黄昏町(柊)五日目

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@hiiragi_r_t_d

「お仲間は来なかったなぁ?今の気分はどうだバケモノッ!」 「いいえ…来ますよ」 「ハァ?」 25 #hollytk

2015-07-27 00:26:03
@hiiragi_r_t_d

「必ず、誰かがここに来ます」 「訳分かんねえなぁ!もういい、燃えちまえよ!」 少年が新しいマッチを擦った。私に出来ることはもう何もない。 「あばよ、バケモノ」少年がマッチを放り投げたのと、路地裏から人影が現れたのはほぼ同時だった。 26 #hollytk

2015-07-27 00:27:15
@hiiragi_r_t_d

その人影は猛スピードでこちらに向かってきている。しかしその進路上には落ちるマッチとガソリンの水たまり。 「危ない!」 私は思わず叫んでいた。私が燃え死ぬのも嫌だが、見ず知らずの私を助けに来てくれた人を焼死させるのもあんまりだ。 27 #hollytk

2015-07-27 00:28:04
@hiiragi_r_t_d

しかし私の叫びも虚しく、その人影は炎に包まれ、その炎はガソリンを伝って私をも焼き殺さんと…………あれ? 炎は私にもガソリンにも引火せず、彼女の周りに現れた火の玉に吸収されて消えた。 私と少年たちの間に立ち止まった人影を、私は呆然と見上げる。 28 #hollytk

2015-07-27 00:29:03
@hiiragi_r_t_d

その人影は少女であった。 年は私より下だろうか。少し小さな男物の服に押し込められた、発育の良い体は窮屈そうだ。主に胸が。 29 #hollytk

2015-07-27 00:30:16
@hiiragi_r_t_d

伸ばしっぱなしの黒髪で隠された顔と、そこから僅かに覗く、静かな眼差し。 不敵な笑みを浮かべた口元には研ぎ澄まされた牙がずらりと並び、眉間からは鋭い角が飛び出していた。 30 #hollytk

2015-07-27 00:30:41
@hiiragi_r_t_d

マッチがたまたま空中で消えたと思ったのだろう。突然の乱入者に対しても少年たちは自分の優位を疑わない。 31 #hollytk

2015-07-27 00:31:50
@hiiragi_r_t_d

「運のいいヤツだ。二人まとめてウェルダンにしてやるぜ!」 ガソリンをかけているからフランベでは…そんな益体のない思考を巡らせてしまうのも、彼女の持つ圧倒的な威圧感と、その矛先が私に向いていない安心感ゆえだ。 32 #hollytk

2015-07-27 00:32:56
@hiiragi_r_t_d

「そらっ!」 バケツ少年がガソリンをぶちまけ、間髪入れずにもう一人の少年がマッチを放り投げる。 一歩間違えれば彼ら自身も炎に巻かれてしまう綱渡り。それをここまで迷いなく行うということは彼らはそれなりに長い間バケモノ狩りを続けていたのだろう。 33 #hollytk

2015-07-27 00:33:35
@hiiragi_r_t_d

しかし彼女は動じない。 ガソリンを浴びた手で火のついたマッチを掴み取り、そのまま握り潰した。 「………まだやる?」 34 #hollytk

2015-07-27 00:35:54
@hiiragi_r_t_d

「ったりめえだろうが!もう一回だ!行くぞ!」 「いやいや、あれは無理だろ。帰るぞ」 「はあッ!?テメエ目の前にバケモノがいるのに尻尾巻いて逃げんのかよ!?」 「じゃあ勝手にやってろ。俺は帰るぞ」 35 #hollytk

2015-07-27 00:36:37
@hiiragi_r_t_d

かなわないとみたのだろう。少年はバケツを置いて歩き去っていった。 「チッ…命拾いしたな!デカい方のバケモノ!今度会ったらぜってぇー燃やす。覚えとけよ!」 マッチ少年も捨て台詞を吐いて一目散に逃げて行く。 …案外、バケツ少年の方がリーダーなのかもしれない。 36 #hollytk

2015-07-27 00:37:54
@hiiragi_r_t_d

「……立てる?」 全力で笛を吹いたせいか、どうにも手足に力が入らなかった私は彼女の手を借りて立ち上がる。 「あ、ありがとうございます」 「別に。気にしなくていい。」 「いや、そういう訳にも……何かお礼を」 37 #hollytk

2015-07-27 00:39:02
@hiiragi_r_t_d

「本当にいいから。」 「そう、ですか………」 もうこれで用事は済んだとばかりに彼女は踵を返し、てくてくと歩きだした。 何か、何か話さなくては。 38 #hollytk

2015-07-27 00:39:36
@hiiragi_r_t_d

何か………なにかが引っかかる……… 「あのっ…どうして私を助けようと思ったんですか?」 ………失礼な事を言ってしまったかもしれない、などと思っても後の祭りだ。 39 #hollytk

2015-07-27 00:41:27
@hiiragi_r_t_d

しかし彼女は気分を害した様子もなく、くるりと振り向いた。 そして私の右腕に懐かしむような目を向け、静かに微笑む。 「ふふ……私も君も、運がいい」 「えっ……?」 40 #hollytk

2015-07-27 00:42:27
@hiiragi_r_t_d

思わず聞き返した私にいたずらっぽい笑みを返すと、彼女は暮れゆく町を東へと去っていった。 「あ…………名前、聞きそびれたな……」 私は彼女が角を曲がって見えなくなるまで、その場で立ち尽くしていた。 41 #hollytk

2015-07-27 00:43:18
@hiiragi_r_t_d

──────── 【四日目】 【焼かれかけたがしかなさん( @RiverInWestern )のとこの子に助けてもらった。】 【魂8/力3/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2) 【持ち物】壊れた犬笛(使用済み/死亡で消失) 42 #hollytk

2015-07-27 00:45:11
@hiiragi_r_t_d

[町]屋根の上からかかる液体。ガソリンだ。少年達がマッチを手に、君を見下ろす。《異形1つ以下なら保護or火耐性所持で脱出【魂+1】、異形2つ以上で焼死【魂-2/『火玉(火耐性、探索+1)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-07-27 00:46:06