【邪悪の樹】最終戦闘フェイズ――死の樹

『智の剣』陣営 『貪欲』(@ToEvil_yuina) 『色欲』(@VIXI_atom) 『醜悪』(@kaituls) 『不安定』(@Aiyatsbusy続きを読む
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『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

扉を開いた先。唐突に視界が閉ざされる。驚きに瞬きを二、三度。そのうちに目が慣れてきて、其処が夜であることに気が付いた。 境界を越え、扉を閉ざす。砂のように消えて行った扉は、おそらく勝たなければ再び姿を現すことはないのだろう。フゥ、と溜息を吐いて、辺りを見回した。

2014-09-04 18:19:54
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

其処は、恐ろしく静かな場所であった。夜空には満天の星空が在るが月は無く。見回せど見回せど果てなど無く、視界を遮蔽する物は何も無い。木も、草も、何も無い。生き物の気配は一切せず、ただ、崩れかけの十字架だけが並んでいた。 ——……ここは、墓地か。 嫌なところだ、と再び溜息を吐いた。

2014-09-04 18:19:58
人間《ディアドラ》 @actSkbz

ゆら、ゆらり。ゆらり、ゆら、ゆら。蒼い茨に吊られるように、不安定は歩みを進める。 ──会いたい。ただ、それだけの想いで。気付けば辺りは暗く、空に視線をやれば、星が煌めいていた。振り返る。扉は既に、消えていた。正面に向き直りまた、歩みを進める。

2014-09-04 18:25:11
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──、貪欲、」 咳き込む。口の中に鉄の味が広がった。噛み締めて、飲み下す。白いドレスは土埃で多少汚れてはいたが、夜の闇の中で目立つことには変わりない。 「……あいたい、」 落ちそうになる涙を指先で拭い、前を見る。思考が揺蕩い、波間に溶けゆく。ゆっくり、ゆらゆらと、歩みを進める。

2014-09-04 18:25:15
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

ふと、音が聞こえた。人の足音だと、考えずとも分かった。耳を澄まし、その音に集中する。そして。 「コーシュカ……!」 聞こえてきた声に、『貪欲』は気付いた時にはそう叫び走り出していた。 声のしてきた方。その小さな足音を頼りに走る。

2014-09-04 19:08:33
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

戦っている間は、なるべく気にしないようにしていた。彼女にまた生きて会えると思っていなかったからだ。勿論、彼女が死ぬと思ったわけではない。自身が死ぬと、そう思っていたからだった。 けれど、自身は生き残った。自身は生き残り——『愚鈍』が死んだ。己は、生かされた。

2014-09-04 19:08:36
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

永遠に続くかのような十字架の群れの間を駆ける。幸い、視界は良い。直ぐに闇の中に浮かぶ白い影を見つけて、ホッとした。 「『不安定』!」 叫び、駆け寄る。ふらりふらりと揺れ、ゆっくりと歩むその身体を、駆けた勢いはそのままに抱き締め、良かった、と震える声で呟いた。

2014-09-04 19:08:41
人間《ディアドラ》 @actSkbz

──呼ばれた、と確かに思った。知らぬ名の筈なのに。 「あ、る、」 また知らぬ名が唇から落ちる。否、きっと知らぬ名などではない。憶えていないだけ。 そのまま名を呼んでしまえば、涙が落ちてしまいそうで。唇を噛み締める。ただ、縋るように抱き締め返す。蒼い茨は色薄く、解けるように消えて。

2014-09-04 20:11:40
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「“貪欲”、」 あいたかった、と言葉が静かに零れ落ちた。

2014-09-04 20:11:43
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

白い髪に頬を寄せ、ああ、と零れるように声を出す。俺も、会いたかった。無事とは言えない。けれど、生きていてくれて良かった。心の底からそう思った。けれど、言葉にはしない。ただ無言で『不安定』を一度強く抱き締めて、腕の力を弱めた。離れようと思えば、直ぐ離れられるほどに。

2014-09-04 21:02:41
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

そして、辺りを再び見回す。その視線が探すのは、三つの姿。『色欲』、『醜悪』、そして、あの小さな少女。彼らはどうなったろう。果たして生きているのだろうか。眉間に皺を寄せた『貪欲』の目は、闇の中に三人の姿を探していた。

2014-09-04 21:02:51
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「屋敷じゃ……ないや。ここが外の世界?…まさかね」 扉を開けて、ふらふらと、朽ちた墓地の中を行く。 星明かりだけの薄暗い世界は、強い光を苦手とする『色欲』には随分と心地の良いものだった。 ガツリ、と歪んだ十字が彼の足にあたる。

2014-09-04 21:11:38
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「……十字架…、こんなに痛んで…手入れはされてないのかな、墓守は何をしてるんだろ」 朽ち果てる寸前のそれを軽く蹴りつけて、更に前へと進んでいく。 墓地というのは余り好きな場所ではない。生活の為にさんざっぱら墓を荒らしては、墓守に見つかってスコップで何度も殴られた幼少期を思い出す。

