近侍当直部屋日誌II

近侍当直部屋 @bury_ido

光忠「長谷部くんが内番に出ている間、僕はお風呂入ってようかな。ちょう豪華にのんびり入っちゃおうかな。本とか読みながら」 長谷「この部屋に本はない」 光忠「いつも読んでたのは？」 長谷「共用の書庫だ」 光忠「……」 長谷「部屋から出るなよ。絶対に出るな」

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長谷「風呂は一人で入れるか」 光忠「入れる入れる。なんか路頭に迷ったイケメンを保護したばかりみたいな口ぶりだね」 長谷「自分でイケメンとか言うな」 光忠「……一緒に入ってあげても、……いいんだよ？」 長谷「ほう？」 光忠「あれ、え、待って、今のはちょっと囁きボイスを試しただけで」

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光忠「ふんふふーんふーん……ふっ！？」 長谷「…………」 光忠「な、なんでお風呂覗いてるんだい、ちょ、破廉恥だよ！？！！？？」 長谷「お前が溺れていないか心配で……」 光忠「溺れないよ！」 長谷「初めて入った日は溺れただろう」 光忠「体の大きさが！　違うから！！　内番行きなよ！」

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長谷「何かしたいことはあるか」 光忠「ん？ んー……え、この部屋で？」 長谷「当然だろう」 光忠「この部屋で……できること限られてるよねえ」 長谷「必要なものがあれば手に入れるが」 光忠「んー、……そうだね、その刀。長谷部くんを貸して」

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長谷「折るなよ。……何に使うんだ」 光忠「うーん、派手なんだねえ。んん、……ぐぬぬ」 長谷「待て待て待て。まさか抜き方も知らんのか。貸してみろ」 光忠「ああ、鮮やか鮮やか。ふうん。……僕はついぞ誰にも触れられなかったからね。やっと手に取ってもらえたと思ったら折られた」

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長谷「……悪かったな」 光忠「そんなふうに憐れまないでよ。僕はねえ、人を斬るのもままならないけれど、……君を慰めることならそれなりだよ？　それに、……うん。……ねえ、鋏に切れて刀に斬れないものってなーんだ？」

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光忠「それで、だ。僕のやりたいことはこれ。刀の振り方を教えて。君たちのしていることに少しでも近づきたいんだ。……それが本来の僕たちのありようだからね」 長谷「この部屋の中でか」 光忠「出してもらえないんだろう？」 長谷「……。…………模造刀……いや、竹刀でも探してこよう」

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長谷「出陣してくる」 光忠「いってらっしゃいー（ぶんぶん）」 長谷「あまり暴れるなよ。刀として張り切るのは構わないが……」 光忠「大丈夫大丈夫。……（じー）」 長谷「なんだ？」 光忠「君が着替えている音を聞くのが好きだったんだよね。防具をつける音も。……その服、好きだよ」

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長谷「戻った」 光忠「あ、おかえりー。返り血もかっこいいね。うんうん、お父さん最高」 長谷「……？　何か隠してないか？」 光忠「ううん何も。なんでもないよ」 長谷「ずっと素振りしていたのか」 光忠「ああ、ね。うん。刀を振り回すのは楽しいよ。いいウォーミングアップになったかな」

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長谷「……ああ、よく見れば腕に切り傷が」 光忠「手入れ行っちゃう……？」 長谷「必要ない。軽傷にもならんわ。……なぜ分かった」 光忠「君の血の味がしたから」 長谷「だからなぜ」 光忠「……僕を折って埋めたとき、君は手を切ったじゃないか。縋って泣いて。……鶴さんも切ってたけど」

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光忠「あの頃のことは記憶も曖昧だけどねえ。さすがに忘れられないよ」 長谷「……その顔で言われると罪悪感が募る」 光忠「普通逆じゃない？　小さい子の方が」 長谷「なんでもないような笑い方するからだ。……着替えたら茶でも持ってくる。待ってろ」 光忠「君だって」

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鶴丸「よっ、驚いたか？ 俺だぜ！」 光忠「鶴さんだ」 鶴丸「！？ これは驚いたぜ。まさか桜か？」 光忠「そうそう。二振り目の燭台切光忠だよ、久しぶりだね」 長谷「何をしに来たんだ」 鶴丸「いやなに、へし切が運ぶ食事の量が多かったんでな、二匹目を拾ってきたのかと」 光忠「にひきめ」

