ワクチンや 治療方法 開発へ~BSL4稼働について~
(1) 感染研のBSL-4施設稼働に向けた動きのニュースの中で理研つくばのP4実験施設が引き合いに出されているけれど、あれは病原体の研究とはちょっと趣が違う施設なのでは無いだろうか。
2015-08-03 20:18:52(2) 理研つくばのP4実験施設の完成は1984年。当時の組換えDNA実験の安全性確保のためのガイドラインは科学技術会議の「組換えDNA実験指針」であったと思う。因みに、ヒトDNAを使った組換え実験の物理的封じ込めレベルは1979年のNIHのガイドラインではP4だった。
2015-08-03 20:27:37(3) この物理的封じ込めレベルは、組換え実験のリスクが評価されて見直され、組換えDNA実験指針の改定が進むうちにどんどん下がっていった。組換えDNA実験指針では最終的にはP1レベルまで下がり、普通の理科実験室程度の設備でも実験できるようになった。
2015-08-03 20:30:10(4) 組換えDNA実験指針は、平成16年のカルタヘナ法施行によってその歴史的な役割を終えている。現在のカルタヘナ法に従った拡散防止措置のレベルでは、大腸菌を使ってヒトDNAをクローニングするだけならP1レベル。ウイルスベクターを使う場合でもP2(あるいはP2A)レベル程度。
2015-08-03 20:34:21(5) つまり、科学的な事実が積み重なって実験の安全性が確かめられるにつれて拡散防止措置のレベルは下がっていったということ。なので、通常の遺伝子組換え実験を行う目的であれば、理研のP4実験施設は、稼働する前にその役割を終えてしまったとも言える。
2015-08-03 20:36:52(6) 次に今、理研のP4実験施設で危険度の高いヒト病原体を扱えるか?という点について考えてみたい。 理研に感染症の研究者は居るか? 中長期目標で感染症研究を行うことになっているか? あの施設は「今の」BSL-4の施設要件に合っているか? 感染症法に基づく大臣の許可を得た施設か?
2015-08-03 20:43:55(7) どれも、すぐにOKではないだろうし、実際にBSL-4で施設を運用するには、その実験区画に立ち入る人のトレーニングや安全管理部門のトレーニングもしておかないと、危急の際には対応できない。 よって、理研のP4をBSLー4で運用するのはかなりハードルが高いだろう。
2015-08-03 20:47:28因みに、理研の資料はこちら。 riken.jp/~/media/riken/… これによればP4レベルでの実験の実績もあるとのこと。 ただし、今では通常はP2レベルで行える実験になっている。
2015-08-03 20:50:54これ↓ については理研の資料p.284にP4実験の記録がありますので、それを基に謹んで訂正いたします。 誤「稼働する前にその役割を終えて」→ 正「9ヶ月の実働でその役割を終えて」 twitter.com/Dominique_Domo…
2015-08-03 20:58:12理研のP4実験施設の経緯についてはそんなところ。 しかし、そういう過程の中で住民参加で研究所のリスクコミュニケーションがおこなわれてきたとか、実験の積み重ねを通じて安全性が確認されてきたということは、日本の研究者にとって歴史的なできごとなのだよね。
2015-08-03 21:02:04一方で、感染すると致死性の高い病原体は、科学的な知見が集積してもやっぱりリスクが低くなる訳ではないので、感染研のBSL-4の周辺住民への影響に着いての説明にあたっては、理研のP4施設とは別の観点からの説明が必要であろうと思う。
2015-08-03 21:10:16んん?
BSL4が感染症対策のためのものであることはわかるんですが、なぜ遺伝子組み換えのためにそこまでの施設が必要だったんでしょう。
@Dominique_Domon ウイルスや細菌が危ないのはわかるんですが、遺伝子組換えが危ないのはなんでですか?
2015-08-03 21:17:16@Butayama3 まず「遺伝子組換えが危ない」と言い切っちゃうのは、かなり語弊があるので「歴史的にはリスクが高いと見なされてきた」、という変換を行っちゃいます。 (いいのか?)
2015-08-03 21:19:55@Dominique_Domon ああ、なるほど。はい。そこからスタートで。(・∀・)
2015-08-03 21:20:53昔々、と言っても1975年の事ですがカリフォルニアのアシロマという街で28か国から150人ほどの科学者が参加して、世界で初めて遺伝子組換え技術の安全性を議論するための科学者による自主的な会議がもたれました。これをアシロマ会議と言います。
2015-08-03 21:23:27資料はこちら↓ dbarchive.biosciencedbc.jp/archive/diam_s…
2015-08-03 21:24:52で、遺伝子(組換え)研究の萌芽期のことだったので、どんなリスクがあるかまだ判らないという科学者自身の判断で予防的に組換え生物を環境中に放出しないためのガイドラインを作るべし、と申し合わせをしたのがアシロマ会議。 それを受けてNIHのガイドラインが公表されたのが1976年。
2015-08-03 21:30:02その後、日本でも組換えDNA実験指針が制定され、見直しを踏まえて規制が緩和されてきた経緯は先ほど述べた通り。 ・・・なんですけど、科学者はアシロマ会議の昔から"バイオハザード"という想像上の最悪の事態を想定していたんですね。
2015-08-03 21:35:17そのイメージが一人歩きし始めたのが、今日の遺伝子組換えは危険だという印象の始まりではないかと思います。 思いこみは、科学的な知見ではアップデートされませんから。
2015-08-03 21:36:37なお、1970年代後半の時期のバイオテクノロジーに対する印象というのは最悪でこんな感じ↓ domon.air-nifty.com/dog_years_blue…
2015-08-03 21:38:26ちなみに私が初めて組換えDNA実験に携わったのは1989年頃だったかな。 遺伝子組換え技術とのおつきあいは、もう四半世紀を過ぎてるのだなあ。
2015-08-03 21:42:57