2014-09-04 21:12:28
【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

(…記憶、僕の記憶。結構戻って来てるのに、…やっぱり君の顔だけは思い出せないや) あの子はどんな顔だっただろう。思い出せなければ、再び彼女にあったとしても気付けないかもしれない。 「それは…困るなぁ」 苦笑いで、道化師は空を仰ぐ。 見上げた空に、月は無かった。

2014-09-04 21:13:23
人間《ディアドラ》 @actSkbz

痛いくらいの抱擁が、泣きたくなるほどに嬉しかった。それが何を意味したのか、曖昧となる思考ですら、理解することができた。片足でバランスを取りながら、ぐうるりと辺りを見回す。 「みんな、は……?」 仮面の人。残酷と一緒にいたおおきな人。──きっと、ちゃんと理解っていなかった、残酷。

2014-09-04 21:40:06
人間《ディアドラ》 @actSkbz

己とて、確かと把握していたかと言われれば否という。しかし、それでも。あの恐ろしい程に無垢な少女が、此方側へ来る、という真たる意味をわかっていたとは、思えなかった。 「エルシュナ……」 扉の前での別れ際。眩しいくらいの笑顔を思い出す。 「……仮面の人も、おおきな人も、」

2014-09-04 21:40:08
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──みんな、無事であって」 甘き戯言だ。頭の中では、わかっている。それでも、願わずにはいられない。少女は言わずもがな、彼の仲間である二人に関しても。否、それを言うなら、恐らく対面してしまったであろう嘗ての仲間に対してだって、思うべきなのであろう。

2014-09-04 21:40:12
人間《ディアドラ》 @actSkbz

せめて、と。言葉なく、祈る。思う。彼らの無事と、安定を。──少女の笑顔を。

2014-09-04 21:40:16
『醜悪』カイツール @kaituls

扉の閉まる音がする。双頭の腕の中で、『醜悪』は紫紺を伏せ、身を丸めていた。頭が痛い。体が重い。何かが心臓にへばりついている。鬱陶しい。そう思えど、解消される訳もなく。 不意に一陣の風が吹き、髪を攫う。篭っていた熱が奪われたような気がして、ゆっくりと瞼をあげた。 「……此処は、」

2014-09-04 21:47:52
『醜悪』カイツール @kaituls

頭を少しだけ上げ、周囲を見回す。屋敷ではない。空を見上げる。月すらない、深い藍色。此処は、何処だ。強張りかけた体を双頭に寄せ、息を吐く。 「……エル」 少女の名が、薄い唇から零れ落ちる。自分の口から出た名に何度か紫紺を瞬かせ、また瞼を下ろした。 「エル、『貪欲』、『不安定』、」

2014-09-04 21:48:05
『醜悪』カイツール @kaituls

屋敷の大広間で別れた三人は何処にいる。小さな声で、探すように名を呼んだ。それでも紫紺を開こうとはしなかった。 ただ、乞うように名前を読んで、双頭に頭を預ける。傍にある柔らかな腕をぎゅうと握り、目を瞑っていた。 「エル、『貪欲』、『不安定』……」 瞼の裏に映る彼らの名を呼び続ける。

2014-09-04 21:48:59
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「……どうだろうな」 生きていて欲しいと思う。また会いたいと思う。けれど、軽々しく口に出すことは出来ない。『不安定』の口から零れたエルシュナという音に、あああの少女はそんな名前だったのかと今更知った。 ああそうだ、あの、小さな少女。あの、無邪気そうな少女も、戦ったんだ。

2014-09-04 22:10:52
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

傷だらけになりながら——回る思考を断ち切る。想像しても、仕方の無いこと。今は、とにかく三人を探さなくてはならない。此処が屋敷でない以上、また戦うことになるに違いない。だとしたらば、敵襲より先に合流しなければ。 祈る言葉を口にした『不安定』の髪を撫で、辺りを見回す。

2014-09-04 22:11:24
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

すぅ、と息を吸って。 「『醜悪』!『色欲』!エルシュナ!」 声を張り上げる。敵にも見つかることになるだろうが、合流出来ないより余程良い。いつでも戦えるよう気を張りながら、叫ぶ。 「何処にいる!『醜悪』、『色欲』、エルシュナ!」 「『貪欲(俺)』は此処だ!」

2014-09-04 22:13:41
『醜悪』カイツール @kaituls

——声が。 ぱちり、と目を見開いた。聞き間違いではないか。そう疑うように何度か瞬きをして。 ——また、声が。名前を呼ぶ、声が。 「……『貪欲』?」 頭を上げる。声のした方を確かに向いて、双頭の腕をぎゅうと掴む。敵の罠かもしれない。ふと浮かんだ疑問に首を振った。

2014-09-04 23:32:16
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