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鶴丸「まさかこの三人で茶を飲む日が来るとはなあ……ずず」 光忠「お茶を飲める体になるとは……ずずず」 鶴丸「あー、トランプでもするか？」 光忠「何それ」 長谷「ああ、目がないとできないからな。持ってこよう」 鶴丸「へし切がトランプを借りに来るとか……表ではどんな騒ぎになるかね」

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光忠「……神経衰弱とかいう胃が痛くなりそうな名前のゲームが二人とも異常に強くて僕の番が回ってこなくて暇」

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長谷「次はババ抜きでもするか」 光忠「え、それ使わないの？」 長谷「ジョーカーは二枚あるからな。片方は使わん」 光忠「ふうん、……使われないんだ。せっかく二枚あるのにね」 鶴丸「……」 長谷「……」 鶴丸「神経衰弱にしようぜ」 光忠「それはつまんない」

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鶴丸「ふぃー……おかしいな、こいこいってこんな熱中するものだったか？」 光忠「なんかルール難しいね」 長谷「いいか、世界を救うにはこいこいくらいできないといけないんだ。特に夏は」 光忠「？？？」 鶴丸「さて、俺はそろそろおいとまするかね。邪魔しちゃ悪いしな」 光忠「またね鶴さん」

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長谷「光忠。……起きないな。……部屋が静かだ。……」

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長谷「お前が眠り続けるのは変わらんのにな。寂しい気がしない。……不思議なものだな、光忠」 みつ「ん、……んん、…………あーおはよーございま」 長谷「ああ、おはよう」 みつ「う……あ、服着てない」

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みつ「どうだったー？ 大きいぼく」 長谷「ん、ああ、楽しかったぞ」 みつ「ちょきちょきぎゅっぎゅした甲斐あったねー」 長谷「ああ。……目隠し、きつくないか」 みつ「ちょっとゆるいかなー。そっち向く？ ぼくねーはせべくんのおひざ好きだよっ。向かいあって座るのとか」

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みつ「ごちそーさまでしたっ」 長谷「それじゃあ食器を片付けてくる。いい子にしてろよ」 みつ「いってらっさー。……ひまー。……っ！？　、や、なに、……はせ、……はせべくん、たすけ、……えう、……いない、……ひうっ、なに、」

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長谷「戻ったぞ。この後出陣の支度を……」 みつ「ふっ、……ぇぐ……、ひ、……はせべくんたすけ、」 長谷「……何をしているんだ。毛布から出てこい、まるで大福だぞ」 みつ「な、なにかいたの、……なにか耳のとこで、……パタパタって、……えう、やだ」 長谷「……ああ、アゲハ蝶がいるな」

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長谷「俺と入れ違いに迷い込んだんだろう」 みつ「……君もとじこめられちゃったんだね」 長谷「扉を開け放すわけにもいかんしな。捕まえて逃がしてくる」 みつ「……。……飼わないの？」 長谷「飼いたいのか」 みつ「ちょうちょは嫌いだけど……ひうっ、やーあーーー」 長谷「懐かれてるな」

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みつ「……びくっ」 長谷「…………」 みつ「…………びくっ」 長谷「翅がパタつく度に驚くくらいなら、虫かごから離れればいいだろう。嫌なら逃がしてくるが」 みつ「ちょうちょは嫌い」 長谷「分かった。逃がそう」 みつ「でも飼うの。この子はねえ、道を逸れて飼い主に出会えたんだよ。ね？」

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長谷「もういい加減に寝ろ」 みつ「はあい。今日もしゅめーえらかったねーいいこいいこー」 長谷「……いいこいいこはもうしなくていい」 みつ「え、いいの」 長谷「ああいいんだ。……もう。さあ寝るぞ」 みつ「…………」 長谷「どうした？」 みつ「なんでも、ない」

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長谷「お前は体温が高くて、この季節には暑いな」 みつ「……」 長谷「ほら、もっとこっちに来い。寝るぞ」 みつ「……うん。……おやすみなさー…………」 長谷「ああおやすみ。…………zzz」 みつ「あつい？　…………わかんない。あったかさとか」