rsbs日誌#33

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「稲荷殿や。安倍晴明のやうな子供でも生まぬかや？」「お前さんにやや子をこさえてもよいなら考えるけどねぇ。ひっひっひっ」「ぶるるっ！勘弁してくりゃれ。わしゃ子作りはトラウマなのじゃよ…」「冗談だあよ」「あ、さて…？」一仕事を終えた比良坂が龍田へと振り向いた。

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#rsbs日誌　「帰るとしようかや？お主の鎮守府まで送ろうぞ龍田よ。それと御駄賃もやらねばな」「なんだい？もう帰ってしまうのかい？寂しいねぇ」「下町の炊き込みご飯のいなり寿司今度買ってきてやるからよい子にしてくれたまえ。稲荷殿や」「マジで！？比良坂愛してる！」「抱きつくでない！」

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#rsbs日誌　そんな素っ頓狂な神様と魔女のやり取りを龍田は眺めていた。それから暫しして、龍田は車中の人となっていた。アストンマーチンＤＢ５は心地よいメカニカルノイズを奏でながら、雨降る横須賀を走っていた。「今日は済まなかったのう。付き合わせて」比良坂が呟く。

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#rsbs日誌　「別に構わないわ。暇だったし…」車窓から外を眺める。行き交う人々。そして車たちはやはり何時ぞやの様に精気無く、色味がなかった「…龍田や」「なぁに？」「もし、何か異常事態が起こったら逃げるのじゃよ」「急な話題ね。どうしたの？」「悪党が悪事を企んで居るのじゃよ」

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#rsbs日誌　酷く真面目な表情を比良坂は浮かべていた。何の嘘も含んでいない、戦士の様に真剣な瞳で居た。「全貌は把握しきれて居らぬが、この横須賀をひっくり返す様な事かも知れん。故に逃げるのじゃよ。何があっても」冗談が微塵にも感じられない言葉に龍田は頷いた…

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#rsbs日誌　「あ、さて…此処いらで良いかのう？鎮守府の真正面に停まるのは気分もよく無かろう」距離にして歩いて五分程の場所に、比良坂はアストンマーチンを停めた。ごそごそと懐を探り、紙幣を丸めた札巻きを龍田に渡す。「こんなに沢山…？だめよ。こんなの貰えないわ」

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#rsbs日誌　「何、構わぬよ。それで美味い物でも食べるなり、衣服を買うなりすればよい。お前さんの時間を買わせて貰った様な物じゃ。時は金なりと言うであろう？」「でも…だめよ、やっぱり」「駄目と申すなら高額紙幣の分厚い札束を出してしまうぞよ」「……いじわる」「かはは」

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#rsbs日誌　仕方無い。とばかりに懐に札巻きを仕舞い込み、龍田は車を出た。雨は変わらず、止みそうな気配はない…「では龍田や。今日は有り難うじゃよ。また何れ、のう…健やかであれ」「えぇ。貴女もね。魔女さん」ひとりでにパタリと静かにドアが閉まり、車は道路の向こうへと消えて行った…

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#rsbs日誌　「…あんな人が、世の中には居るのね…」ぼんやりと呟く。まるで夢物語でも見ていたかの様な気分。不思議な物を沢山見せられて、不思議な物を沢山体験させられて…でも、それは全て夢幻ではない…証拠とばかりに、胸の肌の傷を癒す呪符と懐に仕舞われた札巻きの存在感があった。

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#rsbs日誌　取敢えず、汗を流そう。そう考えながら龍田は歩を進めた。『また何れのう』不意にリフレインする比良坂の言葉に、龍田は小さくドキリとした。何故だか知らないが、言葉通りになると言う不思議な確信と…不思議な輝きを見せる比良坂の紅い瞳に見つめられたいと感じていた。

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#rsbs日誌　「…馬鹿ね。恋する女学生でもないでしょうに…」小さく、苦笑が浮かぶ。あの魔女はきっと、仕事を終えれば遠くに行ってしまうだろう…そうなったならば二度と会えはしないと。既に鎮守府に所属している艦娘と、得体の知れない提督…恋物語でもそう在るお伽噺では無いではないか。

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#rsbs日誌　「…酷い魔女だわ…本当…酷い魔女…」ホロリと流れる涙は頬を伝い、雨の作る無数の波紋の中に落ちていっては溶けて、消えた。とくん…とくん…と胸を突く切ない痛みに龍田は泣き笑う。薬の効かない痛み程、耐え難い物はそうは無い。止みそうに無い雨が乙女の涙を、隠していった。

