「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カブラ=サンは己の死を覚悟した。その時!光の尾を引きながら、ロケット弾がモーターヤブの1体に命中、爆発した。ヤマキタ=サンがRPGを構えて膝立ちになっていた。「行け!」ヤマキタ=サンが叫んだ。「カブラ=サン、早く行け!ここは俺がやる、本部に伝えろ、こいつらの事を!」

2010-09-08 17:16:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!カブラ=サンは一目散に駆け出した。他の2体のモーターヤブが左腕のガトリングでヤマキタ=サンを狙う。彼は数秒後には血煙になるだろう。彼の犠牲を無駄にするわけにはいかない。カブラ=サンはバイクに飛び乗り、フルスロットルで逃走する。

2010-09-08 17:22:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエェェェェ…」ヤマキタ=サンの無残な断末魔を背後に微かに聞きながら、カブラ=サンはバイクを走らせた。泣きながら。

2010-09-08 17:26:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハイウェイを降りて林道を下ること数十キロ。ネオサイタマ郊外の廃村「トットリ村」が、地域レジスタンスの拠点である。

2010-09-08 18:07:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レジスタンスの構成員は100人足らず。オムラ・インダストリという巨大企業からすれば、所詮は象にたかる蟻でしかない。絶望的な戦いであった。しかし彼らは悲壮な決意で銃をとった。

2010-09-08 18:37:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オムラの計画を受け入れれば、トットリ地域がまるごと水没する事になる。オムラが提示する「保障」とは、すなわち、プロジェクトへの強制収容を意味する。要介護の老人たちはトットリ地域の人口の実に八割を占める。彼らにそれが耐えられるわけがない。レジスタンスの戦いは自分のためではないのだ。

2010-09-08 18:50:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(老人?知りませんよ、そんな事は)自治会へ条件を提示しに来たオムラの出っ歯・サラリマンは、四角いメガネをクイクイと直しながら高慢に言い放った。(厄介払いができて、あなた方もメリットがあるでしょう?Win・Winの取引です、これは)……自治会は彼をスマキにし、オムラへ送り返した。

2010-09-08 18:56:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その日から、自治会はレジスタンスとなったのだ。トットリ上空を覆う磁気嵐と密林がこれまでの抵抗運動の大きな助けとなっていた。そして、アンタイ・コーポレーション組織「イッキ・ウチコワシ」の支援。

2010-09-08 19:02:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イッキ・ウチコワシの首領「バスター・テツオ」は、町内会の重鎮の古い友人であった。打診に応えたテツオ=サンは二人のエージェントをトットリへ送り込み、半月のうちに、自治会メンバーを訓練されたゲリラ戦士に育て上げたのである。

2010-09-08 19:06:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エージェントの一人はラプチャーという名の背の高い男だった。もう一人はラプチャーにつき従う寡黙な女で、アムニジアと呼ばれていた。カブラ=サンが消耗し切って深夜のアジトに帰還した時も、二人は寝ずに外の様子に目を光らせていた。

2010-09-08 19:14:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スミマセン、封鎖が破られた……」カブラ=サンは泣きながら床にへたりこんだ。磁気嵐のため無線類は使えない。伝達は口頭である。「皆、やられてしまった。モーターヤブというとんでもないロボット戦士が出て来た。銃も効かない。サスマタとガトリング砲……もう、おしまいだ……」

2010-09-08 19:20:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ついに出たな、モーターヤブ」ラプチャーはニヤリと笑った。「知っているのか」レジスタンスのリーダーは額の汗を拭った。寝巻き姿である。ラプチャーは頷いた。「オムラが開発中のロボ・ニンジャだ。最近ロールアウトしたという情報は掴んでいた」「なんて事だ…」リーダーは頭を抱えた。

