ベンサムとハーレム、見る／見られる

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ベンサムが自邸の庭にパノプティコン原理によるハーレムを建てたいと計画していたという話、気になって調べてみると、該当する手紙の原文でもharem。 pic.twitter.com/fWXAOXX7ok

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田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

正攻法で検索すれば一発だったのか。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ベンサムの秘書で著作集の編者John Bowringは香港総督を勤め、エジプトの現地報告記を書き、オスマン帝国属州エジプトの支配者ムハンマド・アリーのアドヴァイザーでもあったという。ただし、ベンサムのハーレムへの言及よりのちのこと。

白江幸司 @ttt_cellule

@tanajun009 @maerchendiver おお。10巻がバウリングによる伝記第一部と書簡集だったんですね。てっきりキャロライン・フォックスに宛てた手紙でハーレムの最高責任者への就任を請うているのかと思い込んでましたが、William Plumer宛の手紙だったとは…

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

@ttt_cellule @maerchendiver これはやはりラヴ・レターだと思いますね。名前が伏されているし、全体にわかりにくい編集ですが。いずれにしても、この版ではなく、最新の書簡集で確認する必要があります。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

@ttt_cellule @maerchendiver 女性に「最高責任者」になってほしいというところに引っかかっていたのですが、このハーレムとは文字通りイスラムのハレムであって、女性が身を隠して不可視の状態のまま外界を見るための空間なのではないでしょうか。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

庭に「パノプティコン原理によるハーレム」を建てるというベンサムの計画で、手紙の宛先である女性に「最高責任者にはあなたになってほしい」と書いていることが気になっていた。このハーレムとは文字通りイスラムの「ハレム」であって、女性が身を隠した状態で外界を見るための空間ではないか。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

イスラムの女性のための空間ハレムでは、路地に面した窓にカフェス（衝立て）が設けられて外からの視線を遮り、逆に室内の女性たちはヴェールで顔を隠すことなく、外の様子を窺うことができた。イスラム原理主義社会でも、ハレムの中だけは女性が自由になることができる、という見方もある。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

いずれにしても問題はパノプティコン的ハレムにおける視線の構造である。監守の位置にいて姿を隠しているのは女性たちなのだ。そこで彼女たちは自ら固有の生活を営む。もちろんハレムが女性にとって幽閉空間であることには変わりないにしても。では、可視的に身体を晒す囚人は誰なのか？

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ベンサムにとって、このハレムで女性を決して見ることかなわず、逆に女性に見られるべき囚人とは自分自身ではなかっただろうか。そこで彼のAuto-Iconが遺言として示した、永遠に自らの身体を見せようとする欲望が浮上する。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

土屋さんは「ハーレムと言ってもオリエントの宮殿ではあるまい」とベンサム論で書いているのだけれど、それはオリエント、イスラムのハレム、そこにおける女性の視線の構造こそを念頭に置いたものだったのではないか。語学の天才の秘書John Bowringを通じて彼には知識があったに違いない

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

自分が何に引っかかっていたのかがようやくわかった･･･

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ささやかなeureka

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

内部と外部、ネガとポジ、図と地の反転を目撃するような経験──ミース・ファン・デル・ローエの「ガラスの摩天楼」案における、ガラスの反射と透明の作用による両義性の構造に気づいたときにもそんなeurekaはあった。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ベンサム補足 パノプティコンの中心に看守は不在で良いのだから、ハレムに女性はいなくても視線のエロティシズムは機能する。それはベンサムのAutoEroticの装置だろうか？

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

パノプティコン的ハレムにおける監視＝窃視の構造。それは、しかし、見られたいという欲望のために奉仕させられていたのかもしれない。Auto-Iconにいたる露出マニア。ツイッターは多かれ少なかれ、そんな不在（であってもよい）視線の囚人たちのためのメディアだ。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

そんな構造のなかのNarcissusとしてのベンサム。しかし、まあ、パノプティコンを逆転させて、支配者としての愛人の眼に自分の老いた肉体を晒す道具にしようとしていたとしたら、彼女の見ているかいないかわからぬ眼差しの支配力に官能を覚えていたとしたら･･･　なかなかのマゾヒストだ。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

ベンサム補足：新版で確認したが、ハレムの件のテクストに違いはない。むしろ、言及し忘れていた次の点。パノプティック・ハレムの計画を綴った直後に、「長い歳月、私はどんな男性たち（女性たちは言うに及ばず）にも姿を見せなかったのですが、これは特別な理由あってのことです」という一文がある。

田中 純 / TANAKA Jun @tanajun009

（承前）その理由はベンサムが嗅覚と味覚を全て失って、小さな病だらけだったことである。「姿を見せない」は原文はinvisible。明らかに直前のパノプティコンと対比をなしている。それはinvisibleであることを強いられていたベンサムが、visibleになる装置ではなかったか。