【真荒】あなたのいる場所4

弱虫ペダル二次創作 腐向け 真波×荒北
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

【真荒】あなたのいる場所4 (今日、荒北さんいるかなぁ) ファンライドを経、東堂に諭されたことで、真波は自分を取り戻した。 もう大丈夫だと、自分でも思っていた。 それでも、旧図書館には足しげく通っていたのは、荒北のそばがあまりにも心地よかったからだ。 荒北は真波に強制しない。

2014-11-23 00:47:36
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon いつだって自由にさせてくれるし、でも、ダメなことはダメなのだとはっきりと言う。 荒北の中では授業をさぼることはダメなことに入ってなかったし、荒北を納得させる理由があれば協力してくれさえした。 (あ、強制されることあった) 思い出して顔をしかめる。

2014-11-23 00:49:26
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 荒北は好き嫌いを許さない。まるで何かの敵であるかのように、絶対に食べさせるのだ。 (荒北さん、ほんとお母さんより怖いもん) 東堂とどちらが怖いかと言えば、断然、荒北だ。 真波を可愛がってくれている東堂は、最終的にはいつも折れてくれるし、結局甘い。

2014-11-23 00:51:02
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon けれど、荒北は違う。 荒北は真波に厳しいし、たぶん、しょうがない後輩だと思っているだろう。 (じごーじとくってヤツだけどさ) ちょっとはいいところを見せたいとも思うのだが、何をみせれば荒北の中での自分の株があがるのかがわからない。

2014-11-23 00:55:31
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (成績は、ムリだ) 真波の成績があがったところで、荒北はきっと感心なんかしてくれない。 (じゃあ、部活) 練習量で荒北を感心させるのは絶対に不可能だ。 (勝てるとしたら、山登りだけだけど) それも、距離があれば怪しいし、下りがあったらたぶんムリだ

2014-11-23 00:57:58
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (どうすれば荒北さんにいいとこ、見せられるんだろう?) 真波は首をひねった。 部室の前まで来ると、ぼそぼそとした声が聞こえた。 (あ、来てる) 引退した三年生は、後輩の邪魔にならないようにと、毎週火曜日に顔を出すと決めているらしい。

2014-11-23 01:01:57
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon こっそり一般受験を決めている荒北は勉強に忙しいのだろう。ほとんど訪れたことがなかったが、どうやら今日は来ているらしく、声がした。 「……荒北、最近、おまえは随分と真波を構いすぎじゃないか?」 静かな声が聞こえた。 「何それ、嫉妬でもしてんの?」

2014-11-23 01:03:52
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ニヤリと笑っていることがわかるような声音だった。 「そうではない。ただ、オレは真波を甘やかすなと言っているんだ」 「自分が甘やかすからひっこんでろってか?」 「違うっ」 「そうとしか聞こえねえよ。そもそも、オレがいつあいつを甘やかしたんだよ」

2014-11-23 01:07:34
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ふわふわとしていた気分が、とたんに急降下した。 自分のせいで荒北が責められているのを聞くのは、自分が責められるより辛いことなのだと真波は知った。 (なんで、オレに直接言わないの、東堂さん) 確かに真波は荒北に甘やかさせているという自覚があった。

2014-11-23 01:09:54
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 真波の好きにさせておいてくれるのは、あれこれ説教をするよりもよほど忍耐の必要なことに違いない。 何よりも、大切な勉強時間を削っている。 「いつって……」 「おまえ、何をさしてオレが甘やかしてるって言ってんの?」 なぜだか、背筋がぞくり、とした。

2014-11-23 01:12:54
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「荒北、引退した俺たちはあまり後輩の問題に首を突っ込むべきではない」 声のトーンの変わった荒北に、まずいと思ったのか福富が口をはさむ。 いつもだったら、そこで終わりのはずだった。 「元凶は、黙ってろ」 しん、と静まり返った。 「や、靖友?」

2014-11-23 01:14:49
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 困惑した新開の声が、ひどく間が抜けて聞こえた。 「で、どうなんだよ、東堂。おまえは何をさしてオレがあいつを甘やかしてるって言ってんだよ」 「それは……おまえが真波のサボりを容認して……担任の中西先生にも断りをいれたと」 「それのどこが甘やかし?」

2014-11-23 01:17:18
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「授業をサボらせるなんてもってのほかだろう」 「てめえは理由もわかってないのに、さぼったってだけであいつを怒るつもりだったのか?」 「どんな理由があってもサボる事は許されない。あんまりにも目に余るようだったら部活にも影響があるだろうが!」

2014-11-23 01:19:12
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「ったく、てめえくらいはもっとちゃんと見てろよ。わかってんのか?あいつは、ずっとちゃんと眠れてもいなかったんだぞ」 「……え?」 「中西センセはちゃんと気付いてた。だから、話を通せばわかってくれた。課題と補習で手を打つことになってる」

2014-11-23 01:22:09
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon それをオレが話をつけたことが甘やかしか?と冷ややかな声がする。 「荒北、おまえ……」 「目の下のクマ、青白い顔、寝不足以外のナニモノでもねえだろうが。なんで気付かねえんだよ」 「……真波はおめさんと一緒で元々色白いからな」 溜息交じりのつぶやき。

2014-11-23 01:24:17
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ずるり、と真波は部室の扉を背にして座り込む。 (……ねえ、荒北さんは、なんでオレにそこまでしてくれるの?) 荒北は甘やかしてなどいないというが、それは充分甘やかしていると真波は思う。 胸が痛かった。 荒北は、福富すら退けて、真波をかばってくれた。

2014-11-23 01:27:15
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (かばってくれたっていうか、守ってくれた、なのかもしれないけど) でも、あの荒北が、福富の言葉を否定したのだ。 それも、真波のために。 (ねえ、荒北さん、そんな風に優しくされると、オレ、誤解しちゃうよ) たぶん、荒北は何も言うつもりはないだろう。

2014-11-23 01:29:21
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon こんな風に聞いてしまうことがなければ、真波は守られていることをずっと知らないままだったに違いない。 (……ねえ、荒北さん、オレ、荒北さんを好きになってもいいかな) 胸が熱くて、すごく痛くて、堪え切れなかった。 ふらりと真波は立ち上がる。

2014-11-23 01:32:29
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ここにいたらダメだという頭はまだ働いた。 今の真波に必要なのは、誰にも見つからない一人きりになる場所だった。

2014-11-23 01:34:07