熊の出る地名

『角川日本地名大辞典』(1978年-1986年刊行)を逐一開いてはクマから始まる地名について調べていきました。
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発端

@No37304 さんのtwから

№37304 @No37304

「熊」って付く地名は、マジで熊が出た場所なんだろうか

2014-07-24 23:41:15

暇だったのでフォロワーでもないのに噛み付く

お名前はありません @tobahohoh

熊野の場合は熊野氏が赴任したとかでそんな地名に RT @No37304: 「熊」って付く地名は、マジで熊が出た場所なんだろうか

2014-07-25 00:20:20
お名前はありません @tobahohoh

@No37304 熊野古道の熊野や広島の熊野町に関しては調べたことがありませんが, 私の生まれ故郷の熊野という地名の由来はそうでしたね。元を辿れば熊野と関係あるかもしれません。そもそもなぜ熊野なのかは知りませんが...。

2014-07-25 00:28:28
お名前はありません @tobahohoh

@No37304 たしか能の演目にも熊野というのがありましたが, それにこじつけた地名もありそうですねw

2014-07-25 00:29:50

なーんか適当なこと言ってんなおれ, と思ったので, リアルで暇になったのを見計らって図書館で調べてみた。

すると...

更に適当になった(おい
調べた範囲が狭すぎたうえ, 資料の見比べという方法を取らなかったので, 自分でも苛々するほど適当になった。

自由研究のテーマ

「日本の地名でクマの音が付くものの中で, 熊が出現したことに由来する地名はあるか」

方法

イ) 地元図書館のレファレンスブックコーナーへ行き, 適当な地名辞典を見繕った結果, 日本の地名を総覧し, かつ比較的詳細に言及したものとして有名・盤石な『角川日本地名大辞典』(1978-1986年刊行)を使用し, 網羅的に検索する。
恣意的なものになった。

ロ) 補助ツールとして他のレファレンスブックを用いる。また, 適宜ネットでも検索を行う。
→辞典がネットにも上がっていたことを知ったのはまたあとのおはなし。

ハ) かつて存在した地名, または地名でなくても辞典に記載されている名称に熊が出現したものを由来とするものがあれば, 取り上げる。尚, 由来に諸説あるものでもそのうちの一説に熊が出たことを由来するものがあれば取り上げる。

反省点

  • 時間が掛かり過ぎた。当初は3時間ほどで済む予定であったが, 5時間掛かることになった。なおかつ, 時間が掛かった割に瑣末な情報しか導きだすことが出来なかった。
    →次はteamworkというものを大事にしていきたい

  • 『角川日本地名大辞典』だけしか用いてないので, 情報に偏りがみられる。同書は詳細かつ網羅的に地名を扱った有用な書であるが, 地名に関して必ず詳細に論じているというわけではなく, 中にはまったく由来の解説がないものも多く存在する。

  • それでも正確には「先頭に熊が付く」地名しか調べられていない。大隈のように語末, 中間にクマを挟む地名も相当数あるはずだが, これらに関しては調べられなかった(時間がなかった)。また, 同書には今回主に参考にした地名編のほか, 地誌編も存在しており, 少なからず地名由来に言及しているが, 扱わなかった。言及されている地名は現在も存在する, もしくは比較的規模の大きな地名が中心であり, 今回の調べ物では用をなさないと考えたからである。もし地名編に言及されず, 地誌編にのみ熊が出たとする地名由来が掲載されていたとすれば, 謝るほかない。ごめんちゃい。

  • 同書は昭和期に刊行されたものなので, 平成期に新たに創設された地名に関しては言及されず, また現在存在している地名かどうかの確認も行っていない。折しも平成大合併の前に刊行されている事実を踏まえると, 少なからぬ地域が消滅していることが考えられる。また, 刊行後の地名研究による事実も踏まえていないことから, 諸説あったものが一本化され, 異説は斥けられ, 新説が登場したことを見逃している可能性も考えられる。
    →あとはまかせた。

※ 表記に関して。比較的長時間立ちっぱなしでの作業だったので, 集中力が幾分摩耗しており, 当初は「クマ」としていた表記が「熊」になっている場合があります。また, 地名に関してはルビを振ってますが, ヘボン式のローマ字表記で, tw末尾のハッシュタグもヘボン式で表記しています。
あくまで表面上の記載をなぞるという作業になってしまったので, 至らぬ点が多々見られると思いますが, 生暖かい目でスルーしていただけると, 幸いです。

※ tw表記例

  1. 地名 - 所在 - 由来 - #都道府県名 - #kuma
  2. ○○県該当なし - (エピソードなど)- #都道府県名 - #kuma

結論

存在する。
しかし, 以下に示すように熊が出たとする説は地域的に一様ではなく, 一部の地域にまとまって存在するということもあまりないようである。熊が出たことに由来する地名では, 熊が実在の熊である場合と, 半ば伝説の上での熊(=「勇者」に殺される)の場合とがある。これは, 常識的に熊が出るようなところに人がわざわざ住まないことを表しているようで面白い。

