妖怪ウォッチ二次創作長編:くれは舞う風第二話『小さな来訪者・巨大な襲来者』

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みなみ @minarudhia

「いいか、アキナ。ここは今、お前が普段歩いている街とは次元が違うんダ。ここを出るには、どこかにあるフスマから出なくちゃならない。あの鬼どもに見つからないよう探し回らなければいけないんだ」 言いながらメラメライオンは地面に手をつき、こめかみ部分にもう片手を当てる。 49

2015-08-05 22:37:48
みなみ @minarudhia

「フスマの妖気の方角は……… この街を抜けた先?遠すぎるぞ、どうなってる?」 「遠すぎるって、どっちへ出てるの?」 わからないながら秋奈は聞く。 メラメライオンは立ち上がりながら、駅の方を向いた。 50

2015-08-05 22:41:58
みなみ @minarudhia

「この先だ……さくら住宅街。アキナの家のある町だ」 「…さっきの大きな声は、そっちからしたよね…?」 「ああ、そうだな…」 メラメライオンは大きなため息を一つついた。 「わかってる最悪なことは一つ、鬼がそこから近くにいるってことだ」 51

2015-08-05 22:44:04
みなみ @minarudhia

ズゥン……ズゥン……… 「アカンッ……アカンッ……アカンッ…」 河川敷と病院へ続く道を赤鬼はゆっくりと通り過ぎる。 それを駅前のバーガーショップ、モグモグバーガーから遠巻きに見て、秋奈は血の気が引くのを感じた。  「あれが…鬼?」 52

2015-08-05 22:51:24
みなみ @minarudhia

「そうだ。見つかるなよ。ひとまずこっちだ」 反対側の道へメラメライオンは秋奈を誘導した。 その先に見回り鬼が一匹おり、遠目に小鬼の姿が見える。 「…あの向こう側にいるみちび鬼(き)がこれ以上来なければ行けるか…?」 53

2015-08-05 22:56:26
みなみ @minarudhia

メラメライオンは再び秋奈に待機のジェスチャーを送り、見回り鬼の背後へ寄った。 まもなく、見回り鬼の背に一撃が叩き込まれ、鬼への呼びかけすらかなわぬまま見回り鬼が消滅する。 それを見届け、秋奈についてくるようジェスチャーを送り、メラメライオンが目指すは小鬼・みちび鬼だ。 54

2015-08-05 23:00:07
みなみ @minarudhia

みちび鬼は幸いにも一匹だけ。 赤鬼も河川敷の方へ降りたため今が好機。 そのみちび鬼も、あえなくメラメライオンの一撃を死角から立て続けに食らい消滅した。 「どっちも残すと厄介だからな…悪く思うなよ」 消えたみちび鬼にメラメライオンは言いやる。 55

2015-08-05 23:03:40
みなみ @minarudhia

「見て、郵便局よ」 秋奈が馴染みの郵便局を見やって横断歩道を速足で渡った。 「アキナ、先へ行くな!危ない!」 後に続き、メラメライオンはもう一度フスマの位置を確認。 「魚屋を過ぎた先、自動販売機のすぐそばだ」 「まっすぐ行けば大丈夫なのね」 「そうだが…」 56

2015-08-05 23:06:01
みなみ @minarudhia

メラメライオンは、周りを見渡しながら言った。 「気をつけろよ、時間が経てば経つほど奴らは増える」 「うん」 魚屋は郵便局のすぐ後方、交差点を渡った先にある。 魚屋・魚吉の前まで道路を横断しながら、秋奈とメラメライオンはまっすぐ道を目指した。 遠目に見えたものを秋奈は指差す。

2015-08-05 23:07:23
みなみ @minarudhia

「メラメライオン!あれがそのフスマ?」 「ああ、間違いな-」 この時ばかりはメラメライオンもウカツだった。 魚吉の裏手にある路地裏を通ろうとしたところで、秋奈がポリバケツをひっくり返してしまった。 それにより、路地裏にいた影が、秋奈の姿を認め、警報に似たけたたましい音を発した。

2015-08-05 23:08:52
みなみ @minarudhia

アアアアアァァァカッアアアアアアアアン!!! 「う、嘘!?」 「チッ!走れ!!」 メラメライオンが秋奈の腕を半ば強引に引き走った。 それを後から追う見回り鬼。 フスマまではまだまだ100mもある。 59

