『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之)を批判する

以下も合わせて読んでいただくとうれしいです。 拙論「アニメーションという原罪」http://www.godo-shuppan.co.jp/img/kokai/kaisetsu_kokai.pdf 「アニメ経営者としての手塚治虫」http://togetter.com/li/622604
21
前へ 1 2 3 ・・ 9 次へ
It happens sometimes @ElementaryGard

賃金の仕組みをなめてかかる経営者は後で必ずひどい目にあう。

2015-04-05 23:20:24
It happens sometimes @ElementaryGard

前にも何度か論じたように、戦後日本の労使衝突のテーマは、結局は賃金の体系をどうするか、でした。占領軍はアメリカ式のドライで明瞭な職務給(便所掃除なら週給120ドル、受付係なら週給140ドル、等)を日本に根付かせたかった。根付かなかった。

2015-04-05 23:22:40
It happens sometimes @ElementaryGard

高度経済成長を続ける1960年代は、賃金体系をめぐってまさに国全体が混乱していた時代です。そして手塚の虫プロは、1961年に産声をあげた。

2015-04-05 23:24:55
It happens sometimes @ElementaryGard

嫌でもこのテーマと直面するしかないわけです。ところが『西遊記』での挫折で、手塚は経営者としての自分を否定し、とことん作家性にこだわった。「虫プロの社員は全員が作家なんだ」と宣言し、若いスタッフもその気になって東映動画に顔を出しては「我々作家集団は」とぶち上げた。

2015-04-05 23:27:06
It happens sometimes @ElementaryGard

東映動画は賃金をめぐってすでに何度か労使衝突を経験していることもあって、虫プロの「作家集団」宣言には冷ややかだったようです。『作画汗まみれ』の記述を信じるならば、アニメーターの長(おさ)的な位置にいた森康二をして「作家集団って何だ?みんなで締切に追われることなのか?」と冷淡。

2015-04-05 23:29:32
It happens sometimes @ElementaryGard

苦し紛れに企画したアトムのマーチャンダイジングが、思惑を超えて超大ホームランとなったおかげで金がどんどん手塚のポケットに入ってきた。原作者ですからね。手塚はその膨大な副収入を虫プロの会計で処理した。それで虫プロは数字の上では超優良企業となった。

2015-04-05 23:31:47
It happens sometimes @ElementaryGard

いってみれば原作者・手塚が超ウルトラスーパーデラックス・パトロンとして社長・手塚にばんばん金を貸して「返さなくていいよ」と見栄を切ったのです。

2015-04-05 23:33:18
It happens sometimes @ElementaryGard

賃金の仕組みをどうするかという問題を「とにかくたっぷり払ってやればいいんだろ」と大きく出ることで隠ぺいした。経営者になりたくなかった手塚は、何かあるとすぐ財力で押し切った。自分は作家だ、みんなも作家だ、いやらしい経営者なんかじゃない、と。

2015-04-05 23:35:38
It happens sometimes @ElementaryGard

経営者が経営者としてなすべきことを放棄して、パトロンとして突っ走った。こんなの企業とは呼べない。後に宮崎駿が切り捨てたように「金持ちが道楽でやっていた」。

2015-04-05 23:37:31
It happens sometimes @ElementaryGard

こんなやり方が長く続くわけがなかった。

2015-04-05 23:40:32
It happens sometimes @ElementaryGard

やがてテレビアニメに参入したどのスタジオも、低賃金化していった。

2015-04-05 23:41:25
It happens sometimes @ElementaryGard

津堅は >今日までアニメーターの給与水準が著しく低く抑えられてしまっているのは、『アトム』以降に新規参入してきたプロダクションの経営努力の有無や度合いにも、その要因を求めるべきではないのか。(p133)

2015-04-05 23:43:15
It happens sometimes @ElementaryGard

とこじつけていますが、大間違いです。給与体系が国ぐるみで混乱していた60年代にアニメの大量生産を始めてしまったら、誰がどう工夫しようともアニメ労働者の賃金や労働時間はやがてずたずたになる運命だった、と自分はみます。

2015-04-05 23:45:12
It happens sometimes @ElementaryGard

虫プロは国産テレビアニメの「先駆け」ではなく「例外」だったと考えるべきです。本当は70年代に始まるはずだった、人気まんが→テレビアニメ化→商品化印税で稼ぐやり方が、10年前倒しになってしまった。地盤が固まっていないところにゴールドラッシュでひとが押し寄せ、生態系が崩壊した。

2015-04-05 23:47:20
It happens sometimes @ElementaryGard

虫プロはゴールドラッシュを起こしてしまった。

2015-04-05 23:48:01
It happens sometimes @ElementaryGard

jiasu-jiasu-jiasu.at.webry.info/201111/article… 何度目かの紹介です。数年前に夏目房之介ゼミにおじゃまして、いわゆるキャラクタービジネスが日本のアニメをどう変えたのかをお題に話させていただきました。その席で『アニメ作家としての手塚』を批判したところ、夏目教授から

2015-04-06 15:26:49
It happens sometimes @ElementaryGard

「つまりくみさんは話を元に戻しているんだろ?手塚有罪説がまずあって、それが一度否定されたのを、また有罪説に戻しているわけじゃない」

2015-04-06 15:27:38
It happens sometimes @ElementaryGard

これ、ちょっとかちんときました。いえ質疑応答でこういう質問が来ることはもうわかってはいたんですけど、やはり直々に直球で聞かれると「またか…」と思うわけです。

2015-04-06 15:28:46
It happens sometimes @ElementaryGard

『ラストエンペラー』という映画があります。終盤で文化大革命が描かれます。毛沢東の肖像画を神輿にして街を行進する若き近衛兵たち。手には毛沢東語録。「造反有理、無罪革命!」 そして反動分子とされた男たちを見せしめにパレード。

2015-04-06 15:30:52
It happens sometimes @ElementaryGard

当人たちは自分たちの運動を新中国建設のニューウェイブだと思ってるわけです。元・皇帝で今は庭師をしているジョン・ローン溥儀は、そのパレードのなかに、かつて自分がいた監獄の所長が罪人として行進させられているのを目撃して思わず駆け寄る。

2015-04-06 15:32:36
It happens sometimes @ElementaryGard

紅衛兵は言い放つ。「こいつ?ああ修正主義者だ。保守反動だ。さあ毛主席に叩頭せよ。罪を告白するんだ!」

2015-04-06 15:33:42
It happens sometimes @ElementaryGard

若き紅衛兵たちのパレードは、そのままラストエンペラー溥儀の即位式に重なる。中国は何千年も同じことを繰り返している、新しい秩序の誕生だと信じながら…ベルトルッチ監督の中国史観。それが正しいかどうかは別として、史劇としては見事でした。 pic.twitter.com/r8ji3oFwri

2015-04-06 15:36:43
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

悪役として描かれる監獄の所長(画面右)が、実は一番人道的で合理的なひとだったと終盤で明かされる。 pic.twitter.com/DYol19heAA

2015-04-06 15:39:17
拡大
It happens sometimes @ElementaryGard

津堅説の信奉者がそのまま紅衛兵だと決めつけるつもりはありません。それは事実と違うのだし。ただ先に紹介したように「ようするに久美さんの説は手塚有罪説に『戻している』んだろう?」と言われると、なんだか紅衛兵に「保守反動め!」と決めつけられたような気にもなるわけです。

2015-04-06 15:57:07
前へ 1 2 3 ・・ 9 次へ