「アヴェンジャー・フロム・ジ・アフターライフ」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KABOOOM！先程とは比べ物にならぬほどの炎が水蒸気を吹き飛ばす！「流石に燃え尽きたか？」ソーサラーは影のあった場所を見た。そこには、予想だにしない者がいた。龍だ。とぐろを巻いた細い龍が炎から吹雪を守っていたのだ。「何？」ソーサラーは眉を顰める。「何処から？否、誰が？」 49

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「よっしゃ！やったれ！」龍驤が龍に呼びかける。この龍は彼女が召喚したものだ！「GRRRRR！」召喚者の呼び声に応え、龍が吼え、ソーサラー目掛け突進する！「ヌゥ！？」ソーサラーは対応せんとしたが、龍の方がハヤイ！瞬く間に龍はソーサラーの体を締め上げる！「グワーッ！」 50

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「よし、一気に決めるで！」龍が締め上げる力を強める！「グワーッ！…よもや、龍種を召喚できる術者がいるとは…グワーッ！」「どや！参ったか！」龍驤の周囲に艦載機が展開し、カイシャクの機を窺う。「……どう、かな？」ソーサラーは不敵に龍を、そして龍驤を見た。海面を杖で叩く。 51

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SPRAAASH！海面が飛沫を上げ砕かれる！。「な、何！？」吹雪と龍驤は海から生えてきた巨大な何かを見た。それは烏賊めいた触腕であった。３本の巨木めいた触腕がフライトリバティーに巻き付く！「し、司令官が！？」吹雪が悲鳴を上げる。そして「AGRRAAAA！」龍も悲鳴を上げる！ 52

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「今度は何や！？」龍驤は触腕から龍へと視線を戻す。「ア…？」龍の体には８本の蛸めいた棘付き触腕が突き刺さっていた。「AGR…GRAA…」龍は血を撒き散らし、激しく痙攣する。ソーサラーは龍を無造作に引き剥がす。棘付き触腕が龍を海中へ引きずり込む！海が泡立ち、血が海を染める。 53

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下に何かいる。龍驤がそう悟ったと同時に、海中から自らに向けて何かが飛び掛かる！「イヤーッ！」龍驤は咄嗟に側転回避！だが、ソレが備えた触腕の一撃が腹部を鞭めいて打ち据える！「ンアーッ！」「龍驤＝サン！？」吹雪は龍驤を、そして龍驤を襲った化け物を見た。 54

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奇怪。そうとしか言えないモノがそこには居た。頭部と胴体こそ巨大なホオジロサメめいたシルエットだが、尾があるべき部位に鋭い棘を備えた触腕が８本生えていた。「GAAAAA！」化け物が吼える。その歯は血と鱗が塗れていた。間違いない。龍驤の召喚した龍を殺めたのはこの化け物だ！ 55

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「咄嗟に生み出したものだが」ソーサラーが化け物を見ながら感慨深げに呟く。「何と名付けようか…鮫と蛸…シャークトパス？安直だが、即席の生成物ならむしろ妥当…」「イヤーッ！」独り言を続けるソーサラー目掛け吹雪がチョップで飛び掛かる。「イヤーッ！」だが、迎撃される！「ンアーッ！」 56

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「思案の邪魔をするな」ソーサラーは煩わしげに吹雪を見下ろす。そしてフライトリバティーを見上げた。烏賊めいた触腕が断続的にフライトリバティーの船体を締め上げるが、堅牢な装甲が軋むだけで、傷一つ付いていない。「無駄に硬い」ソーサラーは舌打ちし、フライトリバティーに手を翳す。 57

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ソーサラーの手を中心に、魔力が渦を巻く。苦痛に耐え起き上がりながら吹雪は絶望しかける。下級魔法で自身の上級魔法と同等の威力の術者が、強力な術を放とうとしている。己の愛する者がいる船に向けて！「立たないと！」吹雪は立ち上がろうとした。化け物が吹雪を打ち据えた。「ンアーッ！」 58

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「そこで見ているがいい。瑠奈花の最期を！」ソーサラーは勝ち誇った。だが、直ぐに異変に気付く。「何だ？」僅かな視線移動の隙に、フライトリバティーに巻き付いていた触腕が全て断ち切られていた。３本の触腕にそれぞれ一つずつ。小さな何かが取りつき、触腕を砕いていく。 59

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「控えの戦力か？」ソーサラーは訝しみながらも、魔力を集める。「どの道これをぶつければ同じ事…」その時！触腕を砕いていた点の一つが、ソーサラー目掛け飛翔！「何？」点はすぐさま大きく、実像が見えてくる。白と黒。そして緑。ソーサラーは術を放とうとした「イヤーッ！」「グワーッ！」 60

