鳥に纏わる掌編~空想の街にて/氷涼祭2014

#空想の街 企画「氷涼祭」における #鳥に纏わる掌編 および #籠屋 周辺のまとめ。 何かありましたらお気軽にどうぞ。
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chi-suke @ChiKomiya

さっさと行くぞ、と鳥屋は歩き出す。「待ってくれよ何だかこの辺りいい匂いがすんだものー」情けない声の籠屋に、この辺りは飯屋が多いからなとだけ言って鳥屋はきつね橋を渡る。籠屋の飯の面倒まで見てはいられない。視線の先には時計台が聳えている。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 14:31:05
chi-suke @ChiKomiya

「あ、しろいからす」「からす」「あ、おひよさん、つまづいた、ね」「ね」時計台の時計盤の下に、少年が一人座っている。その肩にもう一人、小さな子どもが腰掛けていた。「あ、きたよ!」「きた!」南を指さして微笑み合って、二人は飛び立った。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 14:32:41
chi-suke @ChiKomiya

じゃあ俺はここまでだ、と鳥屋が立ちどまる。「何だよつれないなぁ」とか何とか言っている籠屋に手を振って背を向ける。時計台を仰ぐと、一体どこから見ていたのやら、少年と鳥がふわり、と舞い降りてきた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 17:26:51
chi-suke @ChiKomiya

「……あんれま」鳥屋の姿を追っていた籠屋はぽかりと口を開けた。あいつ何時の間にあんなでかい子どもをこさえたのやら。ま、それは置いといて。籠屋は天秤棒を肩から下ろし、商売の準備を始める。 #空想の街 #籠屋

2014-07-04 17:27:34
chi-suke @ChiKomiya

一枚の敷布を広げ、そこに商品を並べていく。布包みの中から出て来るのは、鳥籠をあしらった首飾り、簪、根付等々。箱の中から取出したのは、実用向きの精巧な鳥籠。――さてさて。腰をおろした籠屋は煙管と煙草入れを取出して一服と決め込んだ。 #空想の街 #籠屋

2014-07-04 17:28:24
空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

今年もワタリが終わり、氷涼祭が始まりました。風船の準備はできましたか?明日は一日晴れ、夕方に銀氷が降る予定です。銀氷で濡れることはないですが、空を飛ぶ方は気を付けてくださいね。(情報窓口:堂坂みかこ) #空想の街

2014-07-04 18:01:04

鳥屋、 #街商 のジロさんから風船を買う

chi-suke @ChiKomiya

よ、元気みたいだな。声を掛ける鳥屋にふたりが飛びついた。ちょっ、こら、という声も聞かない様子で少年はぐいぐいと腕を引っぱって行く。鳥は肩口でちいちいと囀っている。何なんだ一体。呟きながら鳥屋は落ちそうな帽子を片手で直した。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 18:03:58
chi-suke @ChiKomiya

ぐいぐいと引っ張られて行く先に、見覚えのある顔。お、あんたは。 @rullino_s 「じろさんこんにちは」「ふうせん!」少年と鳥の顔は喜色満面といった様子だ。なるほど、これが欲しかったわけか。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 18:01:17
すなお@創作 @rullino_s

舌ったらずな声で名前を呼ばれた、と思ったら、「…お、鳥屋」見知った顔、とはいえ主人は完全に引っ張られて来た様子だった。小さい存在に名を覚えていて貰えるというのは妙に嬉しい。「こんにちは。なんだ、どんな風船が欲しい?」 @ChiKomiya #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 18:42:43
chi-suke @ChiKomiya

@rullino_s 「とり!」という声がふたつ。ほら、膨らますと鳥の形になる風船とか、そういうの、ないか。鳥屋はどこか恥ずかしげに問いかける。見れば相手は中々粋な浴衣姿。よく似合ってるよ、と男から言われても嬉しくないだろう言葉を掛けてやる。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 18:50:04
すなお@創作 @rullino_s

「良い浴衣だろ?」歳の近い同性から褒められると気分がいいものだ。ゼリービーンズを思わせる形の青い鳥風船を膨らませ、更に黄色い鳥のバルーンアートも作って、小さな二人に手渡した。 @ChiKomiya #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編 pic.twitter.com/rJPE9cT9WI

2014-07-04 20:30:42
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chi-suke @ChiKomiya

