【邪悪の樹】決闘フェイズ――王の樹

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「ごめんねぇ。僕には、そういう頭良さそうなのはちょっとわからないや」 掴まれた手に、『醜悪』の意図を理解して、すぐその手を下す。 流石に残った腕までもくれてやるつもりはない。これが無ければ、愛しいあの『少女』を抱きしめる事も、首を絞めてあげる事も、何も出来なくなってしまうのだから

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「それはつまり、自分が勝つぞー！って言う宣戦布告？それとも僕らのうちのどっちかを道ずれにして死ぬっていう自殺宣言？……前者なら鼻で笑ってあげるし、後者なら凄く迷惑だから素直にローストポークにでもなって欲しいな」

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

『物質主義』の足元、その草花が一瞬で金属と化したのを見て、『色欲』は静かに距離を置いた。 …勝者の数などどうでもいい、その中に自分がいれば、それで己の願いは叶うのだから。 「王様の数よりも、僕は君をどうやって殺すかの方が興味あるなぁ…っと」

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

禍罪で生み出したのは、数本のナイフ。 生み出すと同時に、隠すように後ろ手に構える。 放つのは簡単だが、今この場でそれをしてしまうと、一応は味方である『醜悪』の視線も奪ってしまいかねない。 さてどうしたものか、と『色欲』はそう優秀ではない頭を捻った。

『醜悪』カイツール @kaituls

『醜悪』よりも早く、『物質主義』の足元が変貌したのに気づいたのは、双頭のぬいぐるみだった。それはすぐさま『醜悪』を抱き上げ、距離を取る。その腕の中で『醜悪』は目を瞬かせ、王様ねぇ、と笑んだ。 その間にもマントからぬいぐるみを千切る。千切ったのは、小さな小さな鳥のぬいぐるみ五個。

『醜悪』カイツール @kaituls

それらは皆、翼の大きさが左右で違い、嘴だけは本物のように硬く、鋭い。 「ぼく、ひとりはきらいなの」 独白じみた『醜悪』の声に合わせ、小さな鳥たちが、歪に羽ばたく。じわじわと浮き上がり、今にでも飛び出そうと。 「でも、死ぬつもりもない」 吐き出す言葉は淡々と。紫紺は虚ろに揺らいで。

『醜悪』カイツール @kaituls

『物質主義』が提案したことへの答えのようで答えになっていない独白は続く。 「ひとりはいや」 弾かれた様に一つ、また一つと間隔をおき、小さな鳥達は飛び出す。 「ぼくはしねない」 嘴は『物質主義』に向けられ。 「だからぼくは、——君の、君だけの死を望む」 紫紺が『物質主義』を捉えて。

『醜悪』カイツール @kaituls

吐き出される声音に殺意はない。それどころか普段通りの穏やかな声音だった。だが、言葉は確かに殺意を示している。 鳥達は飛ぶ速度を上げ、弾丸の様に、『物質主義』を貫かんと空を歪に翔ける。 『色欲』への配慮なく行われるそれは、自身への配慮も必要ないとの意志を『色欲』へ端的に告げていた。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

「さあね？」 『色欲』が投げた疑問の形に疑問で返しにいと笑う。 「僕は負けるつもりはないけれど、どっちにしたってやることは同じでしょう？」 屋敷の外を見るにしろ仲間と再び逢うにしろ、生きて戻るつもりなら殺すつもりで殺すだけだ。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

「一人にはならないよ、『色欲』が『お仲間』を殺したらしいから」 だから安心して、と『醜悪』に微笑みかける。 「最低4人、君等も入れれば6人が死ぬんだ。生きてるより賑やかで楽しいかもしれないよ？」 緩やかに穏やかに笑い、ゆうるりと手を伸ばした。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

伸ばした手の先から飛び出すように金属の壁が伸びる。降り注ぐ陽光を弾きながら、白銀は二人の視界から『物質主義』を隠し、ぬいぐるみの進路を塞ぐ。 壁の向こうからも似たようで違う輝きの金属粉がぱらぱらと零れる。 風向きによってはごく細かな金属粉が2人に吹き付けるだろう。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「…そんなに美人さんだったのかなぁ、君を連れ帰った異性とやらは。僕にしてみれば、出会ったばっかの奴に心動かされるだなんて信じられないけどねFiglio di puttanaクン？」 まぁ素性も殆どわからない敵を信用して命をかける心情なぞ分からなくてもいいや、と吐き捨てる。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

