高嶌さん:デモ・スピーチに対するフェミニズム論争 あまり意識されない論点と現行法状況についての誤解

高嶌さんの連ツイをまとめました。
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TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

次に、現在の法状況に関する誤解についてです。  今回の議論で、セクシャルハラスメントの概念に言及されているツイートがいくつかありました。 セクシャルハラスメントという概念の広がりと定着が、従来の社会意識と社会規範を変えてきたとの指摘は全くその通りだと思います。

2015-09-03 19:59:25
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

セクシャルハラスメントの概念が一般に浸透したことによって、職場の就業環境や学校の学習環境は、格段に向上しました。そして、フェミニズム論者の「従来の性差意識は間違っている」との言説がこのような変化に寄与したことは明白です。

2015-09-03 20:00:16
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

ただし、法的な意味でのセクシャルハラスメント概念を誤解しているツイートがいくつか見られました。この点は事実認識として重要と思われますので補足します。

2015-09-03 20:01:05
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

一般に、セクシャルハラスメントとは、「相手方の意に反する性的言動」と定義されることが多いように思われます。この定義によれば、相手方の意に反する性的言動はすべてセクシャルハラスメントということになります。

2015-09-03 20:01:28
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

しかし、少なくとも現在の裁判実務における概念としてのセクシャルハラスメントは、この定義とは異なります。現在の裁判実務においては、「相手方の意に反する性的言動」のすべてがセクハラであると認定されているわけではないからです。

2015-09-03 20:02:02
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

むしろ、「社会通念上許容される限度を超える」場合にのみ、相手方の性的自由の侵害または人格権侵害に当たると繰り返し述べられています。

2015-09-03 20:02:10
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

最近の事案として、福岡地方裁判所平成17年3月31日判決を以下に挙げておきます。判決文の該当箇所は次の通りです。

2015-09-03 20:02:32
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

「当該行為の内容及び態様(発言内容,接触部位・時間,発言・接触の態様や程度),反復性・継続性,発言・接触行為の目的,相手方に与えた不快感の程度,行為の場所・時刻(他人のいないような場所・時刻かなど),勤務中の行為か否か,行為者と相手方との職務上の地位・関係等の諸事情を(続)

2015-09-03 20:03:01
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

(承前)総合的に考慮して,当該行為が相手方に対する性的意味を有する身体的な接触行為であって,社会通念上許容される限度を超えるものであると認められるときは,相手方の性的自由又は人格権に対する侵害に当たり,違法性を有すると解される。」

2015-09-03 20:03:39
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

また、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)が公表されています。

2015-09-03 20:07:05
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

この指針によれば、男女雇用機会均等法11条にいう「性的な言動」とは、性的な内容の発言(性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等)および性的な行動(性的な関係を強要すること、必要なく体に触ること、わいせつな図画を配布すること等)を指します。

2015-09-03 20:07:19
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

このように、本指針でも、単に相手方の意に反する性的言動であるというだけでセクシャルハラスメントになる、という定義は用いられていません。

2015-09-03 20:09:32
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

私見によれば、裁判所がこのような基準を提示するのには相応の理由があります。

2015-09-03 20:19:25
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

まず、相手方の主観的判断だけを基準にするルールは、事前防止機能が働きにくいことです。むしろ、こうした問題が起こらないようにしようとするなら、どこまでが違法な行為なのかをできるだけ客観的に明らかにしておき、啓発に努めていくのが適切です。

2015-09-03 20:20:08
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

(つづき)このような現状からすれば、社会的にこれらに対応するシステムがもっと整備されなければならないことは明白ですし、フェミニズムにもとづく批判は重要な意義があります。

2015-09-03 20:42:04
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

このような重要性に照らし、今回の議論が見解の相違で平行線のまま終わってしまわないことを祈念します。

2015-09-03 20:43:35

(訂正)

とんび@外岡則和 @tubupoko

うう、そうかしら?あらゆる表現が、常に、その内容や妥当性を問われるのは当たり前なんじゃないの?“反論権”とまではいわないけえが、さ。“批判<知>”の没滅が、左内河内や佐野研二郎や、はオワタが“日本の国会”の無様さの理由でそ。 twitter.com/TAKASHIMA724/s…

2015-09-03 21:01:40
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

言い換えれば、表現や自己決定の内容については、何らかの理由で違法と評価されない限り、原則としてその妥当性は問われないのが原則です。

2015-09-03 19:54:28
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

@tubupoko さん、適切なご指摘をありがとうございます。ご指摘のように、あらゆる表現が批判の対象になるのは当然です。私の書き方が誤解を招く表現だったので、次のように訂正します。

2015-09-03 23:07:52
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

@tubupoko 「言い換えれば、表現や自己決定の内容については、何らかの理由で違法と評価されない限り、その内容を理由として、表現の自由自体を制限されたり自己決定を否定されたりしないのが原則です。」

2015-09-03 23:10:03
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

すいません、このツイート→ twitter.com/TAKASHIMA724/s… は誤解を招く表現になっていますので、次のように書き直しました。ご指摘いただいた@tubupokoさんに感謝します。

2015-09-03 23:16:14
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

言い換えれば、表現や自己決定の内容については、何らかの理由で違法と評価されない限り、その内容を理由として、表現の自由自体を制限されたり自己決定を否定されたりしないのが原則です。

2015-09-03 23:16:32

もうれつ先生 @discusao

@TAKASHIMA724 どもです。ラディカルなフェミニズム思想からすると、「社会通念上許容される限度を超える」といった条件付けに対し「それは男性中心主義的な社会規範を前提とした恣意的な線引きではないか?」というツッコミが入るかなぁ、とも愚考。

2015-09-03 21:02:51