茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1616回「批判と創造」

脳科学者・茂木健一郎さんの9月30日の連続ツイート。 本日は、今朝コンビニに歩きながら思っていたこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1616回をお届けします。文章はその場で、即興で書いています。本日は、今朝コンビニに歩きながら思っていたこと。

2015-09-30 06:49:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

批判がもし相手を否定するだけならば、あまりよい生命の作用をもたらさないかもしれない。批判は、時に、相手の本質を見抜く力にもなりうる。その時、批判は、相手本人、あるいは相手の賛同者たちも思いつかないような、本質に至る道となるのだ。

2015-09-30 06:51:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

ミクロな世界を記述する量子力学にはいろいろへんなところがあって、「観測 問題」はまだ解決していない。量子力学はいろいろなごまかしをすると世界をうまく予測できるが、そのことに我慢がならなかったのがアインシュタインだった。アインシュタインとボーアの論争は凄まじい知の格闘技だ。

2015-09-30 06:52:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

極論すれば、「月はそれを見ていない時には存在しない」とボーアのコペンハーゲン解釈はとられる。それに対してアインシュタインは「月はそれを見ていない時にも存在する」と主張した。アインシュタインのリアリティの感覚と、量子力学は相容れなかった。

2015-09-30 06:54:14
茂木健一郎 @kenichiromogi

問題はここからだ。アインシュタインは、ポドルスキー、ローゼンと、1935年に有名な論文を発表した。drchinese.com/David/EPR.pdf いわゆる「EPRパラドックス」である。この中で、アインシュタインらは、量子力学の現実の記述は不完全であると主張した。

2015-09-30 06:55:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

興味深いのは、結果として、EPRパラドックスの論文が、量子力学に本質的に内在する「非局所性」を見ぬいていたということだ。量子力学の単純な擁護者たちよりも、アインシュタインたちの方が、よほどその本質の不可思議を把握できた。批判が創造的発見につながる最良の事例だろう。

2015-09-30 06:57:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

単純な擁護者は、案外その主張の存立する基盤に鈍感である。一方、批判者は、基盤の危うさを見抜き、場合によっては新分野の萌芽ともなる。EPRパラドックスで指摘された量子力学の非局所性は、その後、むしろ量子力学本体の発展の基調低音となった。やはり、アインシュタインは天才であった。

2015-09-30 06:58:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1616回「批判と創造」をテーマに、6つのツイートをお届けしました。

2015-09-30 06:59:11