不知火に落ち度はない その8

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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yamoto @yamoto

「じゃ、お返しな。湯飲み貸せ」 手が伸びてくる。 抵抗しようとした──が。 「ま…待って……っ あっ!?」 あっさりと奪われ、首に手が回された。 鳥肌が立つ。 こんな状況望んでいないのに。 そして遠慮なく、唇が押し当てられた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:38:39
yamoto @yamoto

必死で抵抗する。 唇を強く閉じて。身体をこわばらせて。 唇を舌で丹念になぞられる。 歯を一つ一つ愛撫されている。 じわじわと溶かされていく。 体温に、抵抗が奪われる。 何故、こんな時に髪の毛を撫でてくるのだろう。 力がどんどん抜けていく。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:42:19
yamoto @yamoto

そして陥落する。 飲まされて──でもそれだけで終わってくれなかった。 舌を吸われ、音が蹂躙してくる。 絡む舌の感触に──どこか覚えがある。 どこでかはわからないが、身体が覚えている。 こうされると不知火が──まったく抵抗できないことを。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:47:04
yamoto @yamoto

舌を啄み、唾液を吸われ。 押し流されて、交換された唾液を飲み込む。 酒と煙草の匂いでむせ返りそうになる。 それでも喉が鳴った音に自分で気づく。 本でも、陽炎の話でもこんな事は聞いたことがない。 ただのキス一つで身体が燃え上がるなんて。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:52:28
yamoto @yamoto

熱病のように身体が火照り、思考が鈍化する。 同時に痛みも襲い来る。幹部は胸の奥深く。 だって──司令が抱いているのは。 あの快活な、しかし大人の雰囲気を同時に携えた女性が思考の裏側で笑う。 『私は、司令とこういう関係だ』 そうはっきりと教え込まれる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:57:35
yamoto @yamoto

『だからお前におこぼれをあげよう。遠慮しなくて良い、仲間だろう』 痺れる。脳の奥がじんと痺れてくる。 目に涙がにじむ。 身体の火照りは全然収まらない。 自分でも舌を絡めだしていることに気づく。 浅ましさに自嘲しながら、それでも唾液を舐め取る。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 00:59:52
yamoto @yamoto

唾液を甘く感じる。酒と煙草が混じってる匂いのはずなのに。 触れられている場所が溶けてしまいそうなほど熱い。 夢見心地のように感じないのは胸の痛みのせいだ。 戦闘訓練で痛みに耐性はあったはずなのに。 深く刃物で傷つけられたように、胸の奥がじくじく痛む #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:12:45
yamoto @yamoto

そしてようやっと、唇が離される。 甘くて痛い、天国のような地獄から解放される。 ぼうっとした頭で、かかる唾液の橋を他人事のように見ていた。 息をするのを忘れていたらしい、今更ながらに呼吸が苦しくなっていた。 「今日は随分おとなしいな」 ──長門。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:23:49
yamoto @yamoto

ながと。ながと。長門。ナガト。ながと。 自分の名前ではないだけで、ここまで心が切り刻まれるのか。 どうして、自分の名を呼んでくれない? もう気づいているのでは。 しかし、司令は──まだ酒の夢から目覚めないらしい。 「そういうのも新鮮だけどな」 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:29:19
yamoto @yamoto

言うと、布団に押し倒された。 身体の上に暗い影が下りる。 どうしてだろう。 いつかこうなることを望んでいたはずなのに。 なぜ、どうして。 涙が──出るのだろう。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:35:23
yamoto @yamoto

「……長門?」 違う。 「おい、どうした」 違う。 「具合でも、悪いのか?」 違う。 不知火は──長門じゃない。 だからそんなに、優しくしないで。 涙が後から後から流れてくる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:40:53
yamoto @yamoto

「なんだ、マドンナ。元気ねーぞ」 違うの。 それは長門の名前。 「しょうがねーな」 身体が被さる。 もう、何をされてるか分からない。 長門の代わりなんてしたくない。 どうしてあの時、不知火は──長門と偽った? これはその罰なのか。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:47:01
yamoto @yamoto