お名前はありません @tobahohoh

岩手郡松尾村熊沼。十和田八幡平国国立公園内に所在。クマが出ることに由来。名称の通り, 沼である。#iwate #kuma

2014-07-29 15:08:34
お名前はありません @tobahohoh

熊淵(kumanofuchi)。由来は洪水で上流から熊が流れてきたためとも, 流木が集まって回っている淵によるとも言う。#akita #kuma

2014-07-29 15:19:45
お名前はありません @tobahohoh

熊ノ木(kumanoki)。地名の中央部のある権現山で数多の熊が棲息し, 田畑を荒らすのでこれを射抜いたところから熊貫と称され, それが転訛して成ったという。#tochigi #kuma

2014-07-29 15:44:07
お名前はありません @tobahohoh

熊谷(kumagaya)。熊谷次郎直実の父直貞が大熊を退治したとする説の他, 高城明神が鎮座したとする神谷(kumakeya)を元とする説, 地形の曲谷(kumagaya)を意味したとする説がある。#saitama #kuma

2014-07-29 15:50:32

注)地名に熊の付く由来としては, 「曲」の他にも「隈」,「神」, 「球磨」などがあり, 特に「隈」に関しては厄介だった。言葉の意味が多義的で, 陰を指す, 境界を表す, 平らな地を指す, などとあり, 判別しにくいのである。本来の語の意味内容の違いに加えて地域的・方言的な差異もあって, 何を由来とするかは議論の紛糾するところであろうことは想像に難くないが, ここではあくまで表面上の由来をなぞることにしておきたい。

お名前はありません @tobahohoh

熊出(kumaide)。坂井川支流熊出川流域を指す。熊が出没する山村であったので地名が付いたという。 熊堂(kumadou)。応仁年間に山名氏の家臣が当地に来て開墾, 村民に害をなす大熊を仕留め, 熊に因んだ熊野神社を勧請したことによるという。#niigata #kuma

2014-07-29 16:07:13

誰それが熊を射抜いたとする説話由来の話は地名伝承に多いが, ある人が何処其処に来たためにその地名となった話も多い。

お名前はありません @tobahohoh

熊野(kumano)。能登半島北部, 河原田川中流の右岸に位置する。熊野神社の名に因むとする説と, 熊が住むことによる説とがある。#ishikawa #kuma

2014-07-29 16:18:57

熊を冠した地名の中で圧倒的に多いのが「熊野」であり, 熊野神社をその直接の由来とする話が多い。熊野でなくとも, 熊が付いていればなんでもいいらしく, 熊野神社にあやかって, その地が神社の近隣にあるために「熊〜」とする地名も数多く見受けられた。
また, その逆で熊と関係あるから熊野神社を建てたとする話もあり, 面白い。熊野信仰に関してはほとんど全国的に見られることのようであり, 本書を読み進めていく中で, どうやら12世紀頃には九州まで熊野信仰が行き渡ったようであるとの知見を得た。紀州の熊野三社に由来するものであろうが, 『コンサイス日本地名辞典[第4版]』に拠れば熊野神社が出雲国の熊野大社に拠るものとする説もあるらしく(出典不明), 難儀なことになっている。真相を誰か教えて...。
熊野神社もそのままの名称ではなく, 熊神社とするものもあった。

お名前はありません @tobahohoh

熊淵(kumabuchi)。昔, 荒熊を阿良加志比古・少彦名神が退治したことによる説と, 高麗が淵の転訛による説とがある。#ishikawa #kuma

2014-07-29 16:22:50

熊を高麗の転訛とする由来も多く見受けられた。しかしこれも地域的にまとまっておらず, 興味深い。

お名前はありません @tobahohoh

地名に該当はないが, 下高井郡山ノ内町にある熊ノ湯温泉は熊が傷を癒そう湯に浸ったとする物語から, その名が付けられた。#nagano #kuma

2014-07-29 16:39:44
お名前はありません @tobahohoh

熊(kuma)。鳶ノ巣山・箒木山の南部, 天竜川支流横山川と同支流の阿多古川上流域に位置する。由来は紀州の人が当地に移住した際, 熊野三社を祀ったことによるとする説と, 熊などの野獣が多いため熊の谷と呼ばれていたことによる説とがある。#shizuoka #kuma

2014-07-29 17:23:37
お名前はありません @tobahohoh

熊見(kumami)。播磨平野南部, 汐入川上流域の京見山南斜面および山麓を指す。源満仲西国下向の際, 大熊が出たことに由来するという。元弘2年, 嘉吉2年にも熊が出たとして地名の由来とする。(『播磨鑑』)#hyogo #kuma

2014-07-29 18:02:06
お名前はありません @tobahohoh

熊野(kumano)村。かつて存在した。古事記中巻に神武天皇が東征の際に紀伊半島を迂回していたところ大熊に毒気を当てられ, 熊野之高倉下に救われて熊野神邑に至るとする。熊野村は同一の場所を指すものとされる。熊野は新宮市那智勝浦町一帯をいう。#wakayama #kuma

2014-07-29 18:43:13
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