とんでもなく汚い言葉を口走ってしまった気もしたが、相手は客とは言えど別に彼の愛する子供では無いので、まぁいいか、と軽い気持ちで流すと、『色欲』は相手の作った壁に向かって駈けだした。 真っ直ぐに駆け出し、壁の数メートル手前、その位置で、地を蹴り大きく飛ぶ。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

落下地点には禍罪で出した大きなトランポリン。そこへ向けて全体重をかける様に着地すると、ソレに貼られた布が大きくたわみ、彼は宙へと身を躍らせた。 この空間の核ともいえるべき大樹、その一本の枝に目をつけて、再び『禍罪』を発動させる。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

現れたブランコ。 それをしっかり掴み、素早く体をその上へ滑り込ませると、足をかけ、逆さ擦りの状態になる。 「流石に片手だときついなっ、と」 ブランコの揺れに身をまかせ、『色欲』は敵の頭上目掛け、新たに作ったナイフを放った。 刺されば上等、まぁ無理でも目くらまし程度にはなるか、と。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

「君が思うような美人じゃないかな、きっと」 彼女は人の目を引く容姿をしているが、それは魅惑というよりも強烈な違和感を生むものだろう。 「彼女は僕が探していたものをくれて、『屋敷からの解放』と『記憶』はくれなかった、それだけ」 拠り所もないまま彷徨うことを自由とは呼ばない。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

太陽を遮る影に気を取られ、ふいと空に視線をやる。空中ブランコにぶら下がっていた『色欲』と目が合った、気がした。 揺れるブランコの行先に銀針となった花の茎をダーツの要領で投げる。その腕で陽光を反射しながら落ちてくる刃物を受け止める。 純銀でも混じり物でも、金属であれば怪我はしない。

『醜悪』カイツール @kaituls

「それは、ぼくの『仲間』じゃない」 紫紺が凍てつく。穏やかな声音が冷厳を帯びる。 「一人じゃなければ誰でもいいって訳じゃないよ」 白銀の壁を見つめ、淡々と吐き捨てた。見知らぬ『異性』などいないも同然だ。 双眸を細める。白銀の壁を突き破らんと、鳥達が何度も何度もぶつかっていく。

『醜悪』カイツール @kaituls

少しずつ、白銀は凹み——。 「君が一緒に死んであげるよ、って言ったらまだ、『ひとり』じゃないんだけどね」 『醜悪』は困ったように微笑む。 ——同時に、鳥達が白銀を貫く音がした。 再度弾丸のような速さまで加速して、鳥達は空いた穴を通り、次こそは『物質主義』を貫こうと、駆ける。

『醜悪』カイツール @kaituls

「それに、死んだら意味がない。ぼくは、ぼくが死ぬことを、許さない」 双頭に頭を預ける。 紫紺の双眸は、白銀を、その向こうにいるであろう『物質主義』を見つめたまま。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

こちらに向かって、相手が何かを飛ばす動作をしたのが見えた。 何だろうか、と首を傾げつつ、ぬいぐるみを一つ生み出す。 それを盾にする様に手前に突き出せば、ぶすりと何かが食い込む音。 見やれば、ぬいぐるみの腹に深々と棘の様な物が突き刺さっていた。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「んー、そう言えば君、金属だめなんだっけ？困ったなぁ、これ、僕の唯一の攻撃手段なんだけど」 ゆらゆら、ぶらぶら、と揺れながら、『色欲』は綿のはみ出た人形を見てため息をつく。 金属以外の物質ならあるいは、とは思うが、生憎自分が生み出せるのはあくまでサーカスに関する物である。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

ガラスで出来たナイフでナイフ投げをするサーカス等聞いた事もないし、ナイフ以外の物で攻撃するにしても、使えそうなのは鞭程度のものだ。流石にあのよくわからない金属沼に自ら近付くのは遠慮したい。 ああ本当に使えない禍罪だと内心少し拗ねながら下の方へ目線を映せば、歪な鳥の姿が目に入る。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

(…攻撃が通らないならせめて、お膳立てぐらいはしようかな) 『醜悪』の攻撃なら、きっと相手にも通用する筈だ。ならば、役立たずの自分はせめて少しでも攻撃が当たりやすい様な状況を作ろうか。 ブランコの揺れに合わせ、大きく手を振るう。 こぼれ落ちたのは、色とりどりの花々だった。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

風を切るナイフは『物質主義』の腕や肩にぶつかり、刺さることなく下に落ちる。白衣にも肌にも傷ひとつ付いていない。 ため息混じりの言葉にはに小さく首を傾け同意する。 「うん、それが僕の罪だからね」 己の価値よりずっと確かに思えたものを信仰した。信徒の祈りに応えて金属は彼を守り慰めた。