葉推詩選:2014年、秋。

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葉月野 @hadukino_tc

胸につかえた実が花咲く頃には 見知らぬ風景が望むままに めくられていく 感覚器官の同じところが 疼く 見つめる先は違うようで めぐりめぐっている (詩のレシピ9)#pwGT組

2014-09-29 07:18:14
葉月野 @hadukino_tc

声調を気にしすぎてはだめだよと やんわり諭す掌のかさつきが 右手の甲に貼り付いて消えない 面影は翻した袖の通り道に埋めた 花壇にアベリアが咲く間は 目印になるから 冬までにはおいで (詩のレシピ9)#pwGT組

2014-09-29 14:37:08
葉月野 @hadukino_tc

飲み込んだものが何なのかを聞く前に「おいしい?」と問われ、カエルの鳴き声で応えたので、王子様に戻してもらわないといけない。水辺も陸地も気にせずに飛び跳ねて遊んだ昼間のことはもう忘れてしまった。快楽の一欠片だけがポケットに残っている。(詩のレシピ9)#pwGT組

2014-09-29 18:39:57
葉月野 @hadukino_tc

真昼に星が消え、消えた星をつかまえたという。青空高くゆらぐかげろう。鎌のように笑う白い月。そろそろ刈り取れと老婆心を降らせる。覚束ない足もとに咲く星の花。自分の代わりに根を張ってくれる。勝手な約束がまた一つ増えた。そしてまた一つ君から離れてゆく。(詩のレシピ9)#pwGT組

2014-09-29 21:56:19
葉月野 @hadukino_tc

小さな球の中で降らせる雪は どこにもいけないことを嘆くのか いつまでも形あることを喜ぶのか 身動きが取れない僕を白く染め上げようと 君は外で世界を振っている (詩のレシピ10)#pwGT組

2014-09-30 14:29:03
葉月野 @hadukino_tc

誰の目にも馴染みのあるアイコンを自分なりに並べてみると、十人十色の地図ができる。川が貫く街、山の麓に広がる街。子供の頃遊んだ神社があり、大人になって旅立つ為の駅がある。電車の行き先は君の地図につながっているといい。(詩のレシピ10)#pwGT組

2014-09-30 18:53:00
葉月野 @hadukino_tc

温室育ちが重宝される。美味しそうに平らげられる。都合のいい様に扱われる。大衆化して羨望の対象となるビジネスモデル。無菌、無毒、無害。絶対の信頼が幅を利かせる。問題があれば叩き売られて損はない。いいことづくめじゃないか。求人情報にため息をつく。(詩のレシピ10)#pwGT組

2014-09-30 21:18:08
葉月野 @hadukino_tc

テールランプが遠ざかる。見届けて山荘へと向かう。迷いのある足跡。決意の一歩が踏み越える。小さな花もまた。断絶の果て。あてのない尋ね人。蔦の絡む垣根が続く。雨が降り始めた。草木が歓声を上げる。涙を紛らせた心が安堵している。(詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 07:24:57
葉月野 @hadukino_tc

答えが箸の先から剥がれないので、いつまでたっても僕のものにならない。味覚だけが研ぎ澄まされ、腹はいつまでも満たされない。まだ読書量が足りないのか。贅肉は無駄な知識の蓄積なら蘊蓄でも語れればいいのに、ただだらしなく揺れているだけだ。(詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 18:32:38
葉月野 @hadukino_tc

船底に裏打ちされた確かさから 海面に散る煌めきを背に 緩やかに降りてくる人影 天使に見えたかもしれない あの姿を目に焼き付けたか その答え合わせを求めて 魚たちがそらに舞う夢を見る (詩のレシピ11)#pwGT組

2014-10-01 21:46:06
葉月野 @hadukino_tc

シニシカント より高みにある ノチゥカント 古来の認識は自然にありながら 正確に物事を捉えていた 空を見上げる所作は 今も昔も変わらない 呼び名が違い 捧げる祈りは様々でも 根元にある想いは 連綿と続いている (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 07:24:52
葉月野 @hadukino_tc

辞典の言葉が辞典を形作る 私の身体はスカスカだ 風が吹けば空鳴りがする 何から足していくか もっと削るか 必要最小限の機能美を目指すか 読み違えたとしても 新たな発見があり 積もり積もって いつか 憧れの名乗りを上げる (詩のレシピ12)#pwGT組

2014-10-02 20:47:48
葉月野 @hadukino_tc

ハカバニハニワカシジンガイテ コンクリートノカベヲ ニラミツケナガラ ワラッテイル ヲトメノヨウニ ヌマニハマッタ ケソウスルシソウデ ロマンチックナシヲツヅリナガラ (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 07:14:51
葉月野 @hadukino_tc

