FF6二次創作【鎮魂のアリア】その1

これまで挙げたFF6二次創作(http://togetter.com/li/540034)⇒(http://togetter.com/li/704351)のうち、ピクシブにおいて文字制限のせいで数回に渡り分けねばならなくなった長編です。これはその第一回に分けてあります。続き⇒http://togetter.com/li/709810
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みなみ @minarudhia

「人違いって何だ?おい、まっ―――だめだ、行っちまった…」 あっという間に見失ってマッシュは頭をかいた。 「……仕方ない、リルムのとこに向かうか…アウザーさんつったっけな」

2014-08-16 23:50:53
みなみ @minarudhia

そうぼやきながら立ち去る彼の後ろ姿を、女性は物陰から見つめていた。 胸は激しく動悸をうち、それを握りしめるかのように押し当てられた手が震える。 「……良かった……やっと、会えた……マッシュ…」 そう呟く声には、抑えきれぬ喜色が混ざっていた。

2014-08-16 23:52:24
みなみ @minarudhia

ガチャリ 使用人が戸を開けると、二人の男女が立っていた。 バンダナの目立つ軽装をした20代後半の男性と金髪碧眼の美しい20代になったばかりと思われる若い女性だ。

2014-08-16 23:53:32
みなみ @minarudhia

「すみません、アウザーさんとリルムはいらっしゃいますか?」 男の方がこげ茶の髪を軽く掻きながら使用人に尋ねる。 その声が聞こえたのか、リルムが勢いついて戸口まで駆けこんできた。

2014-08-16 23:54:35
みなみ @minarudhia

「ロック!セリス!」 「お久しぶりね、リルム」 「どうしたの、二人とも。もしかしてジジイのお使い?」

2014-08-16 23:55:29
みなみ @minarudhia

「まあ、そんなところかな。この間サマサに寄ったらストラゴスの爺さん、『ひょっとしてマゴはワシの顔を忘れてしまったんじゃ…』とか言って泣きそうだったから」 「んな訳ないでしょーが、あの老いぼれったらもう…忘れてるわけじゃないでしょ」

2014-08-16 23:55:49
みなみ @minarudhia

玄関で長話は無用と中に通され、ロックとセリスの二人はアウザーとも顔を合わせた。 杖をつきながら温厚な面持ちで二人を迎え、アウザーは口を開いた。

2014-08-16 23:56:31
みなみ @minarudhia

「お二人方、よくこの屋敷に来ていただいた。“ラクシュミ”が完成するまで後少しだから、それまで待ってくれるようお伝えくだされ」 「私達はちょっと野暮用でここに寄ってみたの。でもリルムが元気そうでよかった」 そう笑み、頷くセリス。 そこへ再び呼び鈴が鳴り、使用人が再び玄関へ行った。

2014-08-16 23:57:08
みなみ @minarudhia

「今日は来客の多い日じゃな。普段は滅多にないんだが」 アウザーが首を傾げながらロック達に言う。 使用人が少し慌てふためいた様子で戻って来た。 「旦那様、筋骨隆々な大男が旦那様とリルム様に用があるとのことで」 「え…?」

2014-08-16 23:58:13
みなみ @minarudhia

リルムが目を瞬かせた。 そして、三人の脳裏にある人物が思い浮かぶ。

2014-08-16 23:58:40
みなみ @minarudhia

「…あいつもジドールに来てたのか?」 「珍しいといえば珍しいわね。フィガロに戻ってたんじゃなかったかしら?」 「ひとまず、中に通してもらうよう言うか。…その男、もしかして名前を言ってませんでしたか?マッシュとか」

2014-08-16 23:58:51
みなみ @minarudhia

ロックの問いに使用人はしきりに頷いた。 「はい、そのように仰っておりました」 「なら、俺達の仲間だ。中に入れてもらって構いませんか、アウザーさん」 「おお、構わんよ」

2014-08-17 00:00:12
みなみ @minarudhia

「こんな時に来てしまって済まない。しかし、お前達まで来てたなんて知らなかったな。久しぶり」 「それはお互い様よ。ともかくお久しぶり、マッシュ。フィガロはどうだった?」

2014-08-17 00:01:35
みなみ @minarudhia

「兄貴が戻ってから相変わらずだぜ。…ただ、しばらくの間は復興とか混乱の後始末で忙しくて、なかなか顔を合わせられなかったけどな」

2014-08-17 00:01:39
みなみ @minarudhia

戸口を通され、ロック達に気づくやマッシュは満面の笑みで手を振った。 互いに再会を喜び合い、しばし歓談に耽った後でマッシュが思いついたように切りだす。

2014-08-17 00:02:55
みなみ @minarudhia

「そうだ、ロック、セリス。ちょっと頼みがあるんだが」 「頼み?」 「実は悩んでたんだ。もし良かったら三人に渡しておきたいと思っていた」

2014-08-17 00:03:52
みなみ @minarudhia

マッシュが言いながら見せたものに、三人の目が集まる。 それは、マッシュという人物をよく知る三人には彼との取り合わせが想像できない代物だった。 「……これ、オペラ座のチケット?」

2014-08-17 00:04:55
みなみ @minarudhia

「なんでキンニク男がこれ持ってるの?今公演中のやつじゃん」 「兄貴から押し付けられちまったんだよ…。リルムと一緒にでもいいから観てこいって言うんだが、御覧の通りの枚数だしどうしようかと思ったんだ」

2014-08-17 00:05:35
みなみ @minarudhia

「ひい、ふう、み―――確かに枚数多いわね…。ロック、セッツァーも誘いましょうか」 「え、あの傷男も一緒なの?」 ロックは頷いた。 それを横から聞いていたアウザーが口を開く。

2014-08-17 00:06:03
みなみ @minarudhia

「わしも久方ぶりにオペラの鑑賞を楽しむとしようかの。今日は日も良いし、リルムにとってもちょうど良いじゃろう」 「リルムにとって?」 「うむ。リルムには素晴らしい感性があるとわしは思っておる。何か絵のためになるものを得られるかもしれんからなあ」

2014-08-17 00:07:43
みなみ @minarudhia

確信するように頷くアウザー。 話が決まった所で、オペラに行く日時を決め、ロックとマッシュが近くに泊めたファルコン号へ向かうことになった。 もちろん、仲間の一人セッツァーを誘うためである。

2014-08-17 00:08:32
みなみ @minarudhia

「はーっははははははは!!」 事情を聞いた途端、響く飛行艇の主の高笑いに二人は面食らった。 「なんだよセッツァー、いきなり笑うことないだろ」

2014-08-17 00:09:41
みなみ @minarudhia

ロックが腹を押さえながら突っ伏す男をたしなめる。 長い銀髪と黒いコート、体に刻まれた無数の傷痕がトレードマークのギャンブラーは、涙を目に溜めながらなお笑った。

2014-08-17 00:09:58
みなみ @minarudhia

「全く、お前さんがオペラを見に行く姿なんて想像がつかないぜマッシュ!王様ももうちょっと気きかせてやりゃ良いのによ、誰か女誘え女を!」 「えぇ…」

2014-08-17 00:10:45
みなみ @minarudhia

さすがのマッシュもこれには退く。 ロック達を下ろしてからずっとエンジンの整備をしていたセッツァーは、手を休める口実ができたとばかりにマッシュをからかい始めた。

2014-08-17 00:11:41
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