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orikadoyuki
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@orikadoyuki 「…………ホントにそう思ってるなら」 はぁとひとつため息をついて。 「……最初から本気で言ってよ、もう。ずっと冗談だと思って、その。不真面目に対応しちゃったじゃない」 彼の言葉は、真摯な気持ちだったというのに。 「うう……」 頬が熱を帯びるのが分かる。
2015-07-15 16:59:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「そんな可愛い顔を見せてくれるなら、確かに、最初からハッキリ告白しとけばよかったかもな」 軽口を叩いてから、グラスに視線を落とす。 「冗談だと思われた方がいいと思ってな。どうせこの先の10年、おれはこの世界から消えちまうんだから」→
2015-07-15 17:05:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「おまえさんのこれから生きる時間におれはいないんだ。そんな人間が、愛の告白だなんて重たいモノ、ぶつけていいとは思えない。おまえが欲しいだなんて、口が裂けても言えねえ」 だから求めない。 冗談に隠して想いを告げて、消える。 彼女の10年に、関わらない。→
2015-07-15 17:17:13![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「いつか、おまえさんがおれの国に来てくれたら。もしも、そのときおまえさんが独り身だったら。そんときは、ちゃんと告白してみよう。なんてことを、考えてた。 その水晶玉には、そんな下心が隠れてたってわけだ。幸せを祈るとか言っといて、悪い男だろ?」
2015-07-15 17:26:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 「……」 そうだ。 ハーレーさんは10年先の未来から来たのだ。 「だから、黙ってたの?」 わたしを傷つけないために。 ……そんな優しいひとが、悪い男であるはずないのに。 ……ただ。 「……ハーレーさんてもしかして、気は多いけど、実は奥手なの?」
2015-07-15 18:04:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「奥手?おれが?」 意外すぎる評価に、声が裏返ってしまった。 「よしてくれよ。おれは自分が一番楽しめるやり方を選んでるだけで、もしそうしたいと思ったら、初対面でもベッドに誘う男だっつうのに」 だから、今回も。自分がしたいと思う通りのことをしたのだ。
2015-07-15 22:59:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 「じゃ、臆病なのか薄情なのか。……いや、まあこれはわたしの考え方のせいなのかもしれないけれど、大好きって、愛してる、って、わたしの中では相手を思いやる余裕なんてないような状態だから。……気を悪くしたらごめんなさいね?」 でも、その想いは聞きたいのだ。
2015-07-16 00:57:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「思いやるってほど大袈裟な話じゃなくてな。相手が楽しそうな方が自分も楽しいんだ、おれは。だから、もし10年後に会えるのなら、そんときおまえさんには人生楽しんでて欲しいと思う。それを邪魔したくなかったんだ。おれの会いたいおまえさんに、おれが会うために」→
2015-07-16 01:34:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 自分にとって、大戦時代からの10年間は、とても色濃いものだった。たくさんの楽しみや、幸せや、宝物を得た。 アヤメの10年にも、同じように、たくさんのお楽しみがあるはずなのだ。それをめいいっぱい楽しんで欲しい。楽しんだ彼女を見てみたい。 そう思ったのだ。
2015-07-16 01:38:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki この人は、そんな難題をあっさりと言えるような人なのだ。 わたしにとっての愛は、胸が高鳴り、相手のことを思うよりも自分の想いを貫きたい。そう心から願ってしまう状態で。 きっと彼だってそれは同じなのだろう。 それでも、彼は平然と相手を優先できるのだ。(続)
2015-07-16 02:00:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 大袈裟ではないと彼は言うけれど。 なんだか、とても大切にされている。そんな感覚を抱かずにはいられない。 「……10年経ったらわたし、35よ。その頃にはもう、ハーレーさん好みの若い女じゃない。それに分かってるの? 特定のひとりを愛するってことは、つまり」
2015-07-16 02:09:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「他の女に色目使っちゃいけないよな。はっ。そんなもん、ためらう理由になるかよ。歳だって、近くなってちょうど良いじゃねえか。つうか、おれは特別若い女が好きなわけじゃないぞ?」 誰情報だよ、とぼやく。→
