『其(そ)は夜鳴き鶯』(旧題:『森の国の夜鳴き鶯』)

竹の子書房 黒実操の自主トレです。もりかさんの『捧げる花もなし姫』にインスパイアされてできたお話です。もりかさん、公表をご快諾いただきありがとうございます。
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クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p どんなに禍々しいことがあったとて、明けない夜などありません。倒れたお姫様の上に、優しい朝日が差しました。どこからか聞こえる、美しい小鳥の囀(さえず)り。お姫様の瞼が、ゆっくりと開きます。神聖な朝の光に、すっかりあの嫌な臭いは、かき消されておりました。

2011-01-05 00:28:47
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p しかし地面に穿(うが)たれた大きく底の知れぬ穴が、昨夜の出来事が事実であったことを、教えています。お姫様は、ハッと掌を開きます。そこに友達の姿はありません。しばらく呆然と見つめていたお姫様ですが、ふと、顔を上げました。目覚める前から聞こえている、この小鳥の声。

2010-12-31 22:55:33
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p そう、まるで夜空の星々が流れ出ているかのような、この歌声。「何処にいるの」お姫様は、身を起こします。それに答えるかのように、歌声が大きくなり、あの夜鳴き鶯が飛んできて、お姫様の指先に止まりました。そして嘴を更に震わせて、かつてなかったほどに麗しく歌声を響かせるのです。

2010-12-31 22:55:54
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p お姫様の胸に、洪水のように喜びが押し寄せてきました。その喜びが、そのまま内側から押し出されて大粒の涙となり、夜鳴き鶯の嘴に一滴、落ちました。次の瞬間に起きたことをどう理解すれば良いのでしょう。夜鳴き鶯が止まっていたはずの指先に、見たこともない青年が手を添えています。

2010-12-31 22:56:27
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p いくら不思議な目に遭ってきたお姫様でも、驚きで言葉もありません。青年は静かな声で、お姫様に告げました。「私は、あなたの夜鳴き鶯です」そう言われても、お姫様には何のことだか判りません。青年は小首を傾げて、続けます。

2010-12-31 22:56:39
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 「私は旅の吟遊詩人でした。歌声自慢の、鼻持ちならない男でした。旅の途中、あの黒い女が現れて、私に問いました。歌声一つで、真に清らかな乙女の涙を得ることができるか否か。私はできると答えました」お姫様は、この青年の眼差しに、友達の面影を認めます。

2010-12-31 23:29:25
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 「黒い女は、私を夜鳴き鶯に変えました。歌をうたって乙女の涙を得さえすれば、すぐにでも人に戻れるのだと嗤い、去ったのです。どれほどの間、たった一人で歌っていたことでしょう。お姫様、貴女に出逢うまでは」お姫様は溢れる涙を隠すことなく、青年の手を取りました。

2011-01-05 00:29:23
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p さて、時は流れます。森の国のお姫様が神様の怒りに触れて、隠(こも)っていた廃教会から姿を消したという噂が、すっかり古くなってしまった頃。国境沿いの小さな村に、吟遊詩人の青年と竪琴弾きの少女がやって来ました。吟遊詩人が歌うのは、勇敢なお姫様の物語。

2010-12-31 22:57:14
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 友達の夜鳴き鶯のため、敢然と恐ろしい魔女に立ち向かう様を、朗々と歌う吟遊詩人の後ろで、竪琴弾きの少女は頬を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに俯きながら演奏しています。そこに集まる者は皆、目立たないその少女が人前に立つことを恥ずかしがっているのだと、微笑ましく思うのでした。

2011-01-05 00:29:49
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 「それで終わりか」昏(くら)い目をした、肌も髪も服も黒い、闇のように美しい女が言いました。ここは真の闇の中。しかし、その女はそれよりも更に黒く、昏いのです。

2011-01-12 23:44:30
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 「意図しなかったこととはいえ、地の底の者の力を借りて何事かを成し遂げれば、遅かれ早かれ同じ地の底の住人になる他ない。代償とはまた別の話だ。知らなかったことゆえ、気の毒ではあるがな」言葉とは裏腹、黒い女はくつくつと忍び笑いを漏らします。

2011-01-12 23:44:45
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 流し見遣る視線の先には、炎で創られた鳥籠。「歌が終わったのなら、私は行くぞ。待っていろ。お前たちに仲間を作ってやろう」黒い女の言葉にかぶせるように、籠の中の鳥が、一節(ひとふし)、歌いました。

2011-01-12 23:44:54
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p  黒い女はそれを聴くと、仰け反って笑いました。あまりにも激しく笑ったので、大きな蹄の、獣の一本足が衣装の裾から覗きました。鳥籠の中には、双頭の夜鳴き鶯が一羽。嘴を固く閉じて、その黒い女の狂態をじっと見つめ続けるのでした。

2011-01-12 23:45:18
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p 「夜鳴き鶯」挿絵:ラスト地獄のシーン。 http://goo.gl/xIlVm

2011-02-21 23:04:26
クロミミ跡地 @kuromimigen

@ts_p タイトルは後日変更します。読後感とか考慮したのですが、やっぱり授かったとおりのお話に完成させます。

2011-01-12 23:47:10
@kurorororo1101

『其(そ)は夜鳴き鶯』の表紙が一応完成しました。

2011-02-12 20:02:53
@kurorororo1101

おはようございます。 『其(そ)は夜鳴き鶯』の挿し絵が出来ました^^

2011-02-17 09:23:30
@kurorororo1101

この絵も『其(そ)は夜鳴鶯』の挿し絵で使ってくださいm(_ _)m

2011-02-17 09:47:38
@kurorororo1101

『其(そ)は夜鳴き鶯』の最後の地獄の場面を描きました(`бωб)ノ~~~☆

2011-02-18 18:19:26
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