「お前乙女心──たまに出すからな」 知りたくもない。 この腕の中で何をした? 何日間、何ヶ月、何年。 そんな表に出ない関係を続けた? それを詳らかにされていく苦痛は何よりも強い。 腕にすっぽり包まれる。 安心感を覚えるはずなのに針のむしろだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 01:53:13
yamoto @yamoto

「珍しいじゃないか。まるで」 ──不知火みたいだ。 その一言が口から漏れて。 それが発火点となる。 「そうよ。不知火だもの」 自分にこんな声が出せたのか。 それぐらい低い声が出た。 おおばかものだ。 女を抱いてるときに、他の女の名を出した。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:01:44
yamoto @yamoto

え──? と。 司令が目をしぱたかせる。 だが、もう許さない。絶対に許さない。 何をどうして間違えたかはどうでもいい。 不知火は不知火だ。長門ではない。 思い切り、唇をぶつけてやる。 歯がガチン、とぶつかる音がした。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:12:37
yamoto @yamoto

「いっづ!!」 司令の顔が仰け反った。知った事じゃない。 さっきまで、さんざん好き放題してくれた。 ──今度は不知火の番よ。 もう一度ぶつけるようにキスをする。 今度は腕を絡めて絶対に逃がさない。 がつん、とぶつかって、口に鉄の味が少しする。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:17:06
yamoto @yamoto

少し口の端が切れたのかも知れない。 どうでもいい。さっき舌を吸われて唾液を交わした。 長門と──である。 そう、幻であり、本当は不知火であったとしても。 司令は長門とキスをしていたのだ。 そんなの絶対に許せない。 むかっ腹と共に吸い付き、舌を絡めた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:19:29
yamoto @yamoto

獣のように食らいついて。 獣のように熱を交わして。 およそ、人との交わり方じゃない。 そんなことはわかってる。 でも腹がとことん立ったのだ。 側にいた相手の事まで、酒で押し流した彼に。 ──不知火は怒ってるんだから。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:26:16
yamoto @yamoto

鉄の味が舌の上で散る。粘度の高い唾液が絡まる。 甘いキスじゃない。焦げた感情を元にしたキスだ。 くすぶった思いをたっぷり塗りつけてやる。 司令は──見ろ。 目を白黒させている。 お前だったのか、とでも言いたいの? そうよ、不知火だったのよ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:29:09
yamoto @yamoto

そうして、満足するまで戸惑いを味わいきって。 どん、と肩を押して突き放す。 「お目覚めですか、司令」 笑ってみた。 切れた口からしたたったものが、唇を薄赤く染めていた。 血化粧が──少女の花を咲かせていた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:40:43
yamoto @yamoto

「不知火にここまでしたわけですが」 顔を近づける。 司令は何が起きたか分かってない。 理解させよう。 浴衣の合わせに手をかけ── その纏った上部分を脱いで見せた。 するりと。 なだらかで、大人の女にはない、 蠱惑的な少女の曲線が露になった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:48:08
yamoto @yamoto

「続きはどうしますか」 司令は、それでようやっと理解した。 自分がとんでもないことをしでかしたと。 彼は苦虫の煮汁を飲んだかのような顔つきになり。 「悪かった。しまってくれ」 手を伸ばして、服の裾を押し上げた。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:50:33
yamoto @yamoto

やばい。 とにかくやばい。 なにがやばいって。目の前の不知火がやばい。 何だ俺、何してるんだ俺。 つーか脱ぐなしまえ不知火。浴衣の下の下着はどうした。 「あーっと。あのな」 「弁解は手短にお願いします」 しまって。 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 02:56:54
yamoto @yamoto

「えーっと。すまん不知火」 「何故謝るのか理由からお願いします」 だからしまえって。 見えていいもんじゃないぞそれ。 「なんとなくつったら?」 「えい」 するっと帯が外され、そのまま場外OBである。 おま。 何してんの? #不知火に落ち度はない

2014-07-17 03:08:34
yamoto @yamoto

「不知火は別にこのままでも構いませんが」 「気に入らないからって脱ぐなお前」 手を伸ばすと、捕まれる。 「勝手に触らないで下さい」 断りが要る状況じゃねえだろこれ? 「あー。じゃあ触って良いか」 「胸、唇限定でどうぞ」 「お前今酔ってるだろ?!」 #不知火に落ち度はない

2014-07-17 03:13:50
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