内田樹氏、道徳の教科化について

カミュの「反抗的人間」そして、中教審の考える「道徳教育はいかにあるべきか」
15
内田樹 @levinassien

AERAのげんこ、だん。道徳の教科化について書きました。中教審が「道徳」の教育目的として目指しているのは「上位者に服従し、決められたルールを遵守し、自分の知性を以て『なすべきこと、してはいけないこと』の当否について判断しない子どもたち」の組織的な生産です。

2014-10-22 11:22:48
内田樹 @levinassien

けれども、僕たちが遭遇する「道徳的危機」はしばしば「上位者が間違った命令を出す」「ルールを適用するととりかえしのつかないことが起きる」というかたちをとります。その場合に上位者に抗命し、ルールの適用を抑制することが「できる力」が道徳敵意識の核心をなしています。

2014-10-22 11:25:33
内田樹 @levinassien

仮に上位者が「こいつは敵だ、こいつを殺せ」と命じても、「ルール上はそれに従うべきなのだが、どうしても身体が動かない」というかたちで発動する「厭な感じ」。それが道徳的意識の原初的なかたちです。アルベール・カミュはそれを「反抗」(la révolte)と術語化しました。

2014-10-22 11:27:05
内田樹 @levinassien

上位者が命じても、ルールが命じても、権力が命じても、真理が命じても、さらには神が命じても、「厭なものは厭だ」と言いうることのうちにカミュは人間の知性と道徳性の根拠を求めました。中教審の委員のうちに『反抗的人間』を読んだ人はいるのでしょうか。一人もいないと僕は思います。

2014-10-22 11:30:10
内田樹 @levinassien

「人間的道徳」について20世紀でもっとも深く切実な問いを深めた哲学者の道徳についての省察を一顧だにしない人たちが「道徳教育はいかにあるべきか」を得々として論じている。悲惨な光景と言う他ありません。

2014-10-22 11:32:56
内田樹 @levinassien

ふたつめのツイート「道徳的」が「道徳敵」になっていましたね。脳内変換しておいてください。

2014-10-22 11:34:07
安田登 @eutonie

前RT。内田さん。”仮に上位者が「こいつは敵だ、こいつを殺せ」と命じても、「ルール上はそれに従うべきなのだが、どうしても身体が動かない」というかたちで発動する「厭な感じ」。”決めた事に従う「忠」と、その場での共感を重視する「恕」との葛藤ですね。孔子も最終的には「恕」を取る。

2014-10-22 11:48:10