私の世界が終わりを迎えた。華やかなパレードが蜃気楼を目指す。見送った後、踵を返して次の終わりを探しに行く。田園風景を過ぎて、カフェラテで一息。八割方の満足が得られたら新天地の鍵を手にしている。扉を開けるかどうかは、まだ決めていない。(詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 14:11:40
葉月野 @hadukino_tc

この週末はしっかり休むことに決めた。吶喊の序だ。希望を壊す。叩き壊して出ることができたら、寂寞の雨が体を冷やさないように陽気に生きようと思う。だが敬愛する漱石先生の胃弱ばかりを受け継いでしまった。力ない叫びは届かないかもしれない。だがこの言葉は残る。(詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 19:21:26
葉月野 @hadukino_tc

受信アラームは風鈴の音 胸中ではとっくの昔に既読になっている 寂しさを抱えているのは そう感じているほうで とっくに行先を見つけているかもしれない だからさよならとていねいに書いた (詩のレシピ13)#pwGT組

2014-10-03 22:30:00
葉月野 @hadukino_tc

へその緒を収めた小さな箱。仏間から取り出して愛おしげに眺める母の目に、私は映っていない。原初の記憶は一方通行で、いつか通行止めになる危惧さえ孕んでいる。それでもいきなさい、あなたはいきなさい。背を押したのもまた、母だった。(詩のレシピ14)#pwGT組

2014-10-04 07:41:49
葉月野 @hadukino_tc

バザールに寄ったキャラバンの隊長は お目当ての物に出会えなかった夜 馴染みの茶器に一杯の紅茶を淹れて 次の商機に願掛けをする もう一杯は家族の安泰へ捧ぐ どこからか野犬の遠吠え 持ち帰る品々の中には 質のいい産着が数着 最後の一杯は 良い人生を願う (詩のレシピ14)#pwGT組

2014-10-04 16:22:03
葉月野 @hadukino_tc

ハッピー・バースデー 満面の笑みを咲かせて 甘い匂いが広がる日 両親と祝った日 友達と祝った日 仲間と祝った日 貴方と祝った日 子供と祝った日 孫と祝った日 去年も祝った日 今年も祝う日 来年も その先も ケーキを平らげる量は 随分減ったけどね (詩のレシピ14)#pwGT組

2014-10-04 18:52:14
葉月野 @hadukino_tc

渇望が満たされたのはいつだったか。ウソをつくようになり。不服をそっと閉じる様になり。些細な苦悩を押し殺す様になったのは。醜いものを隠す様になり。生を視野に入れる様になり。シを意識する様になったのは。正しさよりも、自分の信じるものを。手に入れたか。(詩のレシピ14)#pwGT組

2014-10-04 19:37:36
葉月野 @hadukino_tc

踏まれて強くなったと教えられてきた 実は流れるように生まれてきたのだと 或る日見せられた書類が 私を誕生の秘密に向かわせる 過去を遡る旅程は 未来を測る行程でもある 知りたいのは真実でも真理でもなく 私という存在である (詩のレシピ14)#pwGT組

2014-10-04 20:24:01
葉月野 @hadukino_tc

死んでいるのを少しやめてみる。 星にまた惹かれてみる。 大事なものを見つめ直してみる。 当たり前に受け止めていたものを。 もう一度受け取るために。 さよならを告げる。 #twpoem

2014-10-23 21:20:05
葉月野 @hadukino_tc

同じ目的に向かっていたのに 道を違えてしまう それを多様性と称するか 見解の相違と呼ぶのか 人の心配をしている場合じゃない その道を往くのかい? ならばこれを持っておいき 渡された言葉の鉄槌は 覚悟の重さを示している #twpoem

2014-11-03 00:01:51
葉月野 @hadukino_tc

良い外面を続けるために内側を虐げて潰れた心 神社の境内を縄張りにする人懐っこい黒猫 ひとしきり癒されて帰りもう一押しと酒を呷った カレンダーの黒猫がこっちを見ていた どっちが大事だ、と問いかける 愛と口にしなくていい方をと答えた カレンダーは先月のままだった #twpoem

2014-11-03 23:25:01
葉月野 @hadukino_tc

手間がかかるから 楽な方がいいねと自分をしばる 自由でいるのは面倒だ 一々選択しなきゃならない 選び取るのがいつもと同じでも 諦めるのはもっと悪い よれよれでだらしない ノーネクタイのスーツ姿 何をなくしたとしても 恰好ばかりでも 締める 安心を結ぶために #twpoem

2014-11-03 23:46:55