「本格(Honkaku)」という言葉が米国『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』のブログで紹介される
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クリストファー・ファウラー (英 Christopher Fowler, 1953- )
クリストファー・ファウラーは日本ではホラー作家としてのみ知られているが、2004年からは刑事2人を主人公にしたミステリシリーズも発表。なかでもシリーズ第6作『The Victoria Vanishes』はエドマンド・クリスピン『消えた玩具屋』へのオマージュになっているとか。
2014-10-13 08:21:32- パグマイヤー氏はイギリスの雑誌『Book & Magazine Collector』2010年7月号掲載の密室物についての座談会でもこれらの作家に言及している。この座談会は『本格ミステリー・ワールド2011』(南雲堂、2010年12月)に翻訳掲載されている。
- この座談会によれば、このクリストファー・ファウラーのシリーズは著者本人が「不可能犯罪」シリーズと読んでいるそうだが、パグマイヤー氏の見たところでは初期作品は「不可能犯罪」物に入らないという。第4作『Ten Second Staircase』でそれに近いものになり、第5作『White Corridor』でやっと合格点に達したとのこと。
- なおこの座談会では氏の名前は「ジョン・ピュグマイヤー」と表記されている。
ジョン・ヴァードン (米 John Verdon, 1942- )
ジョン・ヴァードン(John Verdon)は2010年デビューの作家で、現在までにニューヨーク市警の元刑事デイヴ・ガーニーのシリーズを4作発表している。邦訳はない。こちらの日本語ブログに第1作のレビューがある mitsukibookreport.blog.so-net.ne.jp/2010-10-07
2014-10-13 08:22:23その他の英語圏の本格ミステリ作品
またほかの作家が書いた本格ミステリとして、リー・チャイルド『The Visitor』(米題 Running Blind / 未邦訳)、ジョン・サンドフォード『夜の獲物』、そしてエイドリアン・マッキンティーの『In the Morning I'll Be Gone』を挙げている。
2014-10-13 08:23:32- 先にも触れた座談会では、リー・チャイルド『The Visitor』、ジョン・サンドフォード『夜の獲物』とともに、リンカーン・チャイルド&ダグラス・プレストン『Brimstone』(未邦訳)を「不可能犯罪を現代のスリラーに取り込むことに成功」した作品として挙げている。
- ちなみに『In the Morning I'll Be Gone』(2014)は、著者本人がインタビューで、『占星術殺人事件』の影響を受けて書いたものだと語っている作品である。
- 詳しくは下のTogetterを参照のこと。
ブログ記事の末尾
それらの作家や作品に続けて、「ただ、もっとも成功したのは間違いなく、イギリスのテレビ・ドラマシリーズ『奇術探偵ジョナサン・クリーク』だ」。これは1997年から2004年まで放送されたドラマ。日本でも放送されたことがあるようだが、ソフト化はされていないようである。
2014-10-13 08:24:54「本格ミステリの潜在的な読者は(英語圏にも)いると私は確信しているが、研究者や圧倒的多数のレビュアーは本格ミステリのことを理解しようともせずに見下しており、そのために出版社も本格ミステリの出版に踏み切れないのだ」云々
2014-10-13 08:26:33- パグマイヤー氏はポール・アルテの長編を英訳したがどの出版社も出版を引き受けてくれず、結局自分で小出版社を立ち上げて刊行した。
記事の末尾では、本格ミステリへの注目度と評価を高めていくため、今後も自分が立ちあげた小出版社「Locked Room International」から忘れられた名作を復刊(or翻訳出版)したり、島田荘司とともに日本の本格短編のアンソロジーを編んだりする、という展望が語られている。
2014-10-13 08:27:41- 今回のEQMMブログへの寄稿文では言及されていなかったが、パグマイヤー氏はほかのところでは、ハル・ホワイト『ディーン牧師の事件簿』を本格ミステリのお薦め作品として挙げている。作者のハル・ホワイトは現代アメリカのミステリ作家で不可能犯罪物のマニア。自分のサイトで不可能犯罪物の推薦作リストを公開している(リンク)。
ジョン・パグマイヤー氏と「Locked Room International」および島田荘司先生の今後の計画
「Locked Room International」のサイトは「こちら」。
「既刊及び今後の刊行予定」によれば、今後はポール・アルテ以外に、フランスのノエル・ヴァンドリー(ノエル・ヴァンドリ)(Noël Vindry)やガストン・ボカ(Gaston Boca)、スウェーデンのウルフ・デュアリング(Ulf Durling)、台湾の林斯諺(りん しげん、Szu-Yen Lin)の本も刊行される予定だという。
- フランスのノエル・ヴァンドリー(Noël Vindry, 1896-1954)は2013年12月に「ROM叢書」で『逃げ出した死体』が翻訳出版されたが、すでに完売とのことである。
- フランスのガストン・ボカ(Gaston Boca, 1903-2000)は邦訳はない。1930年代に密室物の長編を数作発表した。
- スウェーデンのウルフ・デュアリング(Ulf Durling, 1940- )も邦訳はない。「Locked Room International」からは、1971年の作品『年代物のチーズ』(Gammal ost)が『Hard Cheese』として英訳出版される予定。この作品はミステリ研究同人誌『ROM』117号(2003年)に小林晋氏によるレビューが載っている。ひょんなことから知り合った探偵小説マニア3人は毎週探偵小説談義のための会合を開いていたが、そんなとき、近隣で実際に密室殺人事件が発生。探偵小説マニア3人が密室について語り尽くす――という作品だそうだ。1971年のスウェーデン推理作家アカデミー最優秀新人賞受賞作。仏訳版のタイトルは『Pour un bout de fromage』。
- 台湾の林斯諺(りん しげん、1983- )はこのTogetterの冒頭にも書いたが、米国EQMMにも掲載された短編「バドミントンコートの亡霊」が最近邦訳された(他作家の3編と合わせた合本もあり)。著者本人のFacebookページによれば、「Locked Room International」からは2005年の長編『雨夜莊謀殺案』が翻訳出版されるようだ。