榎本武揚の「嫁」開陽丸

@ougi1515

今日は函館旅行で更に学んできた開陽丸について語ってみる。 開陽丸は私が昔から一番好きな軍艦。それこそ戦艦大和よりも戦艦三笠よりも戦艦武蔵よりも戦艦朝日よりも思い入れは別格扱い。小学生の時に年末時代劇スペシャル「五稜郭」で知ってからずーっと好きでいる軍艦。でもあまり知られていない。

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開陽丸。 別名、榎本武揚の嫁(咸臨丸にぶちギレた勝海舟の奥さんとは違いこちらは榎本の奥さん半分公認) 日本最強の木造シップ型フリゲート艦にして徳川幕府海軍旗艦で徳川家の最後の切り札にして最終兵器…しかし実際は天然ボケのドジッ子軍艦。そう言っても全然過言じゃない軍艦です。可愛い。

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開陽丸はオランダ語でフォールリヒター、夜明け前という意味で北斗七星の第六星から「開陽」という名前を貰っている。 オランダのドルトレヒトのヒップス造船所で三年かけて建造した。幕府は開陽丸の発注と共に留学生を派遣した。それが榎本武揚や沢太郎左衛門達15人の留学生である。

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特に榎本と沢は設計から備砲の選定、進水、帰国まで苦楽を共にした。元々開陽丸という名前も榎本提案である。 デンマーク戦争を視察した榎本らはドイツ製最新大砲のクルップ砲の威力に仰天し開陽丸の主力武器に決めた。開陽丸は実に18門ものクルップ砲を搭載する世界でもトップクラスの軍艦だった。

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1865年。ついに開陽丸は完成。 全長70m、排水力2600t、三本マスト帆走、410馬力の蒸気機関を取り付け最速12ノットで走った。 9月14日に進水式が敢行され多くのドルトレヒト市民が集まった。地元新聞にもデカデカと掲載されオランダ海軍の方からも開陽に勝る船はないと言わしめた

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しかし冒頭で言ったように開陽丸、ちょっとドジッ子のきらいがある。 まず進水式の時に勢い余ってロープを引きちぎり川の対岸に乗り上げる事故を起こしている。地元新聞にそれは一切書かれてなく「ここまで順調な進水式は小さい船でも難しい」と気を使われていた。 そしてめちゃくちゃな雨軍艦だった

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日本への帰国時、暴風雨に合う。これからこの軍艦は何度も雨と嵐に合う。 そして船首につけるはずだった葵の御紋がまさかのハートマーク３つになっていた。 日本回航前から色々やっちゃってる開陽丸だが1867年春に榎本達を乗せて帰国。オランダ留学生達からしたら開陽丸はまさに夢の結晶だった。

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さて日本の夜明けを期待された開陽丸。帰国してすぐに幕府海軍の主力に就任。だが間も無く徳川幕府は大政奉還して江戸幕府は滅亡。王政復古で徳川家の処分が決まるといよいよ薩長勢力との緊張が高まっていく。 ここまで開陽丸は一戦の実戦も経験していない。ほとんどぶっつけ本番で戊辰戦争に突入する

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幕府海軍。当然ながら軍艦は開陽丸だけではない。ここで一部紹介しよう。 回天丸…就役10年のプロシア製軍艦。外輪式エンジンだが400馬力を出す。 蟠龍丸…元々は英国王室のヨットだったのを幕府が買い取って軍艦に改造。 千代田形…日本初の国産軍艦。量産型の為小さいが巨大大砲を備える。

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咸臨丸…太平洋を横断した船。この時はすでに老朽化し練習艦兼輸送船だった。 富士山丸…開陽丸の前の幕府海軍旗艦。第二次長州征伐で活躍した大型艦。 長鯨丸…巨大輸送船。主に兵士を運んだ。 朝陽丸…咸臨丸の妹艦。姉の咸臨丸と違い現役軍艦兼練習艦。 神速丸…名の通り機動性に富む輸送船。

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開陽丸は大政奉還の時、回天丸と朝陽丸と共に江戸湾にいた。 しかし戦争に持ち込みたい薩摩藩が徳川慶喜挑発の為、江戸で強盗放火を働くと幕府軍の一部は報復に薩摩藩邸を焼討した。薩摩藩士達は薩摩藩船の翔鳳丸に乗って江戸を脱出。開陽丸は２艦と共にこれを追跡砲撃したが、翔鳳丸は大坂に逃れた。

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これを追って開陽丸は富士山丸、蟠竜丸、翔鶴丸、順動丸と共に大坂湾の警備に就いた。 1868年1月2日、兵庫港を出港した薩摩藩の平運丸に対して開陽丸は空砲で停船を命じたが平運丸は逃走。万国公法では停船に応じなかった軍艦は砲撃撃沈しても問題ないとされているため開陽丸は実弾砲撃を敢行。

