーカhir @hir_CF

「着弾。修正する」 砲を微調整しながら山城。鎮守府跡は地理的には敵泊地─E1から二十㎞と離れていないため、戦艦の砲の射程圏である。仰角が足りないため山越えで撃つには高所を押さえる必要はあるが。 そして行われているのは弾着観測射撃。艦載機からのデータだけが頼りだ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 21:15:42
CF型マシニーカhir @hir_CF

E1の深海棲艦は航空機を使用できない。何故ならば、発進に必要な合成風力も、開けた前方も、山中では望めないからだ。 どうしてもというなら飛行場姫などの陸上施設型深海棲艦が必要になる。 一方の暗礁艦隊は海に面した地形にいる。艦載機など発進し放題だ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 21:41:36
CF型マシニーカhir @hir_CF

反撃に転じた時点で深海棲艦に勝ち目はなかった。上空からの観測に基づき、山向うから砲弾が飛んでくるのだ。反撃のしようなどない。 「……クリア。隼鷹、偵察を続けて頂戴」 「あいよー」 山城へ隼鷹が無線で答える。 彩雲への反撃は大人しくなったが当然それで終わりではない。 #暗礁艦隊

2014-06-22 23:18:51
CF型マシニーカhir @hir_CF

彩雲がローラー式に地表を観察する。 艦載機と視界を共有する隼鷹は、念入りに不審な場所をチェック。 「こいつは退避壕だねぇ。隠れてたんだな」 対空砲火のあった場所を確認し隼鷹は呟く。 「うん?ありゃ洞窟か」 考えてみれば燃料を作ったとして、基地に搬入するルートが必要だ。 #暗礁艦隊

2014-06-22 23:27:38