2010-09-08 19:24:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうするんだ。奴らはきっとこのままモーターヤブでトットリに襲撃をかけてくるぞ。今までの様にはいくまい」「訓練は裏切らない」アムニジアは冷たく言った。目の下を灰色の布で覆面した彼女の瞳は、ぞっとするほどに無感情だ。ラプチャーはリーダーに言った。「皆を起こせ。ケース4で配備しろ」

2010-09-08 19:34:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「落ち着かねえなあ!」助手席のニンジャが大声をあげた。そう、ニンジャである。カーキ色の装束、メンポ。まぎれもないニンジャだ。異様な肥満体のシルエットであったが、よく見ると、それは身にまとうボムディフェンス・ニンジャ装束によるもので、実際の体格ではないとわかる。

2010-09-08 20:03:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それにめんどくせえなあ!」ニンジャはまた大声をあげた。「まあ、そうおっしゃらずに、エクスプロシブ=サン」運転ヤクザが、おっかなびっくりという様子で答える。二人が乗る装甲ジープは林道を走り抜けていく……三体のモーターヤブに囲まれながら。

2010-09-08 20:06:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三体のモーターヤブはカンガルーのように逆関節の脚で飛び跳ねながら装甲ジープを護送している。跳ねるたびに、ドシンドシンと地面が鳴り、車体が揺れる。「落ち着かねえ!」エクスプロシブが繰り返した。「こんなもん、要らねえだろ?俺一人で十分だろ」「実戦データを取らねばいけないので…」

2010-09-08 20:09:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

運転ヤクザが言った。「それにですね、ソウカイヤのヘルカイト=サン情報で、どうもトットリ側にもニンジャがいるようでして。より万全を期するためにという、本社判断でして」「そのニンジャに俺が不足を取るってえのか!」「い、いえ、万全です!本社です!もちろんあなたは強い!」

2010-09-08 20:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まったく、イライラするぜ!」エクスプロシブが吐き捨てた。「メチャメチャにしてやるからな……トットリを地図から消してやる」トットリ村の背後には巨大ダムがそびえる。村を強襲し、そのままダムを爆破する作戦であった。だがエクスプロシブはもうすこし色々と楽しむつもりでいた。

2010-09-08 20:23:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、生きてるか?ヤマキタ=サン」エクスプロシブは後部シートを振り返った。「ムガガガ」猿轡をかまされたレジスタンスの男が呻いた。彼の体はなんと、バクチク・ホルダーでぐるぐる巻きにされていた。なんたる無体!

2010-09-08 20:27:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「綺麗な花火を打ち上げてやるからな?ん?嬉しいだろ?」「ムガガガ」エクスプロシブはオムラ・インダストリ専属のニンジャである。それゆえ、社の最新テクノロジーの恩恵を授かっていた。「イチコロ」「スットコ」「カチコミ」。純金よりも高額な最新式バクチクは彼の思いのままであった。

2010-09-08 20:31:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

装甲ジープが停止した。「では、よろしくお願いします」運転ヤクザがエクスプロシブに頭を下げた。眼前に広がるのは棚田である。その先に、レンガを固めた防壁があった。防壁を越えればトットリの村である。そしてさらにその後ろに、巨大ダムだ。空は明け方を前に、少しずつ白みはじめていた。

2010-09-08 20:57:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エクスプロシブはヤマキタ=サンを抱えあげた。「ムガガガ」「故郷に帰らせてやるってんだよ!喜べ!グッハハハハ!グハハハ!」エクスプロシブはヤマキタ=サンを抱えたまま駆け出した。密林を抜け、棚田をひょいひょいと渡り登っていく。その後を、鈍重なモーターヤブが跳びはねながら続く。

2010-09-08 21:01:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ようし、はじめようじゃねえか!」レンガ防壁の前までくると、 エクスプロシブは槍投げ選手のように上体をねじり、蓑虫の様にバクチクを巻き付けられたヤマキタ=サンの体を……投げた!すさまじいスピードで宙を飛び、防壁の内側へ投げ込まれるヤマキタ=サン。「3、2、1、」

2010-09-08 21:11:00
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