不知火に落ち度はない その28

yamoto @yamoto

さてさて、31歳処女の大切さを思い出したところで。 いってみようかお見合い回。 PCパーツの到着はまだ先になりそうです。 ふぁっきん。 #落ちぬい

yamoto @yamoto

午後。 昼食を終えた後の少し気の緩んだ時間。 俺はマインスイーパーを25連戦を決め、不知火は珈琲片手にソリティアでの待機任務を続行中。 ありていに言えば暇してた。 書類の決済待ち時間ってのは、こうしてたまに空白の時間を生み出すのである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

あ、そだ。 この雰囲気なら言えるかもな。 先日の早霜の件と合わせた秘書艦交代。 不知火の意見も交えてじっくりと話し合いたい。 龍田は流出を避けたのか、オンラインで資料を送るということはしていない。つまり、現状俺しか知らない情報なのである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

どうせ書類決済は明日まで来ないだろう。 だったらこの後久々に、不知火をデートと称して飯に誘ってのもありだ。 不知火の対応次第によっては、お疲れ様パーティなども悪くない。こいつが好きそうな店は一応候補を選んである。 「なあ、不知火」 「はい？」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「今時間空いてるだろ？ ちょいっと、車で──」 「失礼します。提督、ただいまお時間よろしいでしょうか？」 ……。 いや、うん。 時間空いてるんだけどさ。 話の腰をボッキリ折られるとなんか、切ないよな。 「？」 入ってきた妙高は、小首を傾げていた。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

応接テーブルにつき、珈琲を置く。 立ち話もなんだから、という理由でどうやら長話になりそうだと察した不知火からの提案だった。 淹れたてのキリマンジャロが、いい匂いを立てている。 俺の時は基本、モカなんだけどな。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「で、話というのはなんだ？ 妙高」 「ええ。ひどく個人的な話なのですが……」 妙齢の未亡人みたいな顔して言わんでください。 お隣のプチドーベルマンが今、落ち度って口にしそうだったから。 「提督はお付き合いしてる方、いらっしゃらないんですよね？」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

えっと、妙高さん？ それってどういう訴えなのでしょうか。 ウチ、恋愛相談所じゃないんだけどさ。 あと、プチドーベルマン、何もやってませんよ誤解ですよ。さらりとメモに落ち度＋2って書いてるじゃありませんよ。 「そりゃ、いねえけど。相談事かい？」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

いや、好みっちゃ好みですけどね。 この何とも言えない未亡人空気という間違い推奨みたいな面さしといい、程よく熟れたボディラインといい。 でもそんなドリーム抱きません。 だって、妙高さん外部の素敵な男性とのお付き合いあるって聞いてるし。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「もしかしてアレか？ 彼氏との付き合いがこじれたからちょっと仲取り持つ系」 先手を打ってみる。 「はあ？ おりませんけど」 え。ちょいまち。 確かな情報と黒潮が言ってたんだが。 黒潮情報穴だらけだぞおい。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「失礼。そういう噂を耳にしてただけだ。気にしないでくれ」 「流言が出るのは司令官の権威に関わりますよ？」 はい。すみません。 「そうですね。司令官の威厳がだいぶ削れてきていますので」 はい。すみません。 ちくしょう黒潮め。情報テロしやがって。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「悪かった。話を続けてくれ」 「ではいらっしゃられないということで、お見合いはいかがでしょうか？」 ……。 はい？ 「お見合いって、あのな」 「お見合いとは未婚の男女が双方立会いの元、結婚を前提にして会議を行う風習です。合っていますか？」 うん。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「えっとな、そりゃいいんだが……」 よくねえけど。結婚する気がありますかと言われれば激しくNoなんだが。 「以前掲示板にそのようなことを書かれていましたし。お読みになりましたか、アンケート？」 不知火。なんか言って。 「不知火が読み上げしたので」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ですので、是非一度会っていただけないかなと思いまして。いかがでしょうか、提督」 やです。とは言えない。 妙高はウチの基地でもずいぶんと頼れる戦力である。 不況を買う真似はあまりよろしくない。 言質をすでに取られてるのに今更都合が……とは言えんのだ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「それは構わねえけど、妹さんだっけか？ そっちも艦娘なんだろ？ 都合はどうなんだ」 「いつでも開けさせます」 怖。笑顔で言い切った。 「そうも行くまいよ。そっちの提督との兼ね合いもある。わがままが通るとも思えんぜ」 「問題ありません」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「問題ないって……親しいとか？」 「こちらが所属の提督ですが。大変理解のある方でして」 そこに映ってたのは老貴婦人とも言えそうな女性提督である。見たことあるぞこの人。海自時代に一等海佐だった人じゃねえか。 今は名誉大佐とかの扱いだったはず。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

すんげえ格好いい女だと、団長が言ってたな。 今は半隠居だが指揮は今だ衰えず、数少ない艦娘と現代戦力で深海棲艦群の進行を防衛してると聞いている。 乗るんだと、この歳で護衛艦に。 は、いいんだが。 そんなあっさりOKでるもんなの？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「妹は戦果こそ高いのですが、その……こちらの提督が心配される程、男性と縁がなくて」 「あー……そうなのな」 「それで司令官のことをお話したら、二つ返事で提督から了承を得ました」 外堀から埋めたのこの人！？ やべ、逃げられないじゃんそれ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

どうするか。 完全フリーな時間なんぞそうそう作れはしない。 今日は暇でも明日から寝ず番なんてのが、あり得る仕事だしな。 かといって面子もあるから潰すわけにはいかん。 相手さんの面子を潰したら団長の責任もあるって話になる。 待てよ、こうすりゃいいか。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「一応時間を見繕って見たんだが、あいにくと現状じゃ、空いてるのは今夜ぐらいでな。あとは二ヶ月先ぐらいになる」 「あら、そうだったんですか」 「ああ。善処はしてみるが、先方の都合もあるだろうし。ここは日取りを改めて……」 乗り気ですが、ポーズである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

こちらの身の回りのことを出しつつ、計画という言葉でお茶を濁す。全部Noと言えば済むわけでもない世間において、使える大人のやり方である。 そうそう休みがピタリ一致するわけもねーしな。 建前上何時でもOKとはいえ、戦略上そうはいかんだろう。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「そうですか。じゃあ早速妹に連絡を取ってきますね」 はい？ ちょっと待って予想外のやつ来ちゃった！ 「おい、流石に仕事中呼び出すのは…」 「大丈夫ですよ？ 今、休暇中でこっちに来てますから。明日お休みいただいてますよね？」 ぬいぬい、チェックよろ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「妙高さんは2ヶ月前から休暇を2日申請されています。すでに受理済みですが」 書類見てないの？ という視線である。 「はい。明日からお休みを頂いて、妹と二人で遊びに行く約束をしてたんですよ」 「仲良いねぇ」 「ええ。仲良しです」 どうしよ。詰んでる。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

まず、妹がこっち来てるってのがやばい。 次に、姉妹仲が良好ってのがやばい。 最後に、相手提督公認ってのがやばい。 なにこれ、超スピードでお見合いセット完了じゃん。 そして同時に感じる。 『何か言いかけてましたよね？』という秘書からの熱い視線である。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

すまん不知火、話は今度だ。 スピード成立されたこれを、今更ひっくり返せない。 「場所はあれかい？ ドレスコード付きのところとか？」 「え？ いえいえ、流石に今時それはないですよ」 え、マジで。 今時の見合い様式を知り、ショックを受ける俺がいた。 #不知火に落ち度はない