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妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第二話『小さな来訪者・巨大な襲来者』

第一話:http://togetter.com/li/850997 次→http://togetter.com/li/910304 // 引き続き、オリジナル主人公および設定がつきます、ご注意ください。
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みなみ @minarudhia

翌朝。 朝食を食べながら、メラメライオンは秋奈へようやく鬼時間の説明をしていた。 「鬼に捕まればそいつは悪夢として目を覚ますだけで終わる。もし鬼から逃げ切り、あのフスマから外へ出られればそれはその人間にとって一歩成長したと思っていい」 71

2015-08-13 21:53:32
みなみ @minarudhia

「あんなのに追いかけられるなんてたまったものじゃないわよ」 「アキナだって子供の時経験したろ、でかい怖い鬼に追いかけられた夢ぐらい」 「………ない」 「は?」 トーストにバターを塗りながら気のない返答を返す秋奈。 メラメライオンは拍子抜けした。 72

2015-08-13 21:55:36
みなみ @minarudhia

「ないって、お前…」 「私、妖怪には追いかけられて怖い思いしたことなら山ほどあるけど、鬼に追いかけられたことなんてないもの」 「……アキナがよほどいい子に育てられてたのか、単純にあいつらの怠慢か?…まあいい。それより気になるのは、あそこまで広範囲に鬼時間のエリアが長いことだ」73

2015-08-13 21:57:42
みなみ @minarudhia

メラメライオンはスクランブルエッグにフォークを立てた。 「普通、鬼時間の範囲は一区間のみ…。それが街二つまたぎの鬼時間なんて、ありえないはずなんだ。人間界にいなきゃ確認のとりようはいくらでもあるが…今度の鬼時間を待つしかないか」 「それよりメラメライオン、まだゴミある?」74

2015-08-13 21:59:54
みなみ @minarudhia

秋奈は言いながら、トーストをメラメライオンの分の皿に置いた。 「今日、燃えるゴミの日だし早めに出さないと」 「流しの方に生ゴミまだ水気切ってたろ」 秋奈がゴミを出しに外へ行く。 それを見送りながら、メラメライオンはトーストをひとかじり、考え込んだ。 75

2015-08-13 22:02:22
みなみ @minarudhia

あれほど大規模の鬼時間は見たことがない。 もし特別な理由があるのだとすれば、妖魔界ですでになんらかの通知はきているはず。 「…しきるん蛇が妖怪パッドか何か持っているなら借りるか」 そう呟いた時。 秋奈の帰る音がした。 そこまでは普通に流していたが… 76

2015-08-13 22:06:38
みなみ @minarudhia

「ほら、入って」 「お、お邪魔します…」 こんな時間に来客か? そう思ったメラメライオンは振り向き、そして固まった。 「……おい」 「何?」 「な、えっと、あっ…始めまして…」 77

2015-08-13 22:10:48
みなみ @minarudhia

秋奈が連れて来たそれは、メラメライオンに気づくと身体を震わせながらおじぎをした。 「…おい」 「何ってば」 「なに、オレの知らないところで他の妖怪引き寄せてんだよぉぉおおお!?」 ―― 時間を少しさかのぼる。 78

2015-08-13 22:13:09
みなみ @minarudhia

ゴミ出しに外へ出た秋奈は、道路を挟んだ向こうのゴミ捨て場へ向かっていた。 車を避け、目的の場所まで来るとゴミ袋を置く。 「ふぅ……… あら?」 秋奈はゴミ捨て場の隅に何かが動いていることに気づいた。 最初は野良猫かと思ったが、どうも違うようだ。 79

2015-08-13 22:16:45
みなみ @minarudhia

覗きこむと水色の何かが小刻みに震えながらゴミ袋を漁っているのが見えた。 「……妖怪?」 「!」 秋奈がさらに覗きこもうとした時、その生き物が秋奈に気づき顔を上げた。 「えっ、あ、あの…僕が見えてる…!?」 80

2015-08-13 22:18:03
みなみ @minarudhia

大きさは3歳児ほど。 広い額にハート型の白い模様を持つ小犬のような容姿の妖怪だった。 見るからに寒そうな震え方をしながら、その妖怪は秋奈を見返しぱちくりと目を瞬かせた。 「うん……… きみ、寒いの?」 「は、はい…すごく、寒い…」 「もうじき梅雨よ、こんな時期なのに?」 81

2015-08-13 22:20:19
みなみ @minarudhia

湿気を含む熱気を周囲の空気が孕むこの季節。 いくらなんでも寒がりすぎではと思わなくもない。 「嘘ですっ…こんなに、寒いのに…」 「それならうちに来る?熱いのがあるし、それに…」 秋奈は妖怪の身体を見て溜息をつく。 82

