近侍当直部屋日誌IV
- shositu_mitubot
- 4229
- 0
- 0
- 0
長谷「あーん」 みつ「……(ふいっ)」 長谷「食欲がないのか。熱は……」 みつ「ないけどー……。うー……食べても味分かんないのに……めんどくさい……。数時間後にはまたおなか空くんだよ? 意味ある??」 長谷「あるだろう。食べたものはちゃんとお前の体になるんだ。ほら」 みつ「……」
2015-08-17 18:48:54みつ「むぐ……むぐむぐ……」 長谷「(味覚、か。……なるべく食感がいいものを選んでいるつもりではあるが……一方的に食べさせられるだけでは飽きるか)」 みつ「……今食べたのなあに?」 長谷「焼いた油揚げだ。狐が好む」 みつ「ふうん。じゃーあぶらげさんは今日からぼくの一部だねー」
2015-08-17 18:54:03長谷「たぶんこいつは雌だろう」 みつ「えーーおとこのこだよー」 長谷「そうか?」 みつ「ぼくいま見えないけどーそうじゃない??」 長谷「むむ……明日、愛染国俊や蛍丸あたりに聞いてこよう。図鑑を何度見てもよく分からん」 みつ「おとこのこだよー」 長谷「わかったわかった」
2015-08-17 23:00:40みつ「ぼくはおとーさんしか知らないよ?」 長谷「……教育を間違ったな…………。いや男所帯だ、致し方ないか……」 みつ「うん? なんでもいーけどーもっとすりすりしてー」 長谷「はいはい」 みつ「うふふー」
2015-08-17 23:13:44長谷「この蝶はもう長くない」 みつ「ふうん。……最初にここにいた僕みたいに、よわってしんでいくんだね。かわいそうだね」 長谷「……。後で放してやるか。鳥の目のない夜にでも。最後にまた外の景色を見たいだろう」 みつ「うん……」
2015-08-18 13:55:02みつ「あんまりぱたぱたしなくなったね? ……死んじゃうの? ねえ。ひとりになっちゃうの?? ……ねえ。……ねえってば」 (……ぱた、) みつ「! まだ生きてたあ。……ねえね、このままひとりで死んでいくの、寂しいよね? ねえ?? 弔ってほしい? それとも、」
2015-08-18 15:38:13みつ「……うん。弔うことしか教わらなかったから、ぼくには、……。……弔うことだけ? ……だけじゃないね。もっと、おとーさんにもっといっぱい、」
2015-08-18 15:39:26みつ「ひとりじゃさびしいよね? ねえ、もっといろんなもの見たいね。いろんなこと知りたいね。……ねえ、もう一回お庭に出たい? ……ね。それじゃ、」
2015-08-18 15:40:10みつ「う、……うぇぐ、……。……ひ、……ぐすっ、……うう、…………おとーさん、……や、……たすけ、……かなしいよ、……さびしいよ、……げほっ、……おとーさんの言ったとおりにしたのに、……さびし、」
2015-08-18 15:43:58みつ「だってもう、籠の中には誰も、……。……うぇぐ。…………は、……はっ、……あぁ、……。…………悲しんじゃだめだね。ちょうちょくんも悲しくなっちゃうから。元気でいようね。そしたらだいじょうぶ。……だいじょうぶ…………ここにはいなくなっても、だいじょうぶ」
2015-08-18 15:46:13長谷「あーん」 みつ「…………」 長谷「どうした? 味がないと嫌か。今日のサラダには海ぶどうというのが入っていてな、食感が」 みつ「しょくよく、ない」 長谷「!? ……熱は。どこか痛いのか。何があった。悩みごとか。あああ小児科はないのかここにはっ、ど、どうしたら……!!」
2015-08-18 19:07:02長谷「……お前、」 みつ「ねーねーおとーさん。ぼくね、お外行きたいなあ」 長谷「光忠。ごまかすな。蝶はどこへやったんだ」 みつ「出してあげたよ? おとーさんが言ったんじゃん」 長谷「そ、……それなら、いい」 みつ「お外見せて? ね?? 見せてあげたくない??」
2015-08-18 19:17:18長谷「外出は考えてやるが、まずは夕餉を食え」 みつ「えー。ぼくはうきわはしないしゅぎなのにー」 長谷「浮気くらい言えてからだ、そんな台詞は。俺を脅すなど十年早い」 みつ「むー」
2015-08-18 19:19:24長谷「ああそうだ。蝶を逃がすためとはいえ、外に出るな」 みつ「でてないもんー」 長谷「扉を開けるのもだめだ。いつ誰が見ているか……」 みつ「開けてないもんー。……あ、うそついた。ちょーっとだけあけました」 長谷「これからは俺に言え。いいな」 みつ「りふじんー。……うー。はあーい」
2015-08-18 19:26:10