二日目、昼・夜 - 空論限壊

昼は「07/22/22:00」から「07/26/22:00」まで、夜は「07/26/22:00」から「07/30/22:00」までの記録です。
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アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

伸ばした手は空を掴む。〈黎明〉の身体が傾ぎ、ゆっくりと崩れるのが見えた。 背に当たった感覚に押され、何歩か駆け下りる。 すんでの所で正面から〈黎明〉の肩を押さえ、彼が頭を打つことを避けた。 崩れた身体は腕ひとつ分軽い筈なのに重く、押されて背後の螺旋に座り込んだ。

2014-07-23 19:59:22
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

崩れ落ちる体。訪れるかと思われた固い感覚はもたらされず、代わりに感じたのは柔らかさ。 階段に突く膝から、痛みは感じられなかった。感じていては、とうに動けない。触れた頬からさえ、もう熱を感じないのだから。 他者に凭れるだけの罪悪感はあれど、咄嗟に離れるだけの反応は残っていなかった。

2014-07-24 07:32:30
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

「私、は……」 至近にいるにも関わらず、その声は微かだった。左手が揺らいで。 胸元に翳される、銃口。 それは、震えていた。当然ながら、命を奪う事への忌避感からではない。男は既に、奪いすぎていた。この距離であればどこを狙うべきか、咄嗟に向けられる程に染み着いている。

2014-07-24 07:45:33
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

されど咄嗟に構えるだけの力は、残っていなかった。 遺されたのは、ただ。 「……帰る、のだ」 ――『人間は、嘘を付く』 ――私は嘘を付かぬと、教えてやらねばならない。 ――『私はまた、一人になってしまった』 ――私が覚えている。想う限り独りになどしない。 心を動かす、一念。

2014-07-24 07:54:40
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

男は、約束を違えない。 違えては、かつて彼女と結んだ約束まで、嘘にしてしまいそうだから。 向ける蒼の瞳は、虚ろめいていた。その瞳が正確に像を結んでいるのかさえ、危うく感じられる程に。 震える銃口。 引き金に指がかけられたまま、鋼獣の顎は、その胸元をさまよっていた。

2014-07-24 07:59:30
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

預けられた身体から酷い熱を感じる。多くの傷、焼け焦げた跡。 か細い声は『帰る』と言った。 胸に向けられた黒い鉄。恐らく、これが〈黎明〉の武器、なのだろう。 震える黒鉄。〈黎明〉の唯一残された手に片手を重ねる。 「もしかしたら、こんなことをせずとも帰れるかもしれないのです」

2014-07-24 12:30:15
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

「あなたが、こんな状態で、無理をしなくても」 どうやって意識を保っているのかさえ不思議な、傷。 『帰る』ただその一点の意志によって、歩き続けているのだろうか。 「無理をしても、続きません」 窓から入り込む昼間の光に目をやる。 「まだ、今日は長いのだから」

2014-07-24 12:34:01
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

「帰れる、だと?」 その言葉に、落ちる驚愕に、その眼が微かに開かれる。 馬鹿な。有り得ない。この異境から戻ることが出来るのは、色を淘汰した者のみ。他色を全て滅したものだけだと知っている。それしか、私は″知らない″。 嘘を吐いているのだと思った。欺き、虚を突かんとしているのだと。

2014-07-24 23:45:35
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

だが――それは、違う。 「……そんな術が、あるのか」 左手。重ねられた掌は、もう何も伝えないが――何故か、理解出来た。 この者の言葉に、偽りはないと。 だが。 「後ろの者も、お前の術に協力するというのか?」 重なる掌から、外す左手。肩越し、巡らせた銃口が、背後の少女へ向けられた。

2014-07-24 23:45:35
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

「私は、〈大地〉、アルデフィーダ。私の力は『繋ぐ』こと、です。 その、この世界に、違和感があるのです。ほつれ、のような。上手く『繋ぐ』ことが出来れば、もしかしたら……」 (……けれど、一度夜を越えるまで気付けなかった) 彫像のような顔に、ひそやかに眉を寄せる。

2014-07-25 00:27:42
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

「『生きること』と『殺すこと』の差がなくなり、一つしかないものを奪い合うような世界は、悲しいですから」 ―『あんたは甘い』 こちらに呼ばれてから何度も言われた言葉を思い出す。 「……私は、甘いのでしょう。けれど、殺めるより可能性を。 記憶の混濁の向こうに、鍵がある気がするのです」

2014-07-25 00:40:11
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

「後ろ……あ、」先程背に当たった感覚と、〈新緑〉の少女が結びつく。 外され、空を切った手のひらをばつが悪そうに握りこむ。 「ええと、……その、これを口に出すのが、今が初めてで……」 『希望が見えた瞬間、それを追うことで頭が一杯になった』とは流石に言えず、視線を外した。

2014-07-25 00:44:19
ライハーネフ(四の新緑) @alterna_green

覚醒は束の間。衝突から後ろに傾いだ体を揺り戻す動きと共に、意識は微睡みだす。途絶えなかったのは不安定な足場と、集う視線、響く声、向けられた鉄塊と、その先端に佇む虚無の穴故か。浅く開かれた瞳に【新緑】を覗かす少女は、すん、と鼻を鳴らし。