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#rsbs日誌　『太平洋側に陣取る低気圧は依然として弱まりを見せず…』机に置かれたラヂヲは相変わらずの事しか何も喋らない。他愛ない日常。変わらない艦隊勤務。そして…忌々しい呼び出し。私は今日も、夜鷹を装い、情欲の捌け口になる…はぁ、と唇から零れるため息の理由は何かしら…

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#rsbs日誌　濃藍色の傘を指して、雨の降り頻る横須賀の道を歩く。憂鬱だわ…とくん…とくん…と胸を打つこの感覚。私はもう耐えられないかもしれない。なんて思いながら濡れた煉瓦の道を歩く。恋に落ちた乙女が好きでもない相手からの酷い仕打ちに耐えれるかしら？いいえ…耐えられない。

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#rsbs日誌　胸に呪いを受けたまま、何も思わない肉欲人形で居続けた方が良かったのか…呪いを解かれ、胸に恋の痛みを持ったまま目の前で自害して見せるのが良いか…「本当、どちらがましなのかしら…」苦笑混じりに呟いて、気が付けば其処はもう人気の無い薄暗い裏通り…そして何時もの人影…

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#rsbs日誌　仮面を被る時間だわ…なんて思いながら濡れた傘を畳もうとした其の時だった。「漸く見つけた」胡散臭くて老獪な、だけども暖かい、よく通る声が背中から聞こえた。背中に深紅の大輪を背負った、誰よりも会いたかった、小さくて神様に意地悪で不思議な力を操る、濡れ烏の髪を持つ魔女。

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#rsbs日誌　「なんだい君は？」エキゾチックな顔付きの女性提督が話しかける「わしか？わしは魔女じゃよ。この日ノ本の國を守護せんとする、ちょいと意地悪な小さな魔女じゃ。さぁ？観念して貰おうかや悪党。その下らない仮面を脱いで貰うのじゃよ」「下らんね。子供は家にお帰り」

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#rsbs日誌　「ぬかせ。ケツの青い小娘が」瞬く暇さえなく、轟音が路地に轟いた。神速の速さの抜き撃ち。大口径のリボルバーが火を吹き、青白い火薬の煙を撒き散らしていた。「が、ぁ…！」呻き声。カランと何かが落ちる音。龍田はエキゾチックな顔付きの女性提督へと振り向いた。

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#rsbs日誌　「う、そ…」龍田がそう呟くのも無理は無い…其処に居たのは、龍田の上司たる提督本人なのだから…「き…さま…！」「見苦しいもんじゃなあ？自作自演で龍田と関係になろうとは。おい小娘。お主ちゃんと子宮は付いておるのか？男気が足りんのう。女じゃけども」

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#rsbs日誌　「龍田や。よくお聞き？お前さんに呪いをかけたのもこやつじゃ。見たまえあの胸元の焼き爛れた傷跡を。呪いが破られて呪い返しを受けておる。無様で惨めじゃなぁ？」「貴様に…貴様に何が分かる！」「分かる訳無かろうこの馬鹿が。貴様の様に呪いで思い人を縛り付けるなぞ、な」

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#rsbs日誌　「私は！タツコを守りたかっただけだ！艦娘の適性に跳ねられ、体の弱かったタツコが艦娘になって…！あんな魑魅魍魎の溢れる海に出すなんて、私には我慢が出来なかった！」「ショーコちゃん…」「それで呪いか。馬鹿じゃなぁ…其れならば龍田が強くなる願掛けでもすれば良かろうに？」

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#rsbs日誌　比良坂が愚かだとバッサリと切り捨てた時、龍田の提督はくっくっと笑いだした。「だが…その心配ももう必要ない！私が！あの憎たらしい海の化け物を皆殺しにしてくれる！出でよ九頭龍！我に力を！」左手を突き出し、彼女は吠えた。手首を回るルーン文字にも似たそれが発光した。

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#rsbs日誌　……が、何も起きやしない。地鳴りも地震も、大気の揺れさえない。世界はいつも通り、静かであった。「テンション高い所すまんが、貴様の悪事はわしが片付けさせて貰うた。ド下手くそな召喚魔方陣じゃったのう。地脈や気配を隠すのは上手じゃが。暗殺者でもやった方が良かったのう」

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#rsbs日誌　「この、ぉ…！ずけずけと！」「因みにあのまま召喚しても出てくるのは精々ナマズの化け物が良い所じゃな。地震雷大雨を引き起こすオオナマズ。そもそも伝承の九頭龍を呼ぶのにあれ如きで呼び出せると思うかや？」「黙れ！黙れ黙れ黙れぇええ！」怒りと共に、女の体が膨れ上がった…