聖なる夜だから心理学の質問に答えたよ!【基礎心理学くん】
- kisopsy_kun
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§1 | 質問1「心理学における『心』の定義とは?」
確かに,心理学について考えようと思ったら,まず「心」についての考え方について考える必要があるね。もちろん究極的なことを言えば,「心とは何か」を明らかにすることが心理学の目的でもある訳だけど(ただし,ここでいう「何か」とはwhatというよりもhowに近いかな)。
2014-12-25 21:10:36初期の認知心理学においては,心とは「ある特定の入力(刺激; stimulus)を与えたときに,それに応じて何らかの出力(反応; response)を返すブラックボックス」といった具合に考えられていたよ。
2014-12-25 21:13:35ブラックボックスたる心にあたる部分は生活体 (organism) の内側にあるものだから,刺激 (S) → 生活体 (O) → 反応 (R) というS-O-R図式を想定した上で,観察可能なSとRの関係から観察不可能なOの中身を間接的に推定するのが心理学の基本的な考え方だね。
2014-12-25 21:16:07最近では,「心とは脳である」という心脳同一説を受け入れた上で,脳機能計測を用いて「心=脳」を直接的に観察することが多くなってきたと言えるけど,実はこれもS-O-R図式の範疇なんだよね。ある刺激を与えたときに返ってきた脳の反応 (R) から心について推論する,という意味では。
2014-12-25 21:20:15あ,ちょっと語弊があったかも。脳機能計測の場合,ふつうは行動データ(反応時間や正答率など)を一緒に測定した上で,その行動データの背後にあるメカニズムを脳活動に帰属させようとするという意味では,従来の行動データよりも直接的に心を観察していると言えるかもね。
2014-12-25 21:24:36ちょっと脱線するけど,脳活動のような生理的なデータは,行動的なデータがあってこそ意味を成す場合が多いので,心理学が完全に生理学に還元される,ということはちょっと起こりえそうにないかな。生理的データよりも行動的なデータのほうが心のメカニズムを解明する上で有用な場合はけっこう多い。
2014-12-25 21:27:12まとめると,(基礎)心理学における「心」とは,与えられた刺激とそれによって表出する反応とを仲介するプロセスのようなもので,この仕組みを明らかにしようとするのが心理学であり,最近では脳機能を計測することでより直接的に「心」を観察する動きも強い,といった具合かな?
2014-12-25 21:33:38とりあえず,心理学における「心」というものがかなり広い概念であるということを分かってもらえたら嬉しいな。日常語の「心」は,「意識」とか「感情」とかかなり限定された意味で使うことが多いね。
2014-12-25 21:39:23例えば「心のケア」と言うときの「心」は少し意味が違う,ということが分かるね(そして,多くの人は心理学と聞くと,この意味の「心」を想像しちゃうんじゃないかな?)。
2014-12-25 21:42:42余談だけど,「心とは何か (what)」という問いはどちらかといえば哲学であって,心理学では「心の仕組みはどのようになっているか (how)」を問題にするよ。
2014-12-25 21:46:07§2 | 質問2「人はどこで『視線』を感じるのか?」
@kisopsy_kun 分野が心理学かどうかは判りませんが質問です!ふと何かの視線を感じることってありますよね。人の視線だったり別のものだったり…目から光線が出ている訳でもないのに人はどこで「視線」を感じとっていると考えられますか?
2014-12-25 23:58:42.@Justice_ki 良い質問なのでRTさせてもらいました!視線,あるいは気配をどのように感じるか,というのはとても興味深い問いかけだね!霊長類の中でヒトだけが白目を持っているのは,目が「見る器官」であるだけでなく「見せる器官」として進化してきたことを物語っているよ!
2014-12-26 00:01:41.@Justice_ki なので,他人の「目」に注意が向きやすいのはヒトの特徴だと言えるね!でも,実際に他人の目を見なくても,なんとなーく視線を感じる気がするのはなぜ?いろんな考え方ができるけど,これは複数の感覚が統合されて最終的な近くが生じる,という考えに立てば説明できるかも。
2014-12-26 00:04:28統合的知覚による説明
.@Justice_ki 具体的に言えば,例えば物音。静かな場所でゴソゴソという音がしたら,まず生き物の可能性を疑うよね(そうしたほうが,進化論的に考えても適応的だ)。そこまで来れば,音のする方向に人がいて,目がこちらを向いている,という推論が無意識に起こってもおかしくはないね!
2014-12-26 00:07:06.@Justice_ki ヒトは外界の物を知覚するときに,一つの感覚だけに頼っているとは限らないのだ。他の例では,例えば目を閉じて手で物に触れても,形や触感からその物が何であるか(=視覚的な情報)が分かるよね!したがって,実際に視線がなくても視線を感じうるのだ。
2014-12-26 00:09:08トップダウン知覚による説明
.@Justice_ki 他の説明としては,「トップダウン知覚」による説明もありうるかな。簡単にいえば,先入観のこと。不安なときには他人の存在に敏感になるよね。そうすると,普段なら気にしない小さな物音に対しても「誰かいるのでは」という疑念を抱いたりしてしまう。
2014-12-26 00:10:58.@Justice_ki このようにして,「視線」があると思い込んでしまったら,実際に視線があろうとなかろうと,視線を感じてしまうよね。さらにこのとき,実際に視線がなかったケースは視線があったケースに比べて過小視されることがある(e.g.,確証バイアス)のもポイント。
2014-12-26 00:13:15.@Justice_ki このようなバイアスによって「視線を感じるとき,いつも実際に視線があった」という認知が成立すれば,「視線の存在を正確に検出する感覚を持っている」という錯覚を抱くことにも繋がるかもしれないね。
2014-12-26 00:16:12