2014-07-25 13:13:30
ライハーネフ(四の新緑) @alterna_green

「くしゃい」ここに至りようやく口を開く。周囲に漂う戦の名残、鉄の臭いに塩の臭い。屋上で【ライハーネフ】となった彼とも違う臭いに少女は鼻頭をむず痒そうに擦り。うー、と唸り声に似た声を洩らす。「アルデフィーダ」眼前、【黎明】を支えるものの名を呼び。「洗濯するなら水場があったよ?」

2014-07-25 13:19:04
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

向けた銃口。借りた肩を支えに補正したブレ。いかに疲弊していようと、この距離では決して外さない。そうした緊張。敵味方さえ未だ判らぬ少女に対して向けた敵意は――あまりにも拍子抜けした言葉に、かき消される。 唐突な言葉に、不明する思考。なんだアレはと、支える者へ選択と回答を譲り渡して。

2014-07-25 21:34:46
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

沈黙を保っていた〈新緑〉は、〈黎明〉を臭い、と単純に指摘する。 〈黎明〉からは、皮膚や髪が焼け焦げた臭いに、死臭とまでは行かぬものの、酷い血の臭いがしていた。 「……確かに、この傷をそのままにいておいては癒着してしまうので、洗った方が良いのですが、」

2014-07-25 22:13:33
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

言葉を切り〈黎明〉の様子を伺う。 気を張っているのが分かる。彼の四肢はいまだ緊張の糸に繋がっている。 「あの……まだ、歩けますか? 『水場』は恐らく下階の方、です」 仮に彼が歩けないとしたら、どうやって運んでいけばいいのだろうと考えた。現状でも、半ば座り込んでいるのに。

2014-07-25 22:16:01
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

右腕、完全にその形を失った右は、凄惨な有様とは裏腹に、傷としての進行度は低い。断面が丸ごと焼け焦げているのだ。浮かぶ血滴さえ、その表面を薄く固めるのみ。 だが全身の擦過、裂傷はそうはいかぬ。口より溢れるものに比べれば些細なものだが、一歩進むごとに命を目減りさせる事に変わりなく。

2014-07-26 07:06:56
ドーン【二の黎明】 @coulomb_dawn

「要らん心配だ。気にするな」 それでも不要と、男は断ずる。損傷や汚濁を省みている状況ではないと。 故に男は立ち上がる。次の行動を起こすべく、両の脚に力を込めて―― ――そのまま、もう一度倒れ込んだ。 思いと肉体の乖離は男の想像以上。一度座り込んでしまったが故に、男の体は動けない。

2014-07-26 07:11:34
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

〈黎明〉の脚に力が入る。滲む血が濃くなる。見えない所に、多数の傷があるのだろう。 支えが軽くなったかと思ったのも束の間、すぐにもう一度同じ場所へと。 再び、〈黎明〉を支えながら首を巡らせる。背後の〈新緑〉の少女を見る。 衣装を変えた彼女は、眠そうに瞼を半分閉じていた。

2014-07-26 13:40:21
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

「……手を、貸してくれませんか。どうにも、私一人では動けないのです」 花の名を持つ少女も、どう見ても非力。 ここは、道を繋いでしまうのが良い、とは分かっている。 だが、見えてしまったのだ、幽かな希望が。その為に、今、道を繋ぐ事は選べなかった。

2014-07-26 13:40:47
ライハーネフ(四の新緑) @alterna_green

んぅ、と瞼を瞬かせる。 かけられた声に応えたのか、両手で頬を幾度か叩くと瞼はようやく開ききった。 「いいよ、でも、いいの?」 問いに連なる問い、それはこの場の規則故か、少女の感性故か。 軽快な足取りで二人の背後に回り込むように階段を下りると、【黎明】の腰を抱えるように腕を回す。

2014-07-26 22:40:24
ライハーネフ(四の新緑) @alterna_green

重いものを持ち上げる様な、何かを引き抜く様な動き。 青年の体は少女には重く、それは切っ掛けにしかならないだろう。 少女の背後には階下へと降る螺旋、一度バランスを崩せば転げ落ちかねない。 階下、点滅する室内灯が立てる爆ぜるような音と、遠く水が滴る微かな音が聞こえる。

2014-07-26 22:45:13
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

『いいの?』の意味が分からず、暫し逡巡する。 『この場で殺さないでいいのか』という意味か、とやっと思い当たった時、やはり自分は甘いのだろうと痛感した。 「……ここで、彼の肩を少し強く押しさえすれば、私は生きられるのでしょう」 かかる重さが軽くなったのを感じた。

2014-07-26 23:00:29
アルデフィーダ【五の大地】 @al_Daichi

〈黎明〉の残された腕をどうにか肩に担ぎ、立ち上がらせる。 「私は、時間の許す限り、世界のほつれから脱出する方法を探したいのです」 思った以上に、早く訪れた夜を想い、慎重に歩を進める。 「……絵空事なのかもしれません、それでも私は、その綺麗な絵空事を信じてみたいのです」

2014-07-26 23:02:42
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