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飛来者はソーサラーが術を放つよりも一瞬早く、手を蹴った。術はあらぬ方向へと放たれ、数秒後、爆発した。KABOOOM！「貴様」ソーサラーは跳んで来た者を見た。その者は白と黒のセーラー服に黒いハカマ姿。特Ⅰ型艤装。そして吹雪と似たような顔つき。クローンか？否。 61

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その目を見れば万人が気付くだろう。氷めいた怜悧な鶯茶色の右目。そして虹彩が極限まで窄まり、緑色の炎と狂気を灯す左目が、彼女が宿毛湾の吹雪とは別人であると如実に物語る。 62

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「ドーモ」彼女は両手を合わせ、アイサツした。「艦娘・フブキです」「フゥーム？」ソーサラーはフブキを興味深げに見つめ、アイサツを返す。「ドーモ。ソーサラーです…ソウル・エンハンスメント？それは我々の技だ。生者が死者の真似事か？」ソーサラーはジュヨーの構え。フブキは水雷カラテ。 63

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両者はジリジリと距離を詰める。吹雪は立ち上がり、化け物を牽制する。「イヤーッ！」「イヤーッ！」フブキのチョップとソーサラーの長杖が激突する。チョップが纏う緑の炎から火の粉がソーサラーに降りかかる。ソーサラーは不快げに眉を顰めた。「これは…」「イヤーッ！」チョップが押し切る！ 64

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「ヌゥーッ！？」ソーサラーは咄嗟に飛び下がり、バックフリップ回避。フブキのチョップが空を薙ぎ払う。判断を誤れば、袈裟懸けに胴を両断されていただろう。「何たるカラテ」ソーサラーは構え直し、賞賛する。そして言った。「そしてその炎。魂を燃やすか。モータルが持つには身が重い物を」 65

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「舌が良く回ることですね」フブキは挑発的に言葉を返す。「私の事を評定して何とする。疾くとハイクでも考えるがいい」両腕に緑の炎が燃え盛る。「私が貴方を、殺す故に」「できるものか」ソーサラーは杖を振るう。瞬間、遠く静止したままの泊地水鬼が動き出した。艤装が蠢き、主砲が火を吹く！ 66

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「イヤーッ！」KA-DOOOM！着弾１秒前に、フブキは跳躍回避！そこへソーサラーが躍り掛かる！「イヤーッ！」「イヤーッ！」長杖の強打が、フブキの右腕の骨を軋ませる！ソーサラーはそのまま長杖を振り抜く！「イヤーッ！」「グワーッ！」フブキは空中で受け身を取り、着地する。 67

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艦娘達がフブキの周囲に集まる。化け物もまた、ソーサラーの傍へと戻った。「私は死なん」ソーサラーの周囲に魔力の渦が複数形成される。「復讐を果たし、本懐を遂げる」艦娘達は各々のカラテを構えた。だが、動けぬ！余りにも強大過ぎるソーサラーの魔力が艦娘達を縛り付ける！「終わりだ！」 68

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魔力の濁流が溢れ出さんとした、その時！KADOOM！KADOOOM！KADOOOM！両者の間を超長距離砲撃が阻む！『一旦退け！』通信機から瑠奈花の声が響く。「司令官？ですが」『奴の力は未知数過ぎる！それに、何かが拙い！』「了解です！」超長距離砲撃は続く。艦娘達は後退する。 69

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撤退していく艦娘達に対して、ソーサラーは一瞬追撃せんとし、そして止めた。そしてはるか遠くの砲撃手を睨んだ。「…まぁ、これはこれでチョージョー」ソーサラーは邪悪に笑った。「復讐の二度手間が省けたというもの」そしてソーサラーは海上に杖を突き立て、何事かを唱え始めた。 70

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アンズ環礁。旧深海棲艦秘匿泊地。フライトリバティーは、この地まで逃れていた。「司令官。何故ここに？」泊地に降り立ち、吹雪は瑠奈花に問うた。「通信が入った」「通信？」フブキは首を傾げる。「『今のままではそちらが敗北する』『仕切り直せ』とね」「一体誰が」「君も良く知る人物さ」 72

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「どうやら、無事に着いたようだな」二人の背後から声が掛かる。艦娘やリカルドのざわめきが聞こえた。吹雪は振り返った。果たして、そこには確かに彼女も知る人物がいた。「…戦艦棲姫？」「久しいな」吹雪は無意識にテアーズ・カジを構えた。「あらあら。おっかない」別の声が吹雪を諫める。 73