歴史解説の体裁をとった政治宣伝本

歴史解説の体裁をとった政治宣伝本について
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山崎 雅弘 @mas__yamazaki

書店に行くと、自国礼賛・近隣国蔑視の本と同じエリアに、先の戦争について「アジア解放戦争として成功だった」「負けるはずがない戦争だった」「アジアの人々に感謝されている」等の、「歴史解説の体裁をとった政治宣伝本」が数多く並んでいる。先の戦争についての「常識」が、物量で覆されつつある。

2014-10-15 13:18:45
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「先の戦争は『太平洋戦争』ではなく『大東亜戦争』と呼ぶのが正しい」と主張する理由は、そう呼ばないと「アジア植民地の解放戦争」という「形式」、つまりそれを行った国の面子を保てなくなるため。資源の収奪や住民の搾取、軍票などの乱発による経済の破壊など、不都合な事実には全く目を向けない。

2014-10-15 13:19:52
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「歴史解説の体裁をとった政治宣伝本」が書店の棚を占領する状況が続けば、それが次世代の日本人にとっての「常識」になってしまうが、日本の歴史家の状況への危機感はあまり感じられない。事実に基づく本よりも、面子を保つ「痛快な本」の方がよく売れるという理由で、後者の新刊ばかりが書店に並ぶ。

2014-10-15 13:21:13
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

日本がアジア諸地域への軍事侵攻を行った直接の理由は、英米蘭の経済封鎖で輸入の道を経たれた石油などの「資源を手に入れるため」で、日本国内の視点だけで見れば「自存自衛の行動」だった。だが、自分の態度が原因で米屋と喧嘩した男が近所の家へ米を盗みに入る行為を「自衛行為」と呼ぶ人はいない

2014-10-15 13:22:36
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

こうした「戦争の実質」は、ある年齢層以上の人間には「常識」だったが、それが「常識」として通用しなくなる時代が、予想より早く来るかもしれない。それを防ぐには、政治目的で操作された「形式」でなく「戦争の実質」を記した出版物を継続的に供給し続けることが必要だが、現状はそうなっていない。

2014-10-15 13:24:09
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「歴史解説の体裁をとった政治宣伝本」が書店での争いに勝利し、「アジア植民地の解放戦争」という「形式」が日本人の「常識」になった時、どんな結末が待っているかは、1945年8月までのこの国の歴史が教えている。当時と同じ思想を受け入れ、当時の価値判断で行動すれば、当然同じ結末を迎える。

2014-10-15 13:25:35
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

自説に都合のいい歴史的事実だけに目を向け、不都合な歴史的事実は一切無視して、歴史解釈を歪める人間を「歴史修正主義者」と呼ぶが、その思考は麻薬的な魅力を持つ。過去の不都合な歴史的事実を「無かったこと」にする「全能感」を繰り返し味わうと、やがて現実も同様に操作できるという錯覚に陥る

2014-10-15 13:26:59
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

概念操作や言葉の言い換えで「形式」を整えることで、現実を自分の思い通りに操作できるという錯覚に陥った人間が、戦争指導部を支配すると、刻々と変化する外交や軍事の情勢を客観的に把握・評価できなくなり、独善的で場当たり的な対処を繰り返して自国の損害を増加させ、最後は破滅的な敗北に至る。

2014-10-15 13:28:27
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

こうした「歴史修正主義者」が政治の中枢を支配すると、戦争以外の政策でも同様の破滅的結末へと国を導くリスクが増大する。現実には内外の諸問題の情勢が日々悪くなっているにもかかわらず、概念操作や言葉の言い換えで「形式」を整えることで、あたかも「全て順調」であるような共同幻想を創り出す。

2014-10-15 13:29:41
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「日本人は今まで間違った歴史教育で洗脳されてきた」という煽り文句から話を始めるのは、詐欺師が人を騙す時に使う常套句と同じで、受け手の「理性」でなく「感情」に強く訴求している。不愉快な事実を「無かったこと」にする「全能感」に感情が酔わされている間に、大事なものを巧妙に抜き取られる

2014-10-15 13:31:05