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薩摩側は抗議をしたが榎本は突っぱねる。この砲撃が鳥羽伏見の戦いの前哨戦となった。 鳥羽伏見の戦い開戦の翌日、1月4日、薩摩藩の平運丸は明石海峡、春日丸と翔凰丸は紀淡海峡に向けて出港。これを発見した開陽丸は停船空砲を放つも無視した為ここに日本史上初の軍艦戦である阿波沖海戦が勃発する

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開陽丸は春日丸と翔凰丸を追撃。25発の砲撃を加えた。応戦した春日丸は18発の砲撃を行ったが両陣営1発しか当たらなかった。 春日丸は帰還が目的であったため戦闘を継続せず開陽丸よりも速力が速かったので戦闘離脱。途中機関故障のため由岐浦の岸に乗り上げた翔凰丸は拿捕される事を恐れて自爆。

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薩摩側の記録では引き分けになっているがほとんど幕府海軍の勝利と言っても過言ではない戦果だった。 ちなみに後の日本海海戦の英雄、東郷平八郎が春日丸の３等士官としてこの海戦に参加している。開陽丸に１発当てた砲弾も東郷が撃ったとしている本もあるがこれはフィクションである。

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開陽丸の大砲は、クルップ砲18門、ライク滑腔砲6門、ダールグレン砲9門。 この中で一番強力なのがドイツ製クルップ砲18門。 戦艦大和で言えば46センチ砲18門あるみたいな感覚でいいよ。私は大和には詳しくないから何門あるとか全然知らないんだけどさw

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さて海では勝利した旧幕府軍だが陸の鳥羽伏見の戦いでは惨敗だった。榎本は状況確認の為、開陽丸を離れて大坂城に入るが入れ違いで徳川慶喜が開陽丸に乗船。船長不在で江戸に帰還してしまう。 榎本はやむ無く富士山丸で帰還。その後幕府の海軍副総裁に就任し品川沖の旧幕府艦隊の指揮を任せられる。

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この時勝海舟が幕府の実権を握り小栗忠順、大鳥圭介ら主戦派を退けた閣僚配置をする。 陸軍総裁…勝海舟 陸軍副総裁…藤沢次謙 海軍総裁…矢田掘鴻 海軍副総裁…榎本武揚 会計総裁…大久保一翁 会計副総裁…成島柳北 国事務総裁…山口直毅、河津祐邦 多分、ほとんど皆知らない方々だと思うw

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新政府軍は榎本ら幕府艦隊に武装解除を要求するが禄を失った幕臣の将来を憂いでこれを拒否 そして8月19日、開陽丸を旗艦とした榎本幕府艦隊は品川沖をついに脱走。奥羽列藩など敗残兵をまとめあげ10月12日に蝦夷地に上陸する この時も開陽丸は房総沖で暴風雨に遭い艦隊は散り散りになってる。

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11月15日、松前藩攻略のため開陽丸は江差へ出撃。しかし開陽丸が江差についた時はほとんど戦闘終了しており陸軍を待つだけだった。開陽丸は錨を降ろすもここで榎本武揚、旧幕府勢力からすると痛恨の事件が起こる。 この時の江差の天気は天気は曇りだが波穏やか。しかし夜半に暴風雨となった。

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また江差の海底の岩盤が錨を弾き開陽丸は波に翻弄されついに座礁。助けに来た神速丸も巻き込んで江差の海に消えた。榎本、土方の落胆凄まじく江差に今でも二人が泣きながら悔しがった「嘆きの松の木」という松が残っている。 榎本は「開陽を失うのは闇夜で提灯を失うのに等しい」と言ったという。

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嘆きの松 イメージで言えばこーんな感じ pic.twitter.com/eQ87ZSbJvS

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そこからは早かった。開陽丸を失った旧幕府勢力は蝦夷地における制海権、蝦夷地統治（蝦夷共和国）の重要戦力を失ったと同じで中立を保っていた欧米列強は新政府軍に味方する。 最終的に蝦夷までいった幕府軍艦で残った軍艦は無かった。千代田形丸は拿捕、回天丸、蟠龍丸（後改修し雷電）は自焼した。

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開陽丸には唄がある。オランダのヒップス造船所で作られた開陽丸進水式の唄である。無論オランダ語の唄である。 「 来たれ友よ いざや清き胸もて宴を祝わん 我ら今ここヴァンデルホルスト邸にあり 心合わせし名高きヒップスの匠たち 我ら日本のために開陽と名付けし船をば造りたり 」

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私が開陽丸を好きな理由はロマンがあるから。開陽丸が沈む沈まない云々の前に沢や榎本らが青春を夢を開陽丸にかけて蝦夷へ渡ったというのが私の胸をうつ。 確かに大した活躍は出来なかったかもわからないが開陽丸は我々にとって夢の軍艦である。それは150年経った今でも変わらないだろう。