@rullino_s こりゃ凄い、上手なもんだな。鳥屋は感嘆しつつ風船の鳥を指先でつついた。風船に攫われるなよ、と無邪気にはしゃぎまわる二人に言って、そうそう、その浴衣でいい女でも引っかけてみなよ、と冗談めかしてみた。ついでに俺用に白い風船でも。 #空想の街 #街商 #空想の街

2014-07-04 20:49:47
すなお@創作 @rullino_s

いい女、か。「あんたには前もそんな事を言われた」笑いながらシンプルな白い風船を見繕う。「この時期だぜ、妖艶な美女を捕まえたと思ったら白鴉のワタリと一緒にあの世に帰って行かれたんじゃ堪らん」「違いない」今度は鳥屋も笑った。 @ChiKomiya #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 21:03:59
chi-suke @ChiKomiya

@rullino_s そういえばそうだったか――地に足のついてない女も時には乙なもんだがね。いや、時には、の話さ。ありがとよ、それじゃあまた。白い風船を受け取って片手で少し帽子を持ちあげる。二人の子どもが手を振った。 #空想の街 #街商 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 21:17:06

鳥屋、ふたりの棲みかへ。

chi-suke @ChiKomiya

二人に連れられて来たのは蓮根橋の袂にある古い小さなアパートだった。へえ、ちゃんと暮らせてるんだな、と思っていると何故か二人は屋根へと上がって行く。こっち、と招かれたのは屋根裏部屋の窓だった。――俺にそこまで登って来いと。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:37:52
chi-suke @ChiKomiya

何とかよじ登って窓から室内に入り込む。中は思ったよりずっと快適そうで、特に不自由なく生活が営めていることはひと目で解る程だった。しかし、入口があの窓だけというのは何なのか。人間相手の住まいじゃないのか。大家のことを想像しかけて止めておく。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:39:30
chi-suke @ChiKomiya

とりやさん、きもの。何時の間にかそれなりに言葉を覚えたらしい少年が袖を引っ張る。ああそうそう、と鳥屋は片手に持っていた風呂敷包みを開ける。二人が小さく歓声を上げた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:48:55
chi-suke @ChiKomiya

お前にはこれ。少年に渡すのは縹色の地に白く波千鳥模様を染め抜いた浴衣だ。若干渋すぎる気はするが、柄自体が大ぶりだから可愛く見える筈だ。肩上げ裾上げをしているから、もう少し位大きくなっても大丈夫だろう。合わせるのは薄黄が水色へと移り変わる兵児帯だ。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:52:19
chi-suke @ChiKomiya

お前は小さいからな、と取り出すのはまるで人形遊びに使うような小さな浴衣。白地に薄い紅に色付く花を大きくあしらったものだ。背中に一羽、飛ぶメジロが描かれている。淡い緑の帯を合わせてやりながら、大きくなったらまた同じ柄で誂えてやるよと笑いかけた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:53:49
chi-suke @ChiKomiya

「とり、」少年が千鳥柄の一羽を指さす。ああ、それは千鳥だ、と鳥屋は教えてやる。「ちどり……」呟いて少年はにこっと笑った。「とり!」今度はメジロを指さす。メジロ、な。お前らみたいに花の蜜が好きな奴さ。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:55:14
chi-suke @ChiKomiya

「ちどり!」少年が自分を指さして言った。は?と聞き返すと、今度は「めじろ!」と相方を指さす。少し考えて、ああ成程ね、と鳥屋も笑った。そうか、不便だったよな。いいんじゃないか、ちどりとめじろ。お前たちらしくて。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:56:17
chi-suke @ChiKomiya

「めじろ、だよ」「め、じ、お?」「ぼく、ちどり」「ち、お、い!」飽きもせずにお互いの名前を呼び合っている二人を横目に、鳥屋は窓から外を眺める。何とも素敵な夏の夜だ。帰ってくる死者とやらも良い気分だろう。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-04 23:59:39
chi-suke @ChiKomiya

ふと鳥屋は思う。「もうあえないひと」など、自分にはいただろうか。余りに心当たりがありすぎて思い出せないだけなのかもしれない。それにあちらさんが逢いたくないか――そんなことをつらつら思う目の前で二人が浴衣に袖を通し始めた。待て待て、着方教えてやるから。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

2014-07-05 00:01:50
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