2015-07-16 09:32:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「お宝を手に入れられるのは、手を伸ばした人間だけだ。おれは手を伸ばした。あとはおまえさんが、この手をとるか、とらないか。それだけだ。 今すぐ決めなきゃならん話じゃない。10年なんておれには明日の話だしな。もちろん、決めないまま忘れちまうのも選択肢だ」
2015-07-16 09:40:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki もう。もう。 いつも飄々とした貴方にそんな顔で見られたら、どう反応していいか分からないじゃない。 まっすぐで、強い。大切に思われていることを肌で感じる。 顔に昇った熱がずっと引いていないような感覚。 多分、わたしも。 惹かれている。この人に。(続)
2015-07-16 10:36:35![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki けれど今すぐにこの手を取れるかと言われれば、無理だ。 わたしにはまだ、心の奥底にお父さん……ツワブキへの想いが残っている。 もしも今求められたら、わたしは多分それを受け入れてしまえるだろう。 でもそれは貴方に、ハーレーさんに対して不実な気がして。(続)
2015-07-16 10:45:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki だからその手を握って、握り返される前にそっと離す。 「……今、貴方と手を握り合うことはできない。だから、ごめんなさい」 「10年、待たせてしまうわ。それでもいい?」 自分で思うよりもすんなりと、その言葉は口をついて出た。
2015-07-16 10:58:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 手と手が触れた途端に、理性で抑えている欲求が鎌首をもたげかけた。この手を引き寄せて、抱き締められたら、どんなにか心地よいだろう。 (逃げるな。自分で決めたことだろう) そう胸のうちで呟いたのが、彼女が手を離す前でよかった。でなければ格好がつかない。→
2015-07-16 12:07:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「言ったろ。10年なんておれには明日だ。だから、待たせてるなんて思わなくていい」 今夜のこの会話が、彼女のこれからの負担にならないことを切に願いながら、言葉を探す。 「楽しんでくれ。これからの10年を。めいっぱい楽しんで、それから、答えを聞かせてくれ」
2015-07-16 12:22:01![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 10年。わたしが、いや。 アヤメ・アヅマが、その命を落としてから今日まで、よりも長い時間。長いのか目まぐるしく過ぎるのか。想像もつかない、わたしにとっての未知。 あるなんて考えもしなかった未来。 どうなってるかなんてわからない。 「今日のところは」(続)
2015-07-16 12:46:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki そっと、先ほど指で弾いたその額に顔を寄せて、軽くそっと、触れる。 「今日のところの気持ちは、こうだから。精々、わたしが貴方のこと忘れたり、気にしなくならないように、祈っておいて?」 きっと林檎のように紅潮しているであろう顔を背けて、呟いた。
2015-07-16 12:48:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「っ……!」 さっきは手に触れただけで理性が傾いたというのに、こんなことをされたら、また……。 「お、おお…!今のでさっきの痛みが消えちまった!やっぱりおまえさんのキスは傷に効くなあ」 軽口を叩いて、なんとか自分のペースを取り戻す。→
2015-07-16 20:14:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「最初が口で、次が頬で、今夜は額か。次はまたお口でキスできるように、神様に祈っておくかな」 せっかくの雰囲気をぶち壊しにしそうな言葉を口にして、からからと笑った。 自分の頬にも僅かに朱が差していることにも気づかずに。
2015-07-16 20:20:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 「口は人工呼吸だからノーカウントに決まってるでしょ?」 もう、とため息をついて、そこでほんのり紅い頬に気がついて。 「もう一回生死境を彷徨いたいなら、お腹にあなあけちゃうわよ?」 照れたように、笑う。
2015-07-16 21:12:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@yakan_r_pod 「なんだ、そんなに人工呼吸してえのか?……くくっ、だめだ、自分で笑っちまう」 ああ、楽しい。楽しくてたまらない。 ここにいるだけで幸せを感じてしまう。 胸が高鳴って仕方ない。 「もう一度乾杯しようや。食べ頃の林檎みたいな可愛い顔した女魔法師に、乾杯だ」
2015-07-16 23:52:35![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@orikadoyuki 「まーだーしーてーなーいってーこーとー!」 その唇をグリグリと指で押す。 微笑とも苦笑とも取れるような笑みをこぼし。 「一体何度目? ……じゃあ、桃みたいにほんのり紅い未来のガンマンさんに、乾杯」 こつんと、グラスを鳴らす。
2015-07-17 08:00:19