2015-08-13 22:21:49
みなみ @minarudhia

「こんな所にいて、ゴミ漁りまでして、体じゅう汚いじゃない!ちゃんとお風呂に入れてあげるから、うちにおいで」 「はい…」 --- 83

2015-08-13 22:24:51
みなみ @minarudhia

「こいつはさむガリ。プリチー族の氷の妖怪だ」 騒ぎがひと段落したところで、メラメライオンは妖怪をちら見しながら溜息をついた。 妖怪…さむガリはメラメライオンのそばにぴたりとくっついて離れない。 まだ風呂に入れていないため全身汚物まみれで腐臭が鼻につくが我慢だ。 84

2015-08-13 22:28:48
みなみ @minarudhia

「こいつらはいつでもどこでも寒がる。とりつかれた人間はどんなに重ね着してもダメだ、寒くて寒くて仕方がないんだ。エアコンも一定温度以上に上げまくるわで困りものって寸法だ。…しかし、本当、なんで他の妖怪を拾ってきたんだよアキナ?しかもまだ子供じゃないか」 85

2015-08-13 22:33:06
みなみ @minarudhia

「だって、一人こんなに寒がってるのほっといたらかわいそうじゃない!」 「お前なあ…」 湯船が沸くのを待って、秋奈はタオルケットを出していた。 「ともかく、こいつを風呂に入れたらオレはこいつを親の元まで連れて行く」 「あの……」 「なんだ?」 86

2015-08-13 22:35:00
みなみ @minarudhia

訝しげに振り向くメラメライオンにびくりとしながらも、さむガリは尋ねた。 「僕のお父さんとお母さんを知りませんか……?」 --- 「僕、山の方にあるどんこ池に住んでるんです」 87

2015-08-13 22:36:37
みなみ @minarudhia

お風呂に入れられて綺麗になったさむガリは、会社へ赴く秋奈とメラメライオンについていきながらそう話し始めた。 「どんこ池って…学校の裏手のおおもり山にあるあの大きな池?」 「はい」 「どんこ池の主の名前は聞いたことがあるな。お前はそこで両親と暮らしてたのか?」 88

2015-08-13 22:39:27
みなみ @minarudhia

「はい。つられたろう丸さんはとてもいい人です。僕達の面倒も良くみてくれました」 さむガリは震えながらメラメライオンのすぐそばを歩いていた。 お風呂に入れてもらってしばらくは気持ち良さげな顔をしていたが、時間が経つうち再び寒がり始めた始末。 89

2015-08-13 22:41:18
みなみ @minarudhia

こればかりはこいつらさむガリの体質だから仕方ないとはメラメライオンの弁である。 「しかし、それならなぜお前はどんこ池を離れてこんな街中に来た?両親がいなくなったってどういうことなんだ」 「……今から、二日くらい前です……」 90

2015-08-13 22:42:36
みなみ @minarudhia

このさむガリの親子は元から人間界に住んでいたわけでなく、妖怪達の世界・妖魔界からやってきた。 比較的気候も温暖そうなおおもり山まで来て、山に古くから存在したどんこ池の主であり魚達の総元締であるつられたろう丸から度々世話になる日々を送っていたが…… 91

2015-08-13 22:43:54
みなみ @minarudhia

「おととい、お父さんとお母さんが、街で何か手に入るか見てくるって出かけたきり…帰って、こないんです」 秋奈とメラメライオンは顔を見合わせる。 メラメライオンが聞いた。 「お前は帰ってこないのが気になって出てきたのか」 92

2015-08-13 22:45:06
みなみ @minarudhia

「はい。…つられたろう丸さんからは、僕はまだ子供だし危ないから行くなと止められたんですが、待ちきれなくって…」 しかし、この幼いさむガリにとって街はあまりにも広かった。 93

2015-08-13 22:46:31
みなみ @minarudhia

犬や猫に追い回され、不良妖怪達に睨まれて逃げ続け、行くあてのないままお腹を空かせたさむガリは、ゴミ漁りをしていたのだった。 ---- 「あいわかった。じゃが、あまり長い間この子を預かるわけにはいかん」 「そこをお願いします」 94

2015-08-13 22:47:31
みなみ @minarudhia

出社して早々、秋奈は軍配を尾に着けた紅い大蛇しきるん蛇に頭を下げに向かった。 しきるん蛇は秋奈が勤める会社に創立から長年かけて住み続けている、いわば会社の裏の元締。 さむガリの話を聞き、しきるん蛇はため息をついた。 95

2015-08-13 22:49:39
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