浮世絵における骸骨の話

浮世絵における様々な骸骨についての話。
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腐ってもエビ @kusattemoevill

北斎や国芳らが活躍する時代の浮世絵は、それまでの浮世絵に比べ、かなりリアリティのあるものになってきていた。それを表すとのの一つが“骸骨絵”の存在。

2014-12-28 20:43:33
腐ってもエビ @kusattemoevill

北斎や国芳が活躍するのが19世紀。18世紀後半に杉田玄白が『解体新書』を出すと、合理的な西洋の考え方が日本の文化に看過できない影響を与えるようになった。 で、当時の江戸の出版文化によって『解体新書』に描かれた解剖学的知識が広まる。もちろん画狂たちがその流れに食いつかないわけはない

2014-12-28 20:49:54
腐ってもエビ @kusattemoevill

浮世絵はご存知のとおり平面的な絵で、デッサンや遠近などの立体的描写にはあまり拘られていなかった。しかし北斎あたりから流れは大きく変わってくる

2014-12-28 20:53:07
腐ってもエビ @kusattemoevill

北斎はかなりデッサンに凝った人で、『北斎漫画』なんかをみると、目に入るもの全てスケッチしたんじゃないかというほど色んなものを描いている。しかもただ数をこなしてたわけでなく、人体構造にも興味があったらしい。この一枚はパラパラ漫画みたい pic.twitter.com/SDwj0uhcM9

2014-12-28 21:02:11
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腐ってもエビ @kusattemoevill

実際、北斎は処刑場に行ったりもしてたそうで、絵に関してのフットワークの軽さを代表するエピソードでもある。独自に西洋の技法を学ぼうともしてたそうで、たとえばあのシーボルトとも顔見知りの間柄だった。(おかげでシーボルト事件の際にとばっちり受けそうになるけど……)

2014-12-28 21:06:17
腐ってもエビ @kusattemoevill

そんな北斎に影響を受け、奇才と評される浮世絵師が、歌川国芳。ともに歌川派で北斎から影響を受けていた歌川国直とも仕事をしていたためか、国芳もかなりデッサンに力を入れていた様子。西洋の解剖図も所持してたそうで、代表作『相馬の古内裏』ではかなりリアルな骸骨が出てくる。設定は妖怪やが

2014-12-28 21:17:25
腐ってもエビ @kusattemoevill

画像忘れてた。これが『相馬の古内裏』 pic.twitter.com/jGcQIlQltD

2014-12-28 21:17:58
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国芳の絵にはこんなロックな一枚も。着物にドクロって完全に20世紀のセンス。さすがに奇想の絵師と呼ばれることはある pic.twitter.com/5rMeMHT9un

2014-12-28 21:20:50
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腐ってもエビ @kusattemoevill

国芳の人体への執着は骸骨だけに終わらず、筋肉の描写にも現れてたりする。ここまで執拗な筋肉の描き方は、他の浮世絵にはなかなか見られない。筋肉みれば国芳とわかるレベル pic.twitter.com/hDKhGriUoK

2014-12-28 21:22:56
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そして浮世絵における骸骨を語る上で欠かせない絵師が河鍋暁斎。国芳の門下に入り、生首を写生したという逸話を持つ幕末の奇才で、とにかく骸骨が好き。どんだけ描くんだってくらい骸骨の絵を残してる。 pic.twitter.com/YowqRcxBCR

2014-12-28 21:29:16
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腐ってもエビ @kusattemoevill

国芳はひたすら猫を描いたけど、河鍋暁斎はひたすら骨を描く。骸骨が茶をやったり、騒いだりする。ここまで表情豊かな骸骨絵は、現在まで見渡してもそうそうないんじゃなかろうか pic.twitter.com/AoTJxHh9Wa

2014-12-28 21:32:53
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腐ってもエビ @kusattemoevill

しかしこの一枚なんかは、どこか解剖図っぽく、その奇想がしっかりとしたデッサン力に支えられてることがわかる。まわりのヘンテコポーズの骸骨は置いといて……w pic.twitter.com/vYqX933H2I

2014-12-28 21:34:48
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腐ってもエビ @kusattemoevill

骸骨の絵、というと西洋ではバロック期のヴァニタスが想い浮かぶ。これはピーテル・クラースの作品だけど、こうした絵の中にある様々な静物には、ひとつひとつに色んな寓意が込められてたりする。 そしてそれらは総じて人生の虚しさを表してもいる。 pic.twitter.com/AhLddfDr8z

2014-12-28 21:38:44
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でも浮世絵の骸骨には、あまりそうした意味は込められてない。それぞれ自由な発想で、思い思いに骸骨を描いている。例えばこの河鍋暁斎の一枚からは、悲観的な意味合いは感じられない。戯画的なユニークさがある。浮世絵はこうした部分が面白いんだ pic.twitter.com/KG0WfNgSva

2014-12-28 21:42:15
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腐ってもエビ @kusattemoevill

同時代のヨーロッパの絵画や、浮世絵が生まれる以前の日本の絵画はどうしても思想やルールに縛られるところがあった。浮世絵にはそれがない。好きなものを好きなように描いている。海外の芸術家に影響を与え、芸術的ブレイクスルーの一因になったのは、そうした自由さがあったからだと思う

2014-12-28 21:46:20