2015-08-05 23:10:43
みなみ @minarudhia

「…アキナ!」 数分も待たずに接近してきた鬼の気配と足音にメラメライオンは叫ぶ。 「オレに構わずフスマまで走れ!オレは鬼を食い止める!」 「そんな、無茶よっ!!」 秋奈が背後に迫る赤鬼を認め、悲鳴をあげた。 巨体に見合わぬ速さと改めて間近で見る姿ゆえだ。 60

2015-08-05 23:12:59
みなみ @minarudhia

「いいから行け!!」 言いながらメラメライオンは地面に手を触れた。 「行けって!」 遠ざかる足音にメラメライオンは顔を上げた。 目と鼻の先まで迫ってきた赤鬼は、メラメライオンめがけ大金棒を振り上げた。 「メラッ!」 61

2015-08-05 23:15:08
みなみ @minarudhia

打ち付ければ岩をもたやすく砕く鬼の金棒を、メラメライオンは身を軽く翻しかわす。 「アッカン…!」 横から見回り鬼が割り込み、メラメライオンを狙って瞳孔から熱線を放つ。 メラメライオンの二の腕をかすり、わずかだが毛を焼き焦がす。 「邪魔だ!」 62

2015-08-05 23:16:48
みなみ @minarudhia

続く金棒の一撃をかい潜り、メラメライオンがエルボーからのサマーソルトを見回り鬼に打ち込む。 ぴぴっ サマーソルトによる反動で後ろに下がったメラメライオンの耳に届いた、微かな音。 赤鬼が金棒を振り上げた瞬間。 「アッカ…グワーッ!?」 63

2015-08-05 23:28:19
みなみ @minarudhia

フスマへたどり着いた秋奈がメラメライオンを案じて振り返った瞬間。 彼女の目に、赤鬼とその足元で炸裂・爆発を起こす火花、身を翻してこちらへ走って来るメラメライオンが見えた。 「急いで!」 開けたフスマからは光が漏れだしている。 64

2015-08-05 23:30:10
みなみ @minarudhia

途中、メラメライオンが地面にまた触れる。 その間に体勢を立て直し迫る赤鬼をちらりと見やってメラメライオンは走り出す。 「早く!」 「先に飛び込め!」 メラメライオンが叫び、背後で再び炸裂音。 「…外したか」 65

2015-08-05 23:33:07
みなみ @minarudhia

設置に一歩早かったようだと、メラメライオンは舌打ちした。 赤鬼は再びメラメライオンに肉迫し、金棒を振り上げた。 「…たく、仕事熱心で悪いがしつこいにも程があるんだよ!」 振り下ろされる金棒。 しかしすでにメラメライオンはそこにはいない。 66

2015-08-05 23:34:36
みなみ @minarudhia

赤鬼が顔を上げる。 小さな影。 赤鬼の顔より高く跳躍しメラメライオンはその顔めがけ落下した。 「メラーッ!」 「グワーッ!」 眉間に渾身の一撃を打ち込まれ、片膝をつく赤鬼のそばに着地したメラメライオンは今度こそフスマへ全力で駆けた。 67

2015-08-05 23:36:30
みなみ @minarudhia

秋奈はまだフスマの向こうへ飛び込んでいない。 「先に飛び込んでろつったろ!」 秋奈をフスマの向こうに押しやる。 金棒を拾い上げ、赤鬼が走り寄ろうとする。 しかし、メラメライオンはフスマの向こうに体を半ば突っ込んでこう告げた。 「…あばよ」 68

2015-08-05 23:37:47
みなみ @minarudhia

金棒が振り上げられるより先に、フスマは閉められた。 ―――― 69

2015-08-05 23:39:45
みなみ @minarudhia

「鬼時間は、人間なら誰もが一度は見る悪夢でもあり、言い付けに背いた悪い子供への罰でもある。赤鬼を始めとした鬼達はその鬼時間での仕置きを仰せつかっているんだ。当然だが、人間や低級の妖怪達がまともに戦って勝てる相手じゃない。絶対に勝てない相手でもないがそれには相当の修練を必要とする」

2